カフェのお姉さんと魔法
朝の登校時間帯。
女子高生が群れ、改札が混雑することで知られる、私鉄の駅。
女子校に通う流れの中に、私は歩いていた。
「寛子」
菜穂美に肩をポンと叩かれた。
「ねえ、あのレポートやった?」
「やったよ」
「すごい難しくなかった?」
いつものような会話。
「学校の近くに、行ってみたいお勧めのカフェがあるんだけど、行ってみない?」
と、菜穂美は私を誘った。
「じゃ、放課後ね」
私たちは約束し、学校に向かった。
放課後、私たちは、濃い青に白い線が入ったスカートと、白いブラウスの上にクリーム色のセーター、の制服のまま、菜穂美の言っていたカフェに向かった。
少し隠れ家的な店だった。
カウンターに座った私たちは、店主のお姉さんと、いろいろ話をした。
学校の部活で二人とも別の部活の部長をしていること。
お姉さんが、以前、魔法を見て回るために、フランスでカフェ巡りをしたこと。
そう、お姉さんは、魔法を使えるのだ。
「私たちにも、魔法、使えますかね?」
そう私はお姉さんに訊いた。
「使えますよ。教えてあげよっか」
お姉さんは敬語とタメ語を混ぜて、私たちに話してくれる。
こうして、私たちは、お姉さんに、魔法を教わった。
それは、私たちが、制服のままでも、可愛く見える魔法。
自分自身にはかけられない、女の子同士でしか、かけ合えない魔法。
私たちは強くハグして、魔法をかけ合った。
二人の制服が、ふんわりふんわりと、揺れたのがわかった。