第十三部 第十八章 海を呼ぶ
「実はな。叔父であるヤマトの前宰相に向こうの世界の事で聞いた事がある」
カルロス一世がいきなり切りだしてきた。
もう、ヤマトの前宰相とかで碌な話じゃないのがわかる。
「いや、いいです」
俺が即座に話を切った。
「待て、まあ聞け。あちらの人間には火事場のクソ力と言うものがあって……」
カルロス一世が真面目に言ってる。
「ないない。それ漫画かアニメだから」
「しかし、ピンチになると不思議な力が出て、相手を必ず倒すそうなんだが」
「そんなうまい話ある訳ないし」
「そう言えば、国王も言っておったな」
龍女さんも真剣だ。
「だから、嘘だって」
「そうなのか? あるなら、お前をスルトにぶつけようかと思ったのだが」
カルロス一世が凄く残念そうだ。
勘弁してくれ。
「とりあえず、幸いスルトがいる王宮から海が近い」
俺が皆に言った。
「は? そんなもん、あれを海に誘導なんか無理だぞ」
カルロス一世が呆れたように答えた
「たしかに、どう見ても海に落とせばあれだけの高温だし、くだけるかもしれんが、それはスルト自身も理解してるだろう」
龍女さんも呆れたようだ。
「いや、海をスルトの所に持ってこようかと」
「「はあ? 」」
龍女さんとカルロス一世が素で変な声出した。
「そんな、力があるのか? 」
カルロス一世が聞いてきた。
「いや、無い」
「じゃあ、無理だろ? 」
カルロス一世が答えた。
「いや、出来ると思う。但し、あいつも水蒸気爆発を起こすと思うから、どんだけの大爆発になるか分からんのだけど」
「水蒸気爆発? 」
カルロス一世が不思議そうに聞いてきた。
「スルトも超高温だからね。海水の瞬間的な蒸発による体積の増大が起こり、大爆発するはず」
「そうなのか? 」
カルロス一世が不思議そうだ。
「とりあえず、全員を退避させろと言う事か? 」
樹老人が念話で聞いてきた。
「ええ。特に船も帆をたたまないと沈むかもしれない」
「ええええ、マジか? 」
カルロス一世が驚いた。
「恐らく、この近辺は酸素が無くなるだろうけど、聖樹装兵は宇宙で活動できるんだから、酸素無くてもいけるよね」
龍女さんに聞いた。
「ああ」
龍女さんが頷いた。
「分かった。船の帆をたたむ件は大至急伝える」
樹老人が念話で言ってきた。
「幸いエーデルハイトの首都は盆地にあるし、すでに火の海だから、もう巻き込まれてしまって生きている人も街も無い」
「なるほどな」
龍女さんが感心してる。
「とりあえず、樹老人さん、そちらの回避の準備ができたら、リヴァイアに最大最強の猛爆攻撃を俺が指示するとこにぶち込んでって伝えてください」
「……えらく、物騒な話になりそうじゃな」
樹老人が驚いたようだ。
「後、爆龍王ゴウオウは一旦、引いて隠れて。俺達もどっか山の影に隠れた方がいい」
爆龍王ゴウオウに伝えた。
「はああ? わしが引けるか! わしに構わずやれ! とりあえず、引きつけとく奴もいるだろう! 」
爆龍王ゴウオウがスルトと爆炎のやり合いをしながら叫んだ。
「いいのか? 」
「わしがその程度で死ぬか! 」
爆龍王ゴウオウが叫んだ。
「何をやるんだ? お前の経歴見てると碌でもない事だろうが」
カルロス一世が困惑気味に聞いてきた。
「ええ、多分、最悪の事します」
俺が真面目に答えた。
「そうか」
カルロス一世の声がドン引いている。
「樹老人さん準備の方は良いですか? 」
俺が樹老人に呼びかけた。
「もう少しかかる! いける様になったら言うから! 」
樹老人が念話で叫んだ。
「とりあえず、爆龍王ゴウオウにまかせて、我々は盆地の山の背後にまわりましょう」
俺がカルロス一世と龍女さんに言った。
「爆龍王ゴウオウ! すまんけど、スルトを引きつけといてくれ! 俺達は退避するから! 」
「分かった分かった! 今、忙しいから話しかけるな! 」
爆龍王ゴウオウはスルトとやりあうので必死だ。
どうも、こちらの話が耳に入って無いようだ。
「いいぞ! 準備できた! 」
俺達が急いで一番しっかりしてそうな山の向こう側に隠れた時に樹老人さんから念話で返事が来た。
「よし、行くぞ」
俺が右手の紋章をひからせて、例の濃縮する力を使って上空で酸素を濃縮し始めた。
「また、下痢させるのか? 」
それを龍女さんが呆れたように聞いてきた。
「いえ、スルトがいる大地を破壊して、海を持ってきます」
俺が言うと、カルロス一世と龍女さんが息を飲んだ。
「リヴァイア、上空で濃縮した酸素を、スルトと海の間の地表に降ろすから、そこへ最大最強の猛爆攻撃をぶつけてくれ! 」
俺がリヴァイアさんに向かって叫んだ。
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