第十二部 第十一章 決戦
と言う事で、一人で王城から豪雨の中、共工のいる場所へ向かう。
なんじゃ、これ。
火事場のクソ力ってこういうもんだっけ?
自分でピンチになりに行くの?
泣ける。
無いわ、これ。
「ほら、お兄ちゃん。頑張って行く」
横で雨に塗られながらミツキがマンティコアに乗ってついてくる。
「いやいや、本当にフラグだから来るなよ」
俺がミツキに言った。
「心配するな。何かあればわしが守る」
ミツキの横に樹老人がいた。
「私達もいますから」
アオイやムラサキやミヤビ王女や龍女さんやキョウカさん達まで一緒についてきてる。
全員騎乗してた。
馬に乗れたんだ。
「ちゃんと、わしも見ているからな」
チアンウェイが騎馬で俺に話しかけた。
チアンウェイが馬を貸してくれたわけだ。
「お兄ちゃん、心配してくれるんだね」
ミツキがちょっと頬を染めて嬉しそうだ。
「はい、いちゃいちゃ禁止だから」
クニヒト大佐が突っ込んだ。
いや、別にお前は来なくて良いけど。
「「安心しろ、パパもいるから」」
国王と宰相も笑顔だ。
いや、別に以下同文。
なんなんだ、この面子。
「そろそろ、聖樹装兵を着装しろ」
樹老人が俺に言った。
三百メートルくらい前で巨大な滝のような水の壁が出来ている。
凄まじい巨大さだ。
共工の凄まじい力を感じる。
「ふぅ」
溜息をついて聖樹装兵を着装した。
「さあ、地獄の始まりだな」
と、瞬時に右手に刀を装着させて、上段から何か斬り込んでくる同じく五メートルくらいあるものの刀らしきものを受け止めた。
なんだ、これ?
見ると、親父がこないだエテルノのカルロス一世の結婚式に着てたパワードスーツだ。
双方、つばぜり合いから、互いに蹴りを放って、相打ちする。
むぅ、タイ捨流だ。
「なんだ? ユウキか? 」
パワードスーツのハッチが空いて親父が姿を見せる。
俺も、聖樹装兵の着装を開いて、自分の顔の部分だけ出して見せた。
「親父、何やってんだ? 」
「シュウジ」
「兄貴」
国王と宰相が親父を見て驚いてる。
「なんだ、勢揃いじゃないか」
「まさか、親父、共工と組んだのか? 」
俺が親父に聞いた。
「いやいや、母さんに言われて、共工を封じ込めに来たのさ」
「は? 」
「まあ、敵同士ではあるが、共工の力が発揮されれば、民も苦しむし、我らの決着にも余計な邪魔になるかもしれんとの事でな」
「母さんって? 」
「俺が恐る恐る聞いた」
「ああ、女媧だぞ」
親父が軽く答えた。
「はぁぁあああぁぁああぁぁぁぁぁあ? 」
「ああ、コンチュエに居るんだから、気が付いてたのかと思ったが」
親父が平然としている。
「な、何じゃと、女媧本人なのか」
樹老人が凄い驚いた。
「おや、これは樹老人殿か? そのとおり、本人です」
「一体、何がどうして、そんな事に」
俺が焦りながら聞いた。
「うーん、まあ、なんだ。父さん、金を稼ぐためと、自分の訓練絡みでいろいろと武道を習ってたら、アメリカの特殊部隊出身の人と会って、高校生だけど紹介で身分を偽って、傭兵学校に通ったわけさ。んで、偽った身分のままで、夏休みに傭兵会社に入ってな。多分、向うの世界の神族にばれてたんだろう。監視されながら連中の仕事を手伝ったわけだ」
親父が軽く答えた。
「そ、それで? 」
「うん。そうしたらな。おれも興味ある所は、いろいろ覗いちゃう方で、間違って、女媧が眠ってるとこに入っちゃって、起こしちゃったんだ」
親父がてへって感じで笑った。
「まあ、そしたら、いろいろあって高校生って、ばれて仲良くなっちゃって、まあ、なんだ、お前が出来ちゃったと」
親父がテレテレしてる。
ちょっとキモイ。
「いやいや、避妊しろよ」
「それがな。持ってたゴムに穴が空いてたんだ」
「ぶーーーーっ」
俺が唾を吐いた。
あれ?
それって一番みっともない妊娠の仕方じゃね?
自分が出来た話なんか聞きたくない上の羞恥プレイやん。
「なるほど、ゴムの穴で出来たわけだな」
国王がうんうんと頷いた。
後でコロス。
「それで、女媧って言うか母さんが本当に子供が産まれてうれしかったらしく、それで、あちらの世界で家族みたいな暮らしをしばらくだけしたわけだ」
親父が笑顔だ。
「幸せだったわけね」
「家族自体は良かったんだけどなぁ」
「何かあんの? 」
「何しろ、母さんってあの世界のトップだし、金持ってるから、ぶっちゃけ、あっちの連中にヒモ扱いされてな。いろいろ金を稼いで見返そうと頑張ったんだが、もう、全然無理でなぁ。仕方ないからいろいろとこう言う手伝いだけでもやってるわけだ」
「ああ、それでいろんなことやってたんだ」
「そうだよ。しんどかったわぁ」
親父が疲れたように溜息ついた。
「じゃあ、事故は」
俺が聞いた。
「前も言ったろ。家族仲良しで暮らそうと思ったら、お前が<終末の子>だって分かった。母さんは自分の子供を始末するのが忍びなくて、お前に選択肢を与えたわけだ。どちらを選ぶかと」
「それでか」
「ああ、こっちを選んだ時は悲しんでたぞ」
むう、心が痛む。
「まあ、とりあえず、そろそろ、こちらも片づけるから待ってろ」
親父が言ったと同時に、ミサイルがいくつもとんできて水の壁に当たる。
「トマホークか? 」
俺が聞いた。
「ああ、特別製だがな」
親父が答えた。
ミサイルが水の壁に当たると、次々と幾何学模様の輪が出来る。
そして、それが幾重にも重なって、共工を閉じ込めだした。
「母さんの結界だ。良く見とけ。最強の力を」
幾重にも幾重にも重なった幾何学的な輪が美しい芸術の様に囲みになっていく。
「ぐおぁぁあああぁぁぁぁぁぁ!! 」
叫び声を共工が上げるが、それは悲鳴のように聞こえた。
光り輝く幾何学的な輪が、美しい箱に変わり、共工を箱に封じ込めたまま、そのまま消えていく。
「これで、終わりだ」
親父が言った。
それと同時に雨が止んだ。
そして、朝日が昇って朝焼けになった。
そんな場所で、大きな水たまりの中で、俺と親父が対峙した。
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