第十三部 第十章 国境
北方将軍のスギモト公爵の軍が国境にはりついている中で、ヤマトの騎士達が薄暗い夕闇の中で国境沿いを見回りしている。
全員が騎馬鉄砲隊の騎士達だ。
騎馬で国境の柵の様子を廻って見ていた。
スギモト公爵も緊急で中央大将軍のイジュウイン大公と近衛将軍のサイトウ公爵とともにワイバーンでミツキ達と先にヤマトに帰り、自分の軍の指揮区に戻っていた。
そして、すぐにもイジュウイン大公は後詰として北方の国境に出発して、スギモト公爵の後方に陣取りをした。
さらに、いつでもフォローを出来るように、その後方には近衛のサイトウ公爵も布陣していてた。
すでに、国境自体は柵のようなもので全部遮られており、それを見回る作業を騎士達がしていたのだ。
遠眼鏡でも、柵が壊れればすぐに分かるように物見の櫓で作った建物も一定の距離ごとにあり、現在の所では柵がまだ破られた形跡はない。
柵自体は構造自体は簡単なものだがしっかりとしていて、柵の周辺には爆薬を使った罠などが仕掛けてある。
定期的にそれらは手入れされて、地形のポイントごとに置かれていた。
柵はあくまで、侵入者の確認で使われていたのだ。
そして、それらの管理も含めヤマトの騎士が定期的に見回りをしているのだった。
「今日も動きは無いな」
騎馬で騎士を率いる隊長が言った。
「あの<終末の子>であるユウキ様も戻られたようだし、さらに爆龍王ゴウオウやリヴァイアサンまでいるのに、連中が攻めてくるとは思えませんがね」
隊長を追う騎士が馬鹿馬鹿しいと言う感じで答えた。
「確かに、そう思いますよ」
他の騎士も答えた。
「……妙だ」
隊長が馬を走らせるのを止めて、一番近くの物見の櫓を見た。
「どうかしたんですか? 」
仲間の騎士が聞いた。
「物見の櫓では常に誰かは柵の監視で見てないといけないのに、誰も出てこないし薄暗いのに灯火もともしてない」
隊長が馬に備えてた火縄銃を取って、早合とカルカで弾を込める。
それを見て、慌てて、騎士達も火縄銃の用意をした。
雷管が作れなかった為に、いまだに火縄銃であるが、実は魔法の研究を応用して、鉄砲自体や火薬を強化して、日本の火縄銃より倍くらい火力を強くしてある。
騎馬で操作するには、向うの世界のものより反動もあり非常に難しいのだが、こちらの騎馬鉄砲隊が優れてるのは、それをやりこなす練度を持っていた。
騎馬で用心深げに騎士達が近づいて行くと、いきなり櫓の陰からボウガンを射られた。
すぐに応射するが、敵の数が多い。
「どこから、来たんだ」
火縄銃で雨合羽のような布を被っていた敵の兵士が撃たれて倒れ、雨合羽のような布が取れて姿を現した。
それは人間で無く、醜い小人だが頑強な身体をしていた。
「ドヴェルクだ! 闇の妖精のドヴェルクだ! あいつら、穴を掘って地下から来やがったんだ! 」
その姿を見た騎士が叫んだ。
隊長が、紙で綺麗にくるまれた馬につけている小型の火縄銃を取ると、上に向けて撃った。
一種の信号弾の様になっており、黄色い煙を出しながら、ピィィィィィィと音を立てて上空で花火の様に華を咲かせた。
その後、大量に殺到するドヴェルクに射られながら、騎士達は絶命した。
ブックマークありがとうございます。
たくさんの人に読んでいただいて本当にありがとうございます。