第十二部 第三章 またしてもファウロス
会議も終わり、第二迎賓館も破壊された為に、我々は王城の特別室に移った。
慌てて、泊まれる部屋を準備したのだろうが、十分に配慮された部屋になっていた。
まあ、欠点と言えば、部屋の中にトイレが無く、王城のトイレに行かなければならないのと、国王やヤマトの人間はブツブツ言っていたが、風呂が個人用の陶器の小さいものしかない。
それも、これまた王城の遠くの部屋に入りに行かないとならない。
ヤマトのように風呂完備なんか無理なんだから、受け入れりゃいいのに、外面はいいから表では言わないが、皆のいる特別室を改造した宿舎では凄く五月蠅い。
めんどくさいので、アポリトとアオイなんかと王城の中を軽く散策していた。
すでに、夜ではあるが、まだ異教の一部と教主のルグとか言うネクロマンサーが捕まっていない為、衛士があちこちで警備している。
かがり火があちこちでたかれていて、逆にそれが綺麗だ。
「まあ、不謹慎ですけど、綺麗ですね」
アオイが俺の手を握ってきた。
「まあね」
俺が答えた。
きっと、かがり火の配置や王城との距離などが絶妙で、これは計算され尽くしたものなんだろう。
「兄弟。すっかり、外は闇夜だな」
アポリトが呟いた。
「ああ、それもあってかがり火を大量に炊いているのだろうな」
俺がそれに同意して答えた。
その時、空から変な黒いものが十メートルくらい前に降りてきた。
なんだ、この黒いゴミみたいな奴は。
その黒いものが立ち上がった。
「ふははははははははは、私を覚えているか! 」
誰だろうと思って見れば、ファウロスだった。
「えええええ、身体がバラバラになったはずなのに、復活出来たの? 」
俺が驚きを隠せない。
「ふははは、馬鹿め、あの時、俺は片腕と頭だけは何とか守って、他はバラバラにされたのだ。本来なら、そのまま海に漂うはずが、新しいマスターに拾われて、復活したのだ」
ファウロスが嬉しそうに胸を張った。
「新しいマスターだと? 」
アポリトがファウロスに問いただした。
「そうだ、ネクロマンサーのルグ様だ」
「はあ? 」
いきなり、敵のトップやんか。
「見よ! この身体を! この国の最近亡くなった勇者の身体を移植して復活したのだ! 」
「え? ヴァンパイアじゃなかったのか? 」
アポリトが唖然としてファウロスを見た。
「え? 頭と片腕以外はゾンビなの? 」
俺も唖然として聞いた。
「ふははははははは、その通りだ」
ファウロスが自信満々だ。
「いや、それ、出鱈目だろ! ヴァンパイアとゾンビとどっちなんだよ! 」
俺があまりに無茶苦茶な話なんで突っ込んだ。
「ふふふふ、ハイブリッドと呼ぶがいい」
ファウロスはくじけない。
「何なんだ、お前」
アポリトが呆れ果てたように言った。
「何事だ! 」
そこへ、チアンウェイがいきなり現われた。
こいつ、こないだも突然現れたが、テレポート出来るんだな。
この国では縮地とか言うんだっけ?
「こいつは一体、なんなんだ」
チアンウェイが俺に聞いた。
「いや、上半身は君の眷属のヴァンパイアのシモベで、下半身はゾンビでネクロマンサーのルグに作ってもらったんだと」
俺が呆れたように言った。
「なんだ、その出鱈目は」
チアンウェイもかなり面食らったようだ。
「いや、俺に言われても」
「こいつも、やはりヤマトなのか? 」
「いや、元はパトリダの海賊だ」
アポリトが横で答えた。
「名前はア〇ルオ〇ニーだ」
俺が教えた。
「は? 」
チアンウェイが凄い顔してる。
「その名前は止めんか! ファウロスだ! 」
ファウロスが叫んだ。
「いや、ア〇ルオ〇ニーのインパクトが凄くて」
俺が照れたように答えた。
「やかましいわ! 貴様だけは絶対許さん! 」
ファウロスが俺に相対して身構えた。
仕事の休憩中に送ります。
今日も結局、二話投稿になりました。
いつも、読んでいただいてありがとうございます。