第十部 第五章 グォクイ将軍
夜間にコンチュエの首都フェイツィの港ユエディンに前日の夜につけたのに、湾内で一泊させられた。
嫌な予感がしてたのだが、当たった。
万どころじゃ無いわ。
十万以上いるんでやんの。
どっから集まったの?
次々と救世主様いらっしゃいの垂れ幕が並んでる。
多少はヤマトの国王一行にもあるが圧倒的に救世主歓迎の垂れ幕だらけだ。
皆、旗振ってるし。
俺がクニヒト大佐とアオイとミヤビ王女を見ると白目になってる。
「勘弁してよ。また、このノリかよ」
俺が頭を抱えた。
「物凄い歓迎だな。兄弟」
横でアポリトが感心してる。
「これだから、来たくなかったんだよ」
俺がため息ついた。
俺達の乗る豪華高速帆船が接岸すると、俺達の帆船の下船場所から馬車まで赤い豪奢なカーペットが敷かれた。
しかも、前回より幅と長さが倍くらい違う。
軍の儀仗兵もカーペットの横に万単位だ。
前の倍近い軍楽隊の演奏が始まった。
俺達を運ぶつもりの馬車は黄金でさらに豪奢に飾られており、それが二十台ちかく並んでいる。
しかも、俺が乗るらしい馬車は8頭だての巨大なものだ。
なんやねん、これ。
「どうしょうか」
俺がアオイやミヤビ王女に聞いた。
「ああ、気にするな。国を挙げての歓待になればこんなもんだ」
横で国王が笑った。
「ええ? 」
「これはこれで、国の威信もかかってますからね。ある意味、相手に対して見せつけてる意味もあるんですから、気にする事は無いですよ」
宰相も笑って答えた。
「確かに、コンチュエほどの大国なら、このくらいはするでしょう」
カザンザキスさんも笑ってる。
むう、流石に、慣れていると言う事だろうか。
「おう、やはり<終末の子>たるもの、このくらいの歓待は無いとの」
横で龍女さんが嬉しそうだ。
樹老人も満面の笑顔だ。
余程、うれしかったらしい。
船のタラップから降りると、カーペットの先にグォクイ将軍が満面の笑顔で待っていた。
前回の実態が逃げただけなので、心が痛む。
「良心が……」
横でクニヒト大佐が嫌な事を呟いた。
ミヤビ王女が目を背ける。
切ない。
「ただ逃げただけだもんな」
「兄弟。確かにキツイな」
事情を知ってるアポリトが横で囁いた。
「良く来た。救世主殿」
グォクイ将軍が歓迎して両手を広げた。
むう、仕方あるまい。
ここは、演技で行くか。
「恥ずかしながら、助かってしまいました。」
少し、はにかみながらほほ笑んだ。
「え? 何それ? 」
「いつものお前じゃないじゃん」
横で国王と宰相が要らない事を言う。
すぐさま、ミヤビ王女とアオイがそれぞれ国王と宰相にひじ打ちを入れた。
この辺は素晴らしい婚約者だ。
二人が脇を押さえて黙ったので、そのまま誤魔化すために、急いでグォクイ将軍と堅い握手した。
「いやいや、助かってくれて良かったよ」
グォクイ将軍の満面の笑顔がまぶしい。
「こいつが死ぬわけないじゃん」
横で国王が言って、再度ミヤビ王女にひじ打ちを食らった。
頼むから黙ってて。
マジでやばいから。
「皆、空気が読めないね」
横でクニヒト大佐が呟いた。
お前が言うなや!!
今日は日曜日何で二つ投稿します。
いつも、読んでいただいてありがとうございます。




