第十部 第三章 ファウロス再び
船の側面から甲板に向かって登ってきたものがいる。
甲板にスタッと凄い膂力で飛び乗ってきた。
エテルノに居れなくなったファウロスだった。
「あっ、ア〇ルオ〇ニーの人だ! 」
俺が思わず叫んだ。
「ち、ちょっと? 」
ミヤビ王女とミツキなどが頬を染める。
アポリトが騒ぎを聞きつけて船室から出てきて、溜息をついた。
「何をやってんだ。あいつは」
「「ア〇ルオ〇ニーだと! そこをくわしく! 」」
国王と宰相が興味津々だ。
「いや、魚の一杯いる桶にですね……」
「やかましい! やかましい! 喋るな! 」
ファウロスに怒鳴られて、俺の説明が中断した。
「貴様らに真祖様から授かった力を見せてやる」
ファウロスが口を開くと牙がある。
「お前、とうとう……」
アポリトが流石に複雑そうだ。
「しかし、良く、こんなの噛んだな。なかなかヴァンパイアとは言えきつくね? 」
俺がマストのヴァンパイアに言った。
「……そいつ、なんかあるの?」
ヴァンパイアが微妙な顔をしている。
「何にもないです! 」
ファロウスが遮って、叫んだ。
「貴様らに今から、この力で思い知らせてやる。特にお前だ」
ファウロスがびしっと俺を指差した。
と同時に俺がファロウスの顔面を蹴りくだく。
「ぶははっ」
ファウロスが変な声を出しながら海に落ちる。
「なあ、兄弟。どうする? 」
俺がアポリトに聞いた。
「もう人間で無いなら仕方ない……」
アポリトが少し悲しそうだ。
「なあなあ、バラバラにしても不死なんだろ? 」
俺がヴァンパイアに聞いた。
「ふはははは、その通りだとも、果たして、その不死の男に勝てるのかな? 」
ヴァンパイアが高笑いして俺達を見下ろした。
「き、貴様、絶対に許さん」
海から羽を出して、ファロウスが飛んで中空に現われた。
「構え! いけぇぇぇぇ! 」
俺が、即座に轟天を抜いて、中空に浮いてるファロウスにぶちこんだ。
ファウロスが爆発して文字通りコナゴナになる。
「ああああ」
ヴァンパイアが唖然としてる。
「こんだけ、バラバラになって海に落ちたら、海流でも流されるし、元に戻るの大変だね」
俺が破顔した。
「な、なんてことを……」
「不死だから、死んでないし良いじゃん」
「酷い」
クニヒト大佐が横で呆れ顔だ。
「ファロウス、何千年かかるかしらんけど、元の身体に戻れるように頑張って」
笑顔で俺が海に向かって手を振った。
「えげつな」
クニヒト大佐が横でドン引きしてる。
「まあ、仕方ないだろうな」
アポリトが呟いた。
「まあ、大好きな魚さんに食べられる部分もあるだろうし、これはこれで幸せなのかも」
ミツキが横でしんみりとしてる。
「なるほど、めでたしめでたしだな」
俺がそれを聞いてほほ笑んだ。
「いや、お前等おかしいって」
ヴァンパイアが突っ込んできた。
「結局、こうなるか」
樹老人が横で呆れたような顔をする。
ヴァンパイアの横を火箭が通ると遥か向こうで、大爆発が起こる。
「船の上じゃから、なかなか狙うのがむつかしいの」
横で龍女が言った。
「こ、こいつら、やば過ぎ」
ヴァンパイアが慌てて、大きなコウモリになると逃げだした。
すいません。仕事でバタバタしてます。