第十三部 第六章 恐怖の軍団
「随分、スピードが上がるもんですね」
ミツキがカルロス一世に聞いた。
「ああ、エテルノの長い歴史の中で、スピードが出る様に品種改良し続けたワニだからな」
カルロス一世が頷いて胸を張った。
「尾が平べったくなってるんですね」
アオイも海を見ながら聞いた。
「そうだ。あれで外洋もいける。ワニと言っても、ほぼ別種に近い。エラ呼吸も出来るしな」
カルロス一世がさらに胸を張った。
「素晴らしいですね」
チアンウェイが少し頬を染めた。
「エテルノの叡智の一つだからな」
カルロス一世が頷いた。
「で、逃げるために、このスピードですか」
俺がカルロス一世に聞いた。
「ほほぅ。嫌な事を思い出させる甥だな」
カルロス一世の頬がピクピクしてる。
「いえいえ、私も気持ちが良く分かるようになりましたから」
俺がほほ笑んだ。
ミツキとアオイが足をグリグリ踏んだ。
ミオが俺の背中を指で捻った。
「なるほど、理解できたなら、分かるだろう」
「反省しております」
ミオやミツキにツネられたり、足をグリグリされながら、頭を下げた。
「まあ、しょうがないさ」
なんか、凄いさわやかにカルロス一世が笑った。
まるで、悟りを開いたような言い方だった。
せつない。
「認めたくないものだな。自分自身の若さゆえの過ちと言うものを」
池田〇一さんの声で、クニヒト大佐が言った。
あれ?
壊れた?
「おい。兄弟。向こうから高速帆船が来るぞ」
アポリトが言った。
索敵が出来るので流石にアポリトは気が付くのが早い。
「高速帆船? 」
「ヤマトの船のようだ」
「ヤマトから一日くらいかかるだろうに」
「何だろう。妊婦さんがたくさん乗ってる」
アポリトが不思議そうだ。
「えええ? 妊婦さんだろ? 揺れるのに大丈夫なの? 」
「おや、家族の迎えのようだな」
国王が笑った。
こちらの連合艦隊がエテルノのワニのお蔭で凄いスビート出てるんで、みるみる点だった船が目の前に近づいた。
「私もよくよく運の無い男だな」
池田〇一さんの声でクニヒト大佐が言った。
言いながら、シ〇アの仮面を取り出してつけてる。
そして、髪に小瓶の何かの液体をかけて、髪の毛を金色に変えた。
何、それ?
染色剤なの?
多分、魔法薬だよね。
「えーと」
向こうの高速帆船が近づくたびに俺の声が震えてくる。
「なんだ、あの数は」
カルロス一世も震えるように言った。
船の甲板に百人くらいの妊婦が乗っている。
真ん中には噂のララ〇そっくりの腹ぼての人がいた。
「お前……」
俺がクニヒト大佐を震える様に見た。
「マジか」
アポリトも横で驚愕して呟いた。
「当たらなければどうと言う事は無い。……と、思ってた時期が私にもありました」
池田〇一さんの声でクニヒト大佐が答えた。
金髪でシ〇アの仮面つけてるんで、もう、シ〇アにしか見えない。
「「「「「パパ! 」」」」」
妊婦たちがシ〇ア姿のクニヒト大佐が見えたのか、一斉にパパ、パパ言い出す。
ほんげぇぇぇぇぇぇ。
ガチですか。
「……どうするの。あれ」
見ている俺ですら震える。
「一応、国費が出てるから、貴族なりの生活は出来てるぞ。何と言っても、クニヒト大佐は功労者だからな」
国王が満面の笑顔だ。
「そ、それで、済むんだ」
俺がため息ついて、それ以上言えない。
「恐ろしいな」
カルロス一世が凄く実感のこもった呟きをした。
「わぁ、赤ちゃんが一杯できるね」
ミツキが嬉しそうに羨ましそうにじっと見てる。
俺は横で脂汗が出た。
やばいな。
「私達も頑張らないと」
アオイがニッコリ笑った。
「赤ちゃんで家を埋め尽くさないと」
ミオが横でぽつりと呪いのように呟いた。
俺とアポリトとカルロス一世が目を合わせて震えた。
こえええ。
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