第十部 第四章 コンチュエの第一艦隊
「あのヴァンパイア。何しに来たの? 」
俺が飛び去るヴァンパイアを指差して聞いた。
「あれじゃないか。アニメで良くある、こうライバルが相手を見に来たと言うか」
国王が笑った。
「とても、あんなのライバルだと思えませんが。大体、夜しか会えないし」
俺が馬鹿馬鹿しいと言う感じで答えた。
「意表をついて、ボーイズラブとか」
宰相が突っ込む。
「……え? なんで、そんなおぞましい言葉が」
俺が冷たい目で言った。
「おじさん達の時はボーイズラブは、まだ腐女子の走りみたいな感じだよね」
ミツキが言う。
「おおおい、ミツキまで言うなよ」
「え? でも、ムラサキさん男の娘だし」
「むう。反論に困るような事言われると辛いな」
「すいません。何言ってるか分かんないんですが」
横でクニヒト大佐がドン引いてる。
「つまり、男同志のラブラブな世界の漫画が向こうであるのよ」
ミツキが説明せんでもいいのに説明した。
「「え? 」」
クニヒト大佐とアポリトが冷たい目で俺を見る。
「知らんわ。そんなもん」
俺が反論した。
「こちらの様子を見に来たんだろうな」
樹老人が呟いた。
「様子とは? 」
「お前らの強さとか把握しに来たんじゃろ。恐らく、こちらに残ったあちら側の神族の眷属かなんかじゃなかろうか」
「ヴァンパイアが? 」
「まあ、神族の手が入ったモンスターじゃからな。あちらのは人間型が多い」
「へー。なんか、ぱっとしませんな」
「いやいや、本来は不死なだけでも、相当なもんじゃぞ」
「バラバラにしたらどうにもならんでしょうに」
「いや、そりゃそうじゃが」
「あ、向うのコンチュエの女帝さんが、どうも、夜にうろついたり様子が変と言うのは、まさかのヴァンパイアですかね? 」
宰相が言った。
「あ、そんな話なんだ」
俺が答えた。
女帝の症状とか聞いてないから初めて聞いた。
「確かに、それ臭いな」
国王が納得したように頷いてる。
「とすると、軍事でトップクラスのコンチュエを操ろうとしたのかもしれませんね」
カザンザキスさんが心配そうな顔をした。
「とにかく、急ぐべきじゃな」
樹老人が答えた。
その時、薄暗闇の中、派手にライトをつけた豪奢な軍船が二十隻がこちらに向かってくるのが見えた。
「コンチュエの第一艦隊ですかね」
宰相が遠目で見ながら言った。
ぐはっと昔の事を思い出す。
うわぁ、またあれをやるのかよ。
横を見ると、クニヒト大佐やアオイやミヤビ王女とかすんごい顔してる。
「歓待旗を上げてますね。とりあえず、こちらのヤマトの旗艦艦隊の方もライトアップさせましょう」
宰相が遠目で金糸で紡がれた、鮮やかなコンチュエの国旗を見て言った。
「よし、こちらも歓待旗として国旗をはためかせろ」
ヤマトの金の日の丸の国旗がはためかされた。
コンチュエの第一艦隊を見て、前のような展開が起きないように心から祈る俺であった。