第十三部 第十五章 一条和真
「き、貴様は! 貴様は! 高校で三年間同じクラスだったと言うのに! 」
愛染明王型の聖樹装兵に乗っている男が激高してる。
そう言われても知らないものは知らないし。
夢では見たんだがなぁ。
「俺はお前の高校のクラスメイトだった、一条和真だ! 」
愛染明王型の聖樹装兵に乗ってる男、和真が叫んだ。
「ああ、そんな名だった」
俺が納得したように答えた。
実は覚えてなかったりする。
適当に場にあわせて思い出した振りをしただけです、はい。
「は! どうせ<終末の子>としてアレクシアとか滅ぼして、そこにいる女達をはべらして良い気になってるのだろうよ! 」
和真が俺に罵った。
「ええと、アレクシアを滅ぼした後は、やり過ぎだってんで、皆に無視されるようになって、 一人でぼっちで部屋で引きこもってたが」
「は? 嘘をつけ! 」
和真が嘲るように笑った。
「それ本当です。良く他人に舌打ちされて無視されてました」
アオイが答えた。
「へ? ヤマトを救った英雄じゃないのか? 」
カルロス一世が間の抜けた声で聞いた。
「いや、やり過ぎだとか言われて、鬼みたいなカス呼ばわりだったけど」
俺がカルロス一世の疑問に答えた。
「え? 」
俺のしょげた顔見て和真が驚いたようだ。
「コンチュエの後は、皆がさらに酷くなって、帰りの船は掃除用具置き場に床で臭い毛布で一人で寝てた。飯は残飯に汁ぶっ掛けた奴で……」
俺がさらにしょげた顔で答えた。
「は? コンチュエを救った英雄だぞ? 」
チアンウェイが驚いた。
「いや、めんどくさくなって逃げた呼ばわりだったし」
俺が真っ暗な顔で呟いた。
「ええええええ? なんで、そんな酷い目に会うの? 」
樹老人が驚いた。
「本当なのか? 」
龍女が驚いて、アオイに聞いた。
「本当です」
アオイが頷いた。
「んで、このままじゃ殺されるって逃げ出して、ようやく商人としてやってけるようになったのに、また呼び戻されて」
俺がさらに真っ暗な顔をした。
「あんまり、可哀想なんで、同情もあって、私も一緒に逃げたんです……勿論、実は好きだったんですけど」
アオイがちょっと頬を染めた。
「え? マジなのか? 」
和真が本当に驚いたようだ。
アオイとミツキが頷いた。
カルロス一世やチアンウェイの息を飲む声が聞こえる。
「お前、何でこちらの世界の為に戦ってるの? 」
和真が素で聞いてきた。
「こんな、俺でも好いてくれて大事にしてくれる人がいるから」
しょぼんとしながら俺が答えた。
泣きそうなくらいアオイとミツキがうれしそうな顔してる。
龍女さんも喜んでる気配が紋章から感じる。
「いや、お前、高校とかモテモテだっだだろ? 」
和真が言ってきた。
「は? 」
「いや、例えば、美人の生徒会長とか深雪とか、皆、お前が大好きで、お前が遠くの大学に逃げる様に出て行った後、必死で探してたぞ」
「は? そんなはずは? 」
俺が本当に唖然とした。
「いや、マジだって」
「え? 」
ミツキが少しオロオロしだす。
「後、お前、自分の母親が誰か知ってるんだろ? 」
「ああ」
「あちらのまさに実質トップだぞ。すべての大企業群の実質支配者でもあり、株の配当だけで年に数兆を超えるくらいあるくらいの超大金持ちなんだぞ」
「は? 」
「ちょっと、ちょっと! 」
ミツキが焦ったように叫んだ。
「いや、だって普通の生活しか……」
「それはお前の親父さんの希望だぞ」
「ええええええ? 」
「お前、向うだと、超モテモテのスーパーリッチマンだぞ」
「ええええええ? 」
正直、驚きが止まらない。
なんだって?
どゆこと?
「もう一度聞くが、なんで、こっちの世界の為に戦ってるの? 」
素で焦る。
本当だ。
何でなんでしょう。
ただ、少し妙なのが、言われて頭が何かくらっと来た。
何だろう。
「だめだめ! あっちに行ったらお兄ちゃんと結婚できなくなる! 」
ミツキが焦って叫んだ。
「え? 」
逆に和真がびっくりする。
「いやいやいや」
何言っていいか、分からんので、とりあえず、俺は首を左右に振り振りした。
「お前、騙されてんじゃないの? 」
また、何かくらっと来た。
頭がぐらぐらする。
あれ、俺、騙されてる?
急に不安になってきた。
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すいません。