第十三部 第十七章 戦うと言う事
目の前で、スルトが剣を振るたびに家や森や山が燃えていく。
たくさんの人が目の前で焼けていく。
アレクシアの時は見ていなかったが、今度は目の前でそれが起こる。
それを呆然とただ見ている俺。
近くの聖樹が破壊されたせいか、聖樹によって抑圧されていた罪悪感とかすべての感情が湧き上がってきた。
騙されていた?
どういう事だ?
俺は何か間違ってたのだろうか。
安易に何もかもしすぎたのか。
俺の豆柴モドキがこの大殺戮の結果を呼んだのか。
向こうに戻った方が良いのか。
覚悟が足りなかったのだろうか。
間違っていたのか。
俺が間違っていたのか。
驚いた事に相当に罪悪感を軽減されてたらしい。
何度も自問自答していた。
「ユウキ殿よ。しっかりするのだ」
龍女さんが叫んだ。
だが、何か幻覚を俺が見てる感じだ。
遠くで声が聞こえてるような感覚だ。
何が一体……。
その時、龍女さんが聖樹装兵のまま俺の聖樹装兵を殴った。
「しっかりしてくれ。別にどちらの味方になろうがかまわん。だが、私の待っていた、愛した人が、目の前でこの状況が起こっているのに見て見ぬふりだけはしないで欲しい」
龍女さんの声が泣いている。
「別に、どちらにつこうと私は貴方についていきます。でも、私の旦那様なら、この状態のまま逃げないでください」
アオイもじっと目に涙をためて言った。
「お兄ちゃん! 」
ミツキが叫んだ。
皆の声で目が覚めたような気がした。
「……分かった。なんとかしてみる」
俺が頭を何度も振りながら、変な感覚を切り捨てる様に言った。
そう決めたのだ。
「ありがとう」
龍女さんが頷いた。
アオイとミツキも頷いた。
爆龍王ゴウオウが、スルトに次々と爆炎を吐く。
カルロス一世もライフルの生体レーザーをぶち込んだ。
しかし、スルトは気にもしていない。
逆にこちらに剣を振るって、炎の波状攻撃が来る。
それをギリギリのとこで皆で避けた。
「アオイとミツキは下がってくれ。生身じゃ厳しい」
俺が二人に忠告した。
「でも」
ミツキが納得いかないようだ。
「いいんだ。こっちは何とかする」
俺が答えた。
いきなり、樹老人が俺の聖樹装兵の背にテレポートして来た。
「むぅ。やはりな。暗示をかけられたようだな」
樹老人が言った。
「暗示? 」
「お前には聖樹の核が渡されている。恐らくニーズヘッグで聖樹を乗っ取ると同時に、何らかの暗示をニーズヘッグ埋め込んで、聖樹を使い連携させたんじゃろう。さらに、奴の言葉になんらかのワードを込めていたんじゃな。負の感情を引き出すとともに、拡大させたんじゃろう」
樹老人が俺に説明してくれた。
「じゃあ、俺は……」
「大丈夫じゃろ。龍女さんやアオイ達に感謝するといい。自分でその暗示をといてる。たいしたものじゃ」
樹老人が笑った。
「……そうか」
俺自身生きるので必死で見てなかった部分で、蓄積されたものがあったって事だろうな。
「まあ、お前の役目はまだ先じゃし。思うように生きたらええ」
「じゃあ、逃げたいです」
「はあ、また、それか? 」
樹老人が呆れたような顔をした。
「嘘です。やるだけやって見ますよ」
自分でも驚くほど自然に笑えた。
あれ?
でも、それって死ぬフラグじゃね?
それは困るな。
「お兄ちゃんは深く考えないで、思いつきで適当にやったらいいのよ! 」
ミツキが叫んだ。
「え? それ、どういうイメージなん? 」
「そっちの方がうまくいくって事」
ミツキが笑った。
そのミツキとアオイに向けて、スルトが剣を振るった。
炎の波動が一直線にミツキ達に振りかかる。
それをテレポートした樹老人が手をかざして防いだ。
やばい。
死んだかと思った。
はじめて、樹老人さんがいて良かったと思った。
「とりあえず、わしらは一旦離れるぞ。このままだと二人がまずい」
樹老人が叫んだ。
ミツキ達の乗るワイバーンが高速で離れていく。
「心配するな。樹老人殿がついている」
龍女さんが俺に言った。
「正直、どうしたらいいのか見当もつかないがやるしかないだろうな」
カルロス一世が諦めのように答えた。
爆龍王ゴウオウは意地になって、爆炎をスルトに吐き続けてる。
だが、スルトは気にもしていない。
むう、確かに爆炎系は全く駄目かもしんない。
さあ、どうしょう。
炎上する大地を見ながら、俺が思った。
今日、しくじったので、もう一本投稿します。
いつも、ブックマークや評価をありがとうございます。
本当に励みになります。
ありがとうございます。