第十三部 第十二章 脈動
「まずい」
いきなり、樹老人が呟いた。
「どうしたんですか? 」
カザンザキスさんが聞いた。
「このままでは、聖樹が持たん」
「なんですって」
カザンザキスさんが凄く驚いた。
すげぇ、嫌な予感。
「一気に聖樹まで別働隊で攻めこまないと間に合わないと言うのですか? 」
カルロス一世が聞いた。
「それしか、無いじゃろうな」
樹老人が困ったように答えた。
皆が俺を見たので、横を向いた。
「何を横に顔を背けておる。お前が中心になって攻めるんじゃぞ」
「敵地のど真ん中に少数精鋭で私に行けと」
「そうじゃ」
くはっ。
いきなり、それかよ。
「爆龍王ゴウオウも手伝ってくれるじゃろうし、カルロス一世殿もどうじゃろうか? 」
「結構ですよ」
カルロス一世が簡潔に答えた。
うわ。
簡単に受けるし。
「そう言えば、おぬしに聖樹装兵の戦い方を教えたものは、まだいるのか? 」
「師匠ですか? 師匠はもういません」
「そうか。残念じゃな。他に聖樹装兵を使えるものが居ればいいのだが」
「多分、ミツキとアオイとそこのチアンウェイは装着できると思うぞ」
龍女さんが言った。
「「「え? 」」」
ミツキとアオイとチアンウェイがびっくりしたような顔をした。
「基本、ある程度の素養があれば装着できるしの。アポリト殿とミヤビ王女はもう少しという所じゃ」
龍女さんが説明した。
「しかし、いきなり実戦はきついでしょ」
カルロス一世が厳しい顔をした。
「むう。確かにな」
龍女さんが頷いた。
「では、われも同行しよう。われはすでに装着できるしな」
嘘、初耳だ。
まあ、出来てもおかしくは無いか。
「では、龍女どのにも頼みたい」
樹老人がお願いした。
すでに、攻め込むのは決定事項みたいだ。
俺、商人なんだがな。
「出来たら、私も一か八かで聖樹装兵を着装して行きたいのですが」
ミツキが立ち上がった頭を下げた。
「私もです」
アオイも立ち上がってミツキに同調した。
やる気満々ですがな。
はぁ。
「とりあえず、聖樹装兵の種子は後でおのおのの紋章に打ち込むが、今回はやめた方が良いのではないか? 確かに、慣れぬと実戦は厳しい」
龍女さんが諌めた。
「でも、お兄ちゃんは……」
ミツキが反論した。
「いや、こいつ、異常だし」
樹老人が答えた。
褒めてないよね。
何だよ、異常って。
その時、王宮が軽く揺れた。
「地震か? 」
国王があたりを見回した。
「違うな。封印が解け始めてるようじゃ」
樹老人が苦い顔をした。
こんなとこまで地震だって?
どんだけ強い奴なんだよ。
「……あの。ひょっとして、共工より強い? 」
俺が樹老人に聞いた。
「当たり前じゃろ」
樹老人が当たり前のように答えた。
ああ、逃げてぇ。
なんだよ、この罰ゲーム。
だから、ヤマトに来たくないんだよ。
めまいがする。
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