第十三部 第一章 プロローグ
げっそりとやつれたように、宿舎の特別室の鏡の前の瓶の数を見る。
おや、六本ある。
道理で。
途中で口移しでお水とか言って飲まされたが、全部、精力剤だったんだな。
アオイやミヤビ王女やムラサキや龍女さんからミオまで、満足そうに全員裸で寝てる。
おかしいな。
途中から一日三回のノルマが五回になってた。
このペースで増えていくと、流石に身体が死ぬ。
<終末の子>が腹上死したら、どうなるんだろう。
ひでぇ話だ。
後、ミツキの言葉で思い出したが、赤ちゃんもどっかで出来るだろうな。
そう言えば、エテルノのカルロス一世が一日五十回やったら、そりゃ妊娠するわなと震えてた。
まさに、今、それが我が身に振りかかってる。
人を呪わば穴二つ。
まさに、因果応報か。
ふらふらしながら、服を着ると、とりあえず、朝のもう一度などと言う怖い事にならないように、そっと部屋を出た。
廊下をふらふらと歩くと、目の前の暗がりにポツンとどっかで見た物体が体育座りで座ってる。
何やってんだ、こいつ。
「何やってんの? 」
俺に声を掛けられてびくっとしてる。
「な、なぜ、俺が見える」
「いや、普通に暗いとこに居るだけだろ。見えるわ」
「一応、スキル隠蔽かけてたんだが」
「丸見えだぞ」
「そうか……ルグ様はどうなったのかな? 」
「マンティコアのゾンビに踏みつぶされて死んだぞ」
「共工様はどうしたのかな? 」
「女媧に封印された」
「なんで、あちらの世界にいる女媧様が」
「うちの親父が持ってきた向こうの世界の武器に何か仕掛けてたらしい」
「そうか……」
「で、何してんの? 」
「……糸でぐるぐる巻きにされて、気がついた後に何とか足だけで必死に隠れて。巻かれた糸を渾身のヴァンパイアの力で切って、それから再度、お前達を襲おうとしたんだけど、タイミング外しちゃって」
「で、結局、ズルズルここで時間潰してた訳か」
「ルグ様に何かあったのは、連れてきた下半身だけのゾンビが皆、動かなくなったから分かったんだけど、今更出て来れなくて」
「ほう」
何やってんだか。
「何だ、兄弟。ファウロスじゃないか」
アポリトが後ろから俺達に声をかけてきた。
「何やってんだ? 」
「なんか、隠れて襲おうとしてタイミング待ってるうちに出るタイミング外して、ずっとここにいたそうだ」
「ありがちだな」
「アポリトは何してんの? 」
「索敵やったら、敵か味方か良くわからん奴がここにいたんで。そうか、ファウロスだったか」
「もう、君、諦めたら? 」
俺がファウロスに言った。
少し、ファウロスが泣きそうな顔になった。
そしたら、後ろからコツコツ足音がした。
「諦めたら、そこで試合終了ですよ」
後ろを振り返ったら、口を膨らましたイジュウイン大公がいた。
「……安西〇生の真似ですか」
俺がイジュウイン大公に言うと、大公はこくりと頷いた。
はあ。
そしたら、ファウロスが目をキラキラさせてコクコクと頷いた。
おい。
マントをばさりと頭からかぶると、じっと俺を見た。
「今度は負けない」
そして、後を振り返らないで、朝日の中をアチアチと、かすかに焼けながら去って行った。
「ふっ、良い若者じゃないか」
イジュウイン大公が笑った。
「あれ、敵ですけど」
「え? そうなの? 仲良さそうだから、味方かと思っちゃった」
イジュウイン大公が焦っててる。
アポリトと俺が頭を抱えた。
あーあ。