一の手記
第1の手紙 異世界のキミへ
私は、魔導師である。歳は98。もう随分と老い、この世界の最期を見届けられるか心配だ。私はほとんど動けない。だから、魔法でこれを書いている。真実をみたくば、照らせ。さもなくば、この手記は読めぬだろう。私はこの世界の最後の人間だ。他に人がなくなってから久しい。いまでは生命維持の魔法と3体のトークンでなんとか生活している。トークンとは、ホムンクルスとゴーレムの性質を併せ持った私のしもべ、私の生きた証拠だ。トークンというからには、証拠である。私の生きた証拠だけでなく、私の友、妻、子の生きた証拠なのだ。もう私も長くはないだろう。だからこそ、君に真実を読んでもらいたい。名も知らぬ「対の世界」の人間よ、この手記を読み、早いうちに備えてくれ。我が世界のような破滅を味わって欲しくはない。この破滅を食い止めようと、トークンのもととなった3人と私で頑張ったつもりだ。だが、すでに遅かった。もう世界を循環するマナも少なくなっていたから極魔法を使えず、満足に魔法軽量も使えず、徒労に終わった。理論の上ではこれでいけるはずであったのに。そなたも魔法が使えるならば、否、使えずとも魔法を使える者にこれを渡せば理解してくれる。「対の世界」で魔法が使えん道理はないはずだ。現に、この手記に施した光透過魔法が効力を発揮してこの手記が読めるようになっているはずだからだ。「対の世界」がこの破滅から逃れれば、私の世界も復興するやもしれぬ。私の研究でたどりついた「対の世界」との間の歪みを通して、この場所と同じ座標にこの手記を送る。光透過魔法を解いて、これから言う破滅を止めてくれ。
魔導三賢者二位 ヨハン=ルミノウス