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世界が終わる前に

作者: 橙色

自分が書いている恋愛小説の登場人物が語りたいと語りかけてきたので……意味わからん。




人は何故生きるのだろう。

金持ちになったって、大統領になったって、子供ができたって、いつかは必ず死んでしまうのに。


人は何故死ぬのだろう。

この地球という閉じた世界に生命体が生まれ、紆余曲折を経て僕ら人類も誕生した。

それなのに、気が遠くなるほどの時が経ち、ようやく生まれ落ちたというのに、与えられたものは100年に届くかどうかというちっぽけな時間だけである。


いつか終わるということは誰もが知っている。

問題なのは、なぜそのように設計したか、それに尽きる。意外と誰も知らないだろう。もしかしたら、気付いているのはこの世界で僕1人なのかもしれない。

僕は積年の疑問に、つい最近答えを出したのだ。


何故生きるか?

理由なんてただ一つ。生まれたからさ。命ある者として存在する以上、それは義務だ。従う必要もないけどね。

ともかく生まれてしまったものは仕方ないよ。死なないように頑張れ。いつかは死ぬけれど。


何故死ぬか?

そういう風に作ったからさ。顔も知らない誰かさんが、なんとも微妙なさじ加減で、片手間に、あるいはいい加減に、ね。ちなみにその誰かさんは、なぜか人の形をしているとかいないとか、専らの噂だよ。


では、何故そのような設計にしたのか。


それはね……「痛っ!!」





「何回も名前呼んだんですけど? あんた何ぼーっとしてんの?」


「……君のことを考えてたんだよ。嘘じゃない」


「本当に恋人のことを考えてた男は、そんな言い訳がましく言ったりしないのよ」


「それは偏見だろう。まだ君は登場していなかったけど、もう少しだったんだ。本当だよ」


「はぁ……まぁいいけどさ。せっかく2人で過ごしてるんだから、もう少し私のことを見てくれてもいいんじゃないかな」


「僕はいつだって君から目を離すことができないよ。今だってほら、君を見てると瞼が仕事をしてくれないんだ」


「……つまり?」


「瞬きができないってこと」


「いい加減にしろ」


「すいませんでした」





我が恋人様はご立腹な様子である。

ただ僕の自称哲学的考察(世間一般的には妄想と呼ぶらしいよ)の中で、もう少しで彼女が登場するというのは本当なのだ。


人は、生まれ、生き、そして死ぬけれど。

そういう風に設計した誰かさんにはお礼を言いたい。きっと人情味溢れる方だったのだろう。ともすれば、断腸の思いだったのかもしれない。全ては愛だ。


終焉などというものは、命に設けたくなかったのだ。だが、僕らを愛するが故に、彼らはそうした。


僕は、この世界で僕だけはその思いを汲もう。




「ねぇ」


「……なに」




彼女の生は、いつか終わる。

もちろん、僕も。


だからこそ僕は彼女を大切に想うのだ。


『その時』はいずれ来てしまうから。

死が2人を別つから。


せめて『その時』までは、と。





「口にクリーム付いてるよ」


「えっ、嘘」


「リップクリーム」


「……っ!こんの……!」





もし命に終わりが無かったらきっと、ぬるま湯に浸かり続けるだけの関係になると思うのだ。永遠に、それこそ飽きるまで。


僕が彼女をこんなにも愛おしく思うのは、いずれ彼女を失うことを知っていて、それでもなお失いたくないと、失うものかと抗い続けているからに他ならない。





「ねぇ」


「今度は何よ!」





まぁ結論としてはただ一つ。

この世は愛でできているってこと。


このお話だって例外じゃないんだ。


知ってた?

実はこれ、最初から最後まで……





「好きだよ」


「……知ってる。そんなこと」





恋愛小説だったんだよ。















批判 何でも 受け付ける です。




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