第十三部 第八章 ヨシアキ大佐
クニヒト大佐は、ヤマトの港に着くと、妊婦達に連れて行かれた。
まるで刑事に連行されてるみたいだ。
「恐ろしい世界だな」
横でカルロス一世がぽつりと言った言葉が本当に心に刺さる。
連れてこない方が良かったかもしれないけど、あんなに妊婦がいるなら、ほったらかしもまずいしなぁ。
後、とりあえず、こちらの御付武官として、懐かしいヨシアキ中佐……今はヨシアキ大佐が来た。
いつのまにか、クニヒトと階級並んでたのね。
皆、順調に出世してるなぁ。
「お久しぶりです」
ヨシアキ大佐が俺に敬礼した。
「え? 言い方が丁寧なんで、気持ち悪い。」
俺がヨシアキ大佐に突っ込んだ。
「そりゃ。今を時めく<終末の子>様ですし」
「やってる事、全然変わらないから、今まで通りでいいから」
俺が引き攣った顔で答えた。
「ははははは、なるほど。君は変わらないなぁ。分かった。前と同じように話をするよ。それにしても、前は悪かった」
頭をかきながら、ヨシアキ大佐が謝った。
「いや、もう終わった話だし」
「そうか」
「それよりも、どんな状況なの? 」
「とりあえず、国境付近に向こうが十万くらい軍を集中させて来てる。南下する気かもしんないけど、ヤマトを攻めるにしては兵が少なすぎる」
ヨシアキ大佐が思案するように答えた。
「アレクシアの残党も動いてんじゃないの」
俺が聞いた。
「その動きはあるけど、少数だね」
ヨシアキ大佐がきっぱりと答えた。
「じゃあ、何を思って仕掛けて来てんだろう」
「分からん」
「聖樹をおかしくしてるようだから、恐らく封印されたものを解放しようとしてるんじゃろうな」
樹老人が横から参加して来た。
「なるほど、スルトかヨルムンガンドですかね」
カルロス一世が聞いた。
どっちもやばい名前なんだが……。
「こ、この御方は? 」
ヨシアキ大佐が樹老人を見て驚いて聞いてきた。
そりゃ、樹のような肌して、コロポックルより少し大きいようなサイズだもんな。
びっくりするわ。
「ああ、樹老人様だ」
カルロス一世が俺が言う前に答えた。
「ええええええ? 」
言いながら、土下座してヨシアキ大佐が深く頭を下げた。
「このような所で、あの樹老人様にお会いできるとは」
ヨシアキ大佐が感激して目がうるうるしてる。
おや、頭を打ったのかな?
「そこまで、せずともいいぞ」
樹老人が笑った。
「私のカガ伯爵家は樹老人様が現われになられたら、必ずその御方に従い世界の助けをしろと代々言われてるのです」
感慨深げにヨシアキ大佐が言った。
「ほぅ、ヤマトの七支族の一つじゃな」
樹老人が答えた。
「ははっ、その通りでございます」
ヨシアキ大佐がさらに深く土下座した。
「じゃ、君にパスを」
俺が両手で樹老人を抱えると、ヨシアキ大佐に渡すように差し出した。
「また、これか……」
樹老人が呆れた顔で俺を見た。
「お、お前、何という事を」
カルロス一世が横で驚いている。
「き、貴様! 何という事を! 」
ヨシアキ大佐が立ち上がって同じように怒った。
「いや、私なんかより、相応しいでしょ」
俺が平然と答える。
「な、何を考えてるんだ? 」
ヨシアキ大佐が怒鳴った。
「いや、こいつはこういう奴だぞ」
いきなり、上空から声がして、爆龍王ゴウオウが降りてきた。
「ななななななななな」
ヨシアキ大佐とカルロス一世が爆龍王ゴウオウを見て驚いた。
叫んでるのはヨシアキ大佐だが。
そこに、ワイバーンでミヤビ王女とキョウカも降りてきた。
「その逃げようとするのは諦めたらどうじゃ」
龍女さんが横で言った。
「こいつには無理なんじゃないですかね。龍女殿」
爆龍王ゴウオウが呆れたような顔をした。
「え? 龍女殿? 」
さらにヨシアキ大佐が驚く。
「ああ、角を隠して目立たないようにしとるからの」
言いながら、帽子を外して、龍女さんが頭の龍の角を見せた。
その時、海からザバリと上がって、リヴァイアが出てきた。
そのまま、ミツキが誘導してこちらに連れて来る。
「ななななななななななな」
ヨシアキ大佐がさらに驚く。
「なんか、爆龍王ゴウオウやリヴァイアが泊まれるくらいの巨大な宿舎があるってよ」
ミツキが嬉しそうだ。
「へー、じゃあ、最初っから、俺達が帰ってくるように狙ってたのか」
俺が呆れたように笑った。
「だろうね」
ミツキが肩をすくめた。
「な、何? リヴァイアサンも連れて来たのか? 」
話してる俺を掴んで、ヨシアキ大佐がゆさゆさする。
「ああ、義弟だし」
「し、信じがたい面子だな」
物凄い顔して、ヨシアキ大佐が驚いてる。
「大仰な奴だなぁ」
俺がポツリと呟いた。
「いや、普通の奴はびっくりすると思うぞ」
カルロス一世が呆れたように言った。
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