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 パラダイスシティーは上空から見ると六角形の型をしている四階建ての建物だ。それぞれ六角の辺ごとに「飲食・商業・催事」などのブースがある。

 施設の中心部分は、くり貫いたように吹き抜けになっていて、青空を眺める事が出来るイベントホールとして一般に貸し出してもいる。


 ここで重要な事は入口の場所と数……利用客の出入口は施設の北と南の2ヶ所である事だ。


 俺達の位置から、1番近い出入口は南口ゲート。


 反対側にある北口ゲートも南口と同じように物を積み上げたバリケードで封鎖されている事だろう。

 納品業者のトラック等が出入りする納品口もココから見えるが利用は出来なそうだ。

 何故なら入口がシャッターで開閉するタイプの為……シャッターの巻き上げの作動音でゾンビ達が集まってきてしまう危険性がある。


 施設に立て籠った生存者達にとって幸運だったのが、1階の外壁にゾンビ達に突破される恐れがある「ガラス張り」の部分がない事だ。

 上階部分には外を見渡せるほどの大きな窓が、幾つか設置されてはいるが……


 「……よーやく(みはり)との「打ち合わせ」がすんだぜ。施設の中に入れてやる絶対条件として武装解除の証拠を見せろ、とさ」


 「……武装解除? まだ中にいる人間達が敵か味方か分からないのに丸腰で行くつもりなのか?」


 施設側(あちら)の人間からすると、武器を所持した外部の人間を入れたくはないのは当然だが……騙し討ちを仕掛けてくる可能性もある。

 丸腰で施設に入った途端に武装民に囲まれ「追い剥ぎ」に遭いました、では話にならない。

 

 ……だが、相沢には策があると言う。


 「今、俺達はパラベラム部隊から拝借した会社(ライオットカンパニー)の戦闘服を着ているだろ。傍から見たら軍属の兵士が2人いるとしか思えねぇ……こいつを上手い事利用するんだ」


 相沢は、俺達が米軍兵士であり生存者を救助する為に施設内の状況を見させて欲しい、と言う嘘をモールス信号で相手に伝えたそうだ。

 

 見張りから提案された施設への侵入方法は3階にある「非常用進入口」の窓からロープによる引き上げ……つまり火災が起きた際に消防隊が「はしご車」などで施設に進入する出入口を使用する、との事だ。


 まずは先端に買い物用のバスケットを結わえたロープを降ろすらしい。

 

 俺達の所持している武器をそのバスケットに入れて引き上げた後、引き上げ用のロープを降ろすとの事だが……大量のゾンビ達がいる最中に、そんな悠長な事をやってられるのだろうか? 

 

 俺は「その事」を相沢に問いた。


 「ゾンビ達を陽動するアイテムを持っているから安心しろだとよ。とはいえ、安心は出来ねぇ……護衛用のナイフの所持は許可してもらったがな」


 陽動か……あまりアテに出来なそうだが。


 「ま……コッチも言われたままにハイそうですか、じゃ相手の思うつぼだからな。ある程度の細工はさせてもらうつもりだ」


 相沢は突撃銃(アサルトライフル)弾倉(マガジン)の弾を空にして相手に渡すらしい。

 【WSAR-8】は一般市場には出回ってない銃の為、弾倉交換のやり方を知っている人間は少ない。

 そして安全装置(セーフティロック)を解除する方法も。

 仮に渡した突撃銃(アサルトライフル)で「騙し討ち」をしようとしても、安全装置を解除出来ず……弾が入っていなければ脅威ではない、と言う事だ。


 勿論、それ以外の武器を所持していると仮定して俺達は背中に拳銃を隠し持って行くつもりだ。


 そして陽動に無反応な少数のゾンビ達を処理するにはダマスカスナイフを使用すればいい。

 この雑居ビルに侵入した際に何体かのゾンビで「試し切り」をしたが、豆腐を切るような感覚で人間の首を切断する事が出来る。(俺が所持しているのはコーツから奪いとった)


 

 準備が整った旨を施設側に伝えると、俺達は素早く行動を開始した。



 必要最低限の装備を持ち、施設へ駆け足で向かう。


 

 すると施設の方から「爆竹」のような音が鳴り響いた……どうやら施設側が用意した陽動用のアイテムとは大量の爆竹のようだ。

 恐らく屋上から反対側の北口ゲートの方に投げ入れられたのだろう。


 ゾンビ達が音に釣られて南口のゲートから遠ざかっていく……


 そして3階の「非常用進入口」からバスケット付きのロープが降りてきた。

 

 「まったくアイツらはいいよなっ!肉体労働無しだからよ。こっちは忙しいったらありゃしねーぜ」


 相沢が愚痴を吐きたくなるのも理解出来る。  


 音に「無頓着なゾンビ達」が少数だが存在する以上、ゾンビとの交戦は避けられない。

 【包む者】がいないだけマシではあるが…… 


 お互いに10体以上処理したところで、何とかロープの場所までたどり着いた。

 バスケットの中に持っていた突撃銃(アサルトライフル)を入れると、相沢はライトで施設側に合図を送った。


 さて……ここからが踏ん張りどころだ。


 相変わらず爆竹の音は遠くで鳴り響いているが、周りにいたゾンビ達は俺達を視認して近づいてきている。

 隠し持っている銃は使えないとなると、ナイフで対応するしかない。

 2……30体はいるだろうか? 施設の壁を背にした俺達を囲むようにゾンビ達は徐々に包囲網を狭めてきている。


 「オイオイ……さっさと引き上げ用のロープを出してこいってんだよっ! クソでも漏らしたのか?」


 「……たしかに。妙に遅すぎるような…………っ!?」


 

 突然、3階の窓から物が落ちてきた。


 落ちてきたのは、先ほど俺達がバスケットに入れた2丁の突撃銃(アサルトライフル)…………引き上げた物が落ちてきた事にも驚かされたが、さらに驚愕したのは弾倉(マガジン)が抜かれていた事だった。


 その空の弾倉も後から落ちてきた。


 「ななな……なんですとぉ~~!」


 驚きの声をあげる相沢を「嘲笑う」かのように、「点火」した陽動用の爆竹が俺達の周りに落ちてきた。


 3階の窓を見上げた俺は施設側の人間と思われる手が「バイバイ」と手を振っているのが見えた。



 ……どうやら俺達の「悪巧み」は相手に見透かされていたようだ。


 爆竹の音に反応した大量のゾンビ達が次々と俺達に向かって集まってきた。


 俺達は絶体絶命の状況となってしまった……



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