蒼雷の魔神
視界の先にはフロアの上から降りてくる黄色に黒のラインが入った龍
忘れるはずもない、初めてのボス
あの時は一撃もダメージを与えてない、それが今や一人で倒さなければならない
HPゲージは紫、きっとユリたちが減らしたのだろう
だが、なぜ負けたのだろう
[ボスバトル開始]
名前が表示される
「雷龍…………デルヘルド!?」
名前が違う、ボルテール…ではないのか
同時にレベルが表示される、そして驚いたのはこちらだ
『名前 デルヘルド
Lv.70』
これにはさすがに驚いた…
「へへ…そりゃ…ないぜ」
自分の2倍というLv.を持った雷龍にさすがに変な汗が出る
「『飛雷』」
考えている暇はない、こうなったら、やるしかない
瞬時にデルヘルドの尻尾の方へ回る、カイトの十八番、飛雷による背後からの攻撃だ
「グァアアアア!!」
強烈な叫び声と共にデルヘルドの周りにたくさんの雷が落ちる
「くっ、危ない!!」
危うく距離をとり回避する
ヒュン!!
視界が衝撃で歪む
デルヘルドによる尻尾での攻撃
危険を察知して全力で後ろに飛んだことでダメージを軽減するが
「なんだと……今ので6割も持ってくのかよ…」
残りHPゲージは40%といったところ
「まだ…まだ!!」
負けじと突撃する
「『蒼雷斬り』!!」
蒼雷と化した斬撃がデルヘルドに直撃する
「……は?」
間の抜けた声、それもそのはず
静かに立ちそびえるデルヘルドのHPは紫ゲージの半分が減ったところ
しかしまだ、黄色、緑色が待ち構えるこの状況、詰んだとはこのことである
「うぉおおおおお!!」
腹のそこから、体中の力を振り絞るためにあげた方向、飛雷の持続もあまり長くない、というかいつ切れてもおかしくない
しかし、それでもまだ、諦めるわけにはいかないのだ
ユリを…守る
「くらええええ!!」
カイトの斬撃をあざ笑うかのようなデルヘルドのブレス
雷のそのブレスをギリギリでかわす
しかし気付いていなかった、自身のHPが1割を切っていたことに
「はぁ………はぁ」
敵の目の前、しかも顔の前で消える飛雷
そして自分の生命の危機に気づく
勝てない……そう思うと浮かぶのは死という文字
(ユリ…ごめん)
デルヘルドの腕が上がる
そしてそれが振り下ろされようとしたその時であった
《新スキル『魔神』を獲得しました》
ガキンッ!!
攻撃を受け止めたのはライトニング・スラッシャー
「殺す…」
攻撃を受け止めたカイト、その姿は青と黒の服に目は黒色から青色に変わり、何か魔法陣のようなものが見える
突如、デルヘルドの下にいたはずのカイトは消える
「『飛雷』『蒼雷斬り』」
技の連続使用、それも死角からの攻撃、デルヘルドが反応できない
HPゲージは黄色に突入
デルヘルドも負けじと雷をそこらへんいったいにおとす
しかしそれを
「遅い」
避ける、避ける、また避ける
カイトは雷が当たる瞬間に高速移動をして雷をかわしていく
そして再びデルヘルドの顔の前へ
「回転……」
デルヘルドがカイトに強烈なブレス
直撃かに見えたその攻撃だが、またそこにカイトの姿はない
「『回転斬り』」
再び背後からの斬撃、そこからカイトの嵐のような斬撃
右、上、左、右、下、下
四方八方からの攻撃はデルヘルドのHPゲージを最後の緑色に染める
しかしそこで手を休めない
「『蒼雷斬り』『回転斬り』」
技の連続使用、そしてこれが、新たな力を切り開く
「新技、『雷宙斬り』」
雷を纏いながら竜巻のような斬撃をデルヘルドに
HPゲージが1割を切るデルヘルド、そこには既に青き光を放つ剣の姿が
「『蒼雷斬り』」
これがある時実装され、アップデートの歳に廃止されたはずのスキル『魔神』であった
「あれ?俺…生きてる」
呆然と立ち尽くすカイトの視線の先にはWINの文字が掲げられていた