第十三部 第七章 エーデルハイトの王宮
エーデルハイトの首都は盆地にあり、海に近い側の一部の山を崩して交通の便を良くするように港を作っていた。
そして、この山々に囲まれた盆地が要害の様になるように作られており、その真ん中に王宮を置いていた。
そのエーデルハイトのフリードリヒ四世大帝が王宮の謁見の間で報告を受けていた。
報告しているのは臣下の貴族のアドルフ三世シャウエンブルク伯だ。
「<終末の子>が旗艦艦隊とコンチュエの第一艦隊とココドウリロを引き連れて、ヤマトに戻ってくるようです」
「やはり、あの男を戻してくるか」
「厄介なのは、爆龍王ゴウオウとリヴァイアサンが一緒のようです」
「そうか」
「まだ、ニーズヘッグは、まだ聖樹を乗っ取れないか」
「はい。もうしばらくかかるかと」
「乗っ取れれば、スルトの封印が解ける。スルトの封印さえ解ければ、我らが勝つ」
フリードリヒ四世大帝が断言した。
「はっ」
「もはや、<終末の子>など恐れるに足りず。我らこそ、あちらの世界と戦い、この世界を助けるにふさわしいのだ」
「おっしゃる通りでございます」
「なぜ、我らがあのような下品なヤマトの下風に立たねばならないのか。我らこそ、この世界の覇者たるべきだ」
「ははっ」
「闇の妖精たるドヴェルグは部隊として編制できたか」
「そちらの方は順調です」
「もしも開戦すればドヴェルグを先制させて、ヤマトの兵を消耗させるのだ」
「すでに、第一軍と第二軍に配属させて、南下させております。国境付近に布陣させるつもりです」
「それでよい」
「<終末の子>は龍女を手に入れたが、蒼穹船をまだ使っておらぬ。恐らくあの世界より来た連中を警戒して出せぬのであろう。蒼穹船が動けば我らは勝てぬ。その前に決着をつけるのだ」
「ははっ」
アドルフ三世シャウエンブルク伯が畏まると、謁見の間を退出して行った。
「あの時、我らはあの<終末の子>の小僧を警戒しすぎた。お蔭で我らの威信にもヒビが入り、我らはあちらの世界との大戦にも関われぬようになった。我らの恥を<終末の子>を潰す事ですすぐのだ」
フリードリヒ四世大帝が一人で呟いた。
「それで、いいのです猊下」
すぐ横にいる黒髪の男が頷いた。
身長は百八十前後で年齢は二十歳くらいでやせ形だが筋肉質な体格をしている男だ。
姿はエーデルハイトのような白人で無く、ヤマトのような黄色人種の……もっと言うとヤマトの人間のようだ。
但し、服装はあちらの世界の服装だった。
「御堂祐樹ごときに折れる事は無いのです」
小声だが、ハッキリとユウキのあちらの世界での名前を言った。
そして、右手を血が出るくらい強く握った。