胎動
迫り来る2体の兵士の頭部付近に銃弾を撃ちこんだ……兵士達は重厚な戦闘服を着ている為、身体に命中させたとしても足止めにもならないからだ。
「…………っ!? ヘルメットのバイザーも防弾仕様なのか?」
「あちゃー、コイツらの装備がパチモンだったらブチ抜けたんだがな。マジに会社の製品だったのかよ」
銃弾を受け止めたバイザーはキズ1つ付いていない……衝撃によって多少の怯みはしたが、ゾンビ達は何事も無かったように向かってきた。
フル装備のゾンビがこれほど厄介だとは……まずい、どうする?
そんなネガティブな考えが脳裏をよぎった時、全身に暴力的な力が「胎動」するのを感じた。
俺の中のゼロが急激に活動し始めたようだ……変異体を殺った時のように激しい憎しみの感情を湧き上がらせながら。
どうやらZEは他のゼロウィルスに本体が殺られるのだけは我慢出来ないらしい。人間に銃を向けられた時や檻に拘束された時には無反応だったのだが……
人間同士の争いには興味がないのか……?それとも武人のように人間とは対等に戦え、と言っているのだろうか。
いずれにしても、マリアの言った通りにゼロの力を使い続ければ力に呑まれてしまう危険性がある。
ゼロを制するように俺は高ぶる感情を抑え込んだ。
「……特等席で見ていろ。俺は呑まれたりはしないっ!」
ゾンビ達に向かって俺は全力で走りだした。
目標は胸部付近、体重を乗せた飛び蹴りを打ち込んで転倒させるのが目的だ。
重量のありそうな戦闘服を着こんだ兵士を蹴りで倒せるかどうかは賭けだったが、狙い通りに転倒させる事が出来た。
すぐさま転倒させたゾンビ兵士のバイザーを蹴り飛ばし、至近距離から顔面に銃弾を撃ち込んだ。
「まったく無茶しやがんなぁ~。でもまぁ、それしかねぇっか。俺もやろ~っとっ♪」
相沢も同様にゾンビを転倒させ、トドメを刺す……建築資材の上から、じっくりと俺達を眺めていたコーツが俺達に拍手を送った。
「ククク……bravo!素人にしちゃ中々いい判断力と行動力じゃねぇか。アイザワよ……いい素材を見つけたなぁ~。そのガキを「解体」するのが楽しみになってきたぜェ~」
一体どういうつもりなのか?……てっきりゾンビ達を処理している間に背後から襲いかかってくると思っていたが……ただ眺めているだけとはな。
「とんだ主催者だぜっ!パーティーの余興を客に任せっきりとはなぁっ!」
短機関銃【MP5】の銃口を奴に向けて相沢が銃を乱射した。
「Oupsっ!!そう焦るなよアイザワ……パーティーは、まだ始まったばかりだぜ?ククク……とりあえず安全な所から「観」させてもらうとするか」
相沢が放った銃弾を常人とは思えぬ跳躍力で避けたコーツは、暗闇の中に逃げ込んでいった。
「あのジャンプ力……本当に奴は人間なのか?」
「いや……改造してるのは右目だけだろ。今の技術じゃ「アンヨ」まで機械化するのは無理があるぜ。どうも見慣れない戦闘服を着ているとは思ってたが……」
あれはGアーマーではないか?と相沢は言った。
それは一種のパワードスーツであり、両手両足部分に装着された小型のモーターアシストにより常人では考えられない動きを実現する最新型の戦闘服。
何より驚かされたのが、それを開発したのが日本だと言うことだ。
「だいぶ前から日本は本格的に軍需産業に着手していてな……公にしちまうと各国の軍事企業から非難されちまうから、表向きは米国が作った事にしてんのよ」
技術力をもった日本が商売敵になるのを嫌がる軍事企業は腐るほどいる……嫌な言い方ではあるが「モノ作りの日本」が本気で兵器開発をすれば高品質な兵器を作り出せるからだ。
Gアーマーも「表向き」には障害者や高齢者用の「生活用補助器具」として開発していたらしい。
「最近、試作機が出来上がったとは聞いていたが、まさか野郎が手にしていたとは考えもしなかったぜ」
「……勝算は無くなったと?」
相沢は高笑いをして俺の問いに答えた。
「ハハハっ!この史上最強の相沢君が負けるワケがねぇよ。何しろ着ている奴がポンコツ君だからな♪」
相沢は兵士が所持していたアサルトライフル【WSAR-8】を取り上げ、俺に手渡してきた。
「ほらよっ!コイツの口径ならバイザーごと撃ち抜けるぜ?チャチャっと余興は片付けてパーチーの主催者に会いにいかねぇとな♪」
「そうだな……主賓として挨拶に行くとするか」
俺達は武器をアサルトライフルに持ち替えてゾンビ達を迎え撃った。
ちょっと体調を崩してます。
やんわりと投稿は続けたいと思いますので、生暖かい目で見守ってやって下さい




