第十一部 第四章 相柳(そうりゅう)
「みぃぃぃぃつけたぁぁぁぁぁ! 」
辺りが震えるようなどす黒い声が響いた。
窓を見ると巨大な人間の頭が縦三個横三個の九個並んで、こちらを覗いている。
旧館の三メートル以上ある大きなガラス窓と同じくらいの大きさだ。
一個の頭の大きさは人間の三倍くらいある。
どの顔も恐ろしく不気味な顔色をしている。
「何、これ? 」
俺がドン引いた。
「ジ、ジ〇メン? 」
イジュウイン大公が叫んだ。
「ジ、ジ〇メンだと! 」
サイトウ公爵も叫ぶ。
「とうとう、デビ〇マンが始まるのか! 」
国王がぐっと手を握ってガッツポーズをした。
「ついに、来ましたね! 」
宰相も目が爛々としてる。
「すいません。真面目にしませんか」
俺が呆れて言った。
「なんじゃ、この連中は、九個の頭と言えば共工の配下の相柳しか無いじゃろ」
チアンウェイも困った顔をした。
いや、知らんだろ、そんなの。
「馬鹿で、ごめんね」
ミツキが仕方なしに謝った。
ガラス窓がバリバリに割れて、九個の人間の頭を持つ蛇が入り込んでくる。
「うわ、蛇だ! ジ〇メンじゃない! 」
国王が少しがっかりしたように叫んだ。
「こわっ! 何、これ、こわっ! 」
いまさらのように宰相も叫んだ。
と同時に龍女とチアンウェイが手をかざして二度の爆発が起こって、相柳が吹き飛んだ。
吹き飛んだ後の相柳にミヤビ王女が次々と手の紋章をかざして、火の玉を相手にぶつけて爆発させていく。
ファイヤーボールの連打のようだ。
「そういや、ミヤビ王女って火炎系スキルだったよね。初めて見たわ」
クニヒト大佐が首を傾げながら言った。
「いや、それ言ったら、俺、お前の狙撃系スキル見たこと無いわ」
俺がクニヒト大佐に突っ込む。
狙撃系スキルに特化した、腕の良い狙撃手とか聞いてたが、俺が会ってから一度も見たこと無いぞ。
本当にこいつ狙撃系のスキルとか使えるのか?
それとも、突込みが狙撃系のスキルとでも言いたいのだろうか?
「私の解説はいいから、何とかしなさい! 」
ミヤビ王女がクニヒト大佐に叫んだ。
どうも、この不気味な相柳は一匹だけで無かったらしい。
次に割れたガラスから別の九個の頭がのそりと建物の中に入ってくる。
「みぃぃぃいつけたぁぁぁぁぁああ! 」
龍女が手をかざして、覗いてきた相柳の頭を吹き飛ばす。
「みぃぃぃつけたぁぁぁぁぁあ! 」
「みぃいいいいつけたぁあああぁああ! 」
窓の外から相柳の声が次々と聞こえる。
完全にホラーだ。
「なぁ。あいつらを倒すためなら、この建物を壊しても良いんだよな」
俺がチアンウェイに聞いた。
「かまわぬ。このまま行けば。大変な事になる」
旧館の外で、グォクイ将軍と衛士達の叫び声も聞こえた。
「分かった。じゃあ、暴れるぞ」
そうして、俺は聖樹装兵を着装した。
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