第十一部 第八章 対策
俺達が女帝の元に行くと、女帝も矢継ぎ早に城の衛士達に指示を出していた。
「女帝! 」
チアンウェイが忙しそうな女帝に声をかけた。
「おお、チアンウェイ、これはやられたかもしれぬ」
女帝の顔が暗い。
「やられたと言いますと」
チアンウェイが聞いた。
「海が酷く荒れだして、港に接岸してた第一艦隊は沈没を恐れて沖の安全な島の港に移動している。さらに、一番近い鎮西将軍のリィシン将軍の元へ使いを出したが、大河ツァイホンが洪水を起こせば兵が渡ってこれぬ」
女帝が呻くように顔を覆った。
「敵はどの程度なのですか? 」
「偵察の者よりの知らせでは約三千じゃ。数自体はたいしたこと無いし城を閉めて籠城すれば別じゃが、ツァイホンの洪水の仕方によれば、この城も危うい。また衛士や近衛も国民達を救うために、街へ散っておる。この間を狙っておったのじゃろうが、どうにも厳しい」
そこに、巫をしているリアンフアさんがやってくる。
「聖樹様より、彼らの狙っているのは、この王城の地下の神殿と聖樹様だとおっしゃられています。これらの共工の封印の全てをとけば、共工はさらなる力を発揮するとの事です」
リアンフアさんの顔が暗い。
「そうか」
女帝も短く答えた。
「あ、これは救世主様。前にお会いした時はすいませんでした。貴方がまさか<終末の子>であると思わず、失礼な事を」
リアンフアさんが、俺に頭を下げた。
正直、モンスター扱いだったし、その後、どさくさで逃げたし、逆にそれだからこそ、パトリダにいる今の自分がある訳だし。
どうにも、言い難い気分だ。
「いえ、いいんです。気にしてませんから」
笑って、申し訳なさそうなリアンフアさんに答えた。
「ありがとうございます」
少し頬を染めて、リアンフアさんが頭を下げた。
何だろう、アオイとかミツキとかムラサキとかの目が怖い。
「女帝、心配なさるな。我の眷属どもに撃退させよう」
え?
あの、お笑いコンビにか。
「ゴーレムは土砂降りで厳しいんじゃないの? 後、ヴァンパイアも雨は苦手だったと思うけど」
ミツキが横で突っ込んだ。
「分かっておるが、それどころであるまい」
チアンウェイが厳しい顔をした。
「今、確認が取れた。こちらの旗艦艦隊も離岸してるようだ」
国王が皆に言った。
「つまり、我々の兵も使えないと言う事ですか」
宰相も暗い顔をした。
「こうなれば、リヴァイアサンに頼るしかないの」
チアンウェイが俺を見た。
「あ、でも、あの子、波が荒れて沖に出てますし、火炎攻撃がメインだから、この豪雨では難しいと思いますよ」
アオイが横から答えた。
「では、どれも役立たずではないか」
チアンフェイががっかりした様だ。
「すまんが、兄弟の事を悪く言わんでくれ」
俺がチアンウェイに頼んだ。
「そのとおりだ」
アポリトが横で頷いた。
「は? リヴァイアサンが兄弟なのか? 」
「ぼっち同士の義兄弟なんだ」
俺が答えるとアポリトが横で何度も頷いた。
「ぼっち? とは? 」
チアンウェイが聞いてきた。
「いや、強すぎたり、性格の問題とかあって、周りに友達とかいない奴の事だ」
俺が答えた。
「え?……」
チアンウェイが言いまどう。
あれ?
こいつも、ぼっちか?
「あ、やっぱり、ぼっちなんだ」
クニヒト大佐が言った途端、チアンウェイの膝蹴りを顎に受けて、下に崩れ落ちた。
「「「「おおおお! 」」」」
イジュウイン大公、サイトウ公爵とミヤタ公爵とスギモト公爵とミタライ公爵とフジワラ侯爵が拍手した。
駄目だこりゃ。
「出来るかどうかは分からないんですけど、一か八かですが、良い方法があるんですが」
俺が皆に言った。
「何、その懐かしい、凄く嫌なフレーズ」
クニヒト大佐が顎を抑えながら、突っ込んできた。
「兄弟、何か、手があるのか?」
「ああ、アポリト。お前の索敵でどの辺に敵がいるか教えてくれれば、やって見ようと思う」
俺がアポリトに言った。
「なんか、嫌な予感するんだけど」
ミヤビ王女も横で不安な顔してる。
「まあ、言ってる場合では無い。頼めるか」
チアンウェイが頭を下げた。
「分かった」
俺がチアンウェイの言葉に頷いた。
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