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全部社会が悪いんやっ! 〜ある救世主として召喚された男の話   作者: 平 一悟
人物紹介は470から475のあたりにあります。
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第二部 第一章 プロローグ

 昔、懐かしいジ〇リの魔女の宅〇便のキャッチコピーを思い出した。


 おちこんだりもしたけれど、私はぼっちです。


 確かこんなキャッチコピーだったと思う。


 うろ覚えだが、間違いない。


 あれから数か月が経ち、少しは俺の周りの雰囲気も良くなるかと思えば、ますます尾鰭がついて酷い噂になっていた。

 

 ムラサキが俺に気遣いながら調べてきた話だと、軍の連中がいろいろ言って悪評をひろげてるらしい。


大きく言えば、理由は四つになるそうだ。


 一つ目は、裏切り者として怒り狂ったアレクシア軍に攻め潰されて、クロダ公爵と一緒に亡くなった軍の遺族達の遺恨。


 --俺からすれば、裏切る方が悪いので、それだと逆恨みではないのかと思うのだが、身内が亡くなれば、どうしてもと言う事らしい。


 二つ目は結局、戦争に勝った功績が実質は俺一人にある事で妬みがあるそうな。

 

 --功績も何も軍すら辞める事になったニートだし。


 三つ目は轟天(ごうてん)があれば誰でも出来たとか、聖樹様が特別に扱ったから勝てたとか言ってるんだと。

 

 --だったら、轟天(ごうてん)なんか貰わなきゃ良かった。


 四つ目は、結局、だまし討ちの卑怯な嘘で相手を滅ぼすなんて恥ずかしいと思わないのかと、騎士道とから考えて、あの男は恥知らずだと言う悪評。


 --何にもしなきゃ良かったのかね?


非常に不本意である。


 あまり酷く言われるので、街に出るのも嫌になって、もっぱらムラサキに食べるものなどを街で買ってきて貰って料理して食べている。


 実際、国王の温情でかなりの年金があるんだが、遣う場所が無い。


 仕方ないから、王宮の図書館で本を毎日数冊借りて、引きこもって、それを読んで暮らすだけの生活になっている。


 本くらいしか時間が潰せるものが無い。


 パソコンがあればいいのだろうが、あるわけないし。


 今日も王宮の図書館で本を何冊か借りて、なるべく人に会わないように自分の部屋に帰っていたら、何が悪かったのか、会議に来た将軍達と鉢合わせしてしまった。


 本当に運が悪い。


 そこには御付の騎士をそれぞれ連れた中央大将軍のイジュウイン大公と近衛将軍のサイトウ公爵と亡くなった西方将軍のクロダ公爵の後をついだフジワラ侯爵がいた。


 本来は公爵位で無いと西方将軍にはなれないのだが、今回の戦争でヤマトの西側に領土をもった爵位持ちの貴族が大量に戦死したのと、クロダ公爵家が取り潰しになった為、急遽、病気で戦争に参加できなかったフジワラ侯爵が西方将軍に繰り上がりで任じられたらしい。


 イジュウイン大公とサイトウ公爵はこちらを見て軽く会釈をしてくださったので、こちらも会釈したのだが、それが気に食わないのか、フジワラ侯爵が睨み付けてくる。


「おやおや、捨扶持を貰ってるユウキ殿では無いですか」


 フジワラ侯爵が小馬鹿にしたような顔をした。


 イジュウイン大公とサイトウ公爵が困った顔をした。


「お役に立てない人間ですいません」


 めんどくさいので、とりあえず無難に返事したらカチンと来たようだ。


「貴方は自分のした事を恥ずかしいとは思ってないようですな」


 ネチネチとフジワラ侯爵がいたぶるような顔だ。


 憎らしげに俺を見た。


 それをヨシアキ大尉がまあまあと言う感じで、フジワラ侯爵を抑えようとした。


 その時、見てしまった。


 ヨシアキ大尉の階級章を……。


「あれ? なんで中佐? あれ? どうして中佐? 」


 ヨシアキさんが二階級昇進してる。


 俺には昇進も何も無かったのに。


 ヨシアキ中佐がきまり悪そうに困った顔をしたら、サイトウ公爵の後ろにいたクニヒト中尉が慌てて、自分の階級章を手で隠した。


 すっと一気にクニヒト中尉に俺が近づくと、クニヒト中尉の階級章を隠した手の親指を極めて、クニヒト中尉の階級章を無理矢理見た。


「え? 少佐なの? クニヒト少佐なの? 」


 声が震える。


「あれ、俺がニートやってる間に何か戦争でもあったっけ? 俺が知らなかったのかな? 」


「いや、その、これは……」


 クニヒト少佐がきまり悪そうな顔をした。


「あー、実はね。そのー」


 これまた、ヨシアキ中佐が困り果てた顔をした。


「当たり前だろ! アレクシアの戦で功績をたてたのだから! 」


 フジワラ侯爵が怒鳴った。


 イジュウイン大公とサイトウ公爵がすんごい困った顔をしてる。


「いや、ヨシアキ中佐はまだしも、クニヒト少佐って俺に抱えられて逃げたのと一緒に走って逃げただけだよね? 」


 ヨシアキ中佐とクニヒト少佐が引きつった顔をして困り果てていた。


「なんで? 逃げたら昇進するなら、俺も昇進してるはずだよね? なんで俺の昇進だけ無かったの? 」


「はっ、それも分からないのか! 口先三寸で嘘ばかりついて相手を騙しただけの恥ずかしい男などに昇進などあるかっ! 恥を知れっ! 」

 

 イジュウイン大公とサイトウ公爵があちゃーって顔をして片手で顔を覆う。


「そもそも、轟天(ごうてん)を聖樹様から貰ったから出来ただけで、馬鹿でも出来る事しかしてないカスが功績だの自慢気に話すなっ! 」


 フジワラ侯爵が俺を嘲笑った。


 --俺が無表情になった。


 ヨシアキ中佐とクニヒト少佐の顔が一瞬で真っ青になった。


 そこにいた皆が怯えだす。


「フジワラ侯爵。言い過ぎだ。謝りたまえ」


 イジュウイン大公が慌ててフジワラ侯爵を見た。


「わかりました。私が嘘つきなのがいけないのですね」


 無表情に俺が言うと、威張ってたくせにフジワラ侯爵が少し震えてる。


「ああ、そうだ」


 動揺しながら、フジワラ侯爵が断言した。


 サイトウ公爵もよせって感じで、フジワラ侯爵の右肩を掴んだ。


「わかりました。嘘をつかないようにします」


 無表情に俺が答えた。


「それで、いいんだ」


 フジワラ侯爵が震えながらも偉そうに頷いた。


「では、これまでの自分の誤りを正すために、早速、爆龍王ゴウオウに、私は実はヤマトの人間でしたって謝ってきます」


「「「なっっっ! 」」」


 全員が真っ青になって震えている。


 「流石はフジワラ侯爵です。確かに嘘を言うのは駄目ですね。これからは本当の事を言いますよ。まずは爆龍王ゴウオウに本当の事を言って謝罪しないといけませんね」


 俺が皆にニッコリとほほ笑んだ。


 我ながら天使のような笑顔だったのだと思う。


 皆の顔がすんごい顔になってる。


 きっと騙されたと知った爆龍王ゴウオウは激怒してヤマトに飛んでくるだろう。


 後は知らん。


 俺はスキル大逃亡がさらに進化してスキル高速逃亡に変わったので、謝ったらとっとと逃げよう。


 前のスキルですら捕まらなかったのだから、爆龍王ゴウオウだろうが捕まる事は無いだろう。


 俺はフジワラ侯爵の言うとおりに、ちゃんと謝罪するだけだ。


 ちゃんと自分の行いを反省し、正直に本当の事を言うのだから、文句はあるまい。


 後は本当に知らん。


 どうせ、どうなろうがぼっちだし。


 フジワラ侯爵がまるで金魚の様に真っ青になって口をパクパクさせてる。 


 イジュウイン大公とサイトウ公爵がすんごい顔をしてガッシリとフジワラ侯爵の肩を掴んだ。


「とりあえず、まずは彼に土下座だな」


「五体投地で行きましょう」


 イジュウイン大公とサイトウ侯爵がフジワラ侯爵に見せる張り付いた笑顔が凄く怖かった。



 


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