第十一部 第二章 チアンウェイ
俺達が謁見の間に皆で招かれるとそこには少し痩せたが、元気そうな女帝の姿があった。
「救世主殿、良く来られた。こないだは本当に皆の為に囮になってくれてありがとう」
女帝が本当に嬉しそうだ。
流石に、少し心が痛む。
「いえ、それより、御身体は大丈夫なのですか」
「ああ、樹老人殿に治して貰ったしな」
「たいした呪縛でも無いから、叔母様が大げさなのよ」
横に女帝に勝るとも劣らぬ豪華なドレスを着た美しいけど気位の高そうな女性が言った。
「えーーーと」
本当に困った。
この状況は想定してなかった。
俺以外のカザンザキスさんや樹老人は驚いてるし、アオイやミヤビ王女やムラサキは身構えている。
「なんで、貴方がここにいるの?」
そこには、地下の神殿跡で戦ったチアンウェイがいた。
「だって、私、皇位継承権第一位の皇太女だもの」
チアンウェイが胸を張った。
「いや、女帝陛下に呪縛とかかけていて、平気で女帝と一緒にいるっておかしくね? 」
「なんで? ここは私の国だし。おかしく無いでしょ? 」
チアンウェイが本当に驚いてる。
やばい、本気で素でそう思ってらっしゃる。
「よろしいのですか? 」
カザンザキスさんが流石に女帝に聞いた。
「まあ、お転婆な姪ですもので」
女帝が困ったように笑った。
お転婆?
お転婆で済むの?
なんか、こう、信じられねぇ。
神殿が壊れたせいで、迎賓館までの王城の通路もぶっ壊れたし、かなりの事になってるんだが。
「ほら、お前も謝りなさい。チアンウェイ」
女帝がチアンウェイに謝罪を即す。
「嫌です」
「チアンウェイ様、それはいけませんよ」
グォクイ将軍が流石に注意した。
「なんで? 我らがヤマトの下風に立つ意味が分からない。あの人達、皆、変態だよ? 」
チアンウェイが断言した。
むう、確かに変態かもしれんが。
それは否定しない。
凄い正論だ。
「我々はアニオタなだけだ」
国王がチアンウェイに決然と言った。
「そうです。変態だけど、紳士な変態なんですよ」
宰相も理解を求めるようにじっとチアンウェイを見た。
おいおい、変態を認めるのか。
これ、一応、外交の席でもあるんじゃないの?
「うわぁ、キツイ」
クニヒト大佐が横で呟く。
くっ、的確な突込みを……。
「お父さん、恥ずかしいからやめてくれる? 」
ミヤビ王女が国王を止めた。
「さすがに、変態を認めるのはどうかと」
アオイも宰相に苦言を呈した。
「ほら、皆も言ってるじゃない」
チアンウェイが嬉しそうだ。
「くっ」
国王が悔しそうだ。
「すまん。こいつらは偵察の為に、あちらの世界に十年ほど転生するんだ。それで、向うの文化にかぶれてしまってな。役目で仕方ない部分もあるのだ。許してやってほしい」
樹老人が女帝をはじめコンチュエの皆に宥めるように答えた。
そしたら、チアンウェイが凄い顔してる。
「向こうの文化って……まさか……」
チアンウェイが顔面蒼白になって問いただす。
「そうよ。あちらの世界の文化よ」
ミツキが言った。
「そ、そんな馬鹿な。女媧様がそんな文化を作るなんて」
チアンウェイが震えている。
「え? でも、母さんもアニメが好きだったし」
ミツキがさらに余計な事を言う。
「お前の母さんがどうだろうが、関係無いだろうが! 」
チアンウェイが言った。
「いや、どうも、女媧の家系と関係あるみたいで」
ミツキが言わないでも良いのに喋る。
女帝の王城がざわっとする。
「ああ、まだはっきりしとらんから。これから、いろいろと調べてみんとな」
樹老人が慌てて遮った。
「まあ、神像とうちの母がそっくりだっただけなんで、全然、ちゃんとした話じゃないですから」
ミツキが笑って手を振った。
「おいおい」
思わず声が出た。
敵とそっくりの母親はさすがにまずかろうに。
それは言わない方が良かったと思うぞ。
「あの神像と一緒の姿の母親だと」
ぐはっと言ってチアンウェイが蹲った。
まあ、自分が変態だと断じてた文化が、自分の崇拝する神の血縁と関係深かったら嫌だろうな。
少し、その姿を見て俺は同情した。
ブックマークありがとうございます。
盆も仕事ですが、お蔭で元気になります。