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闇に潜む者


 ……連行先、それは見晴らしの良い山の斜面に作られた建設現場だった。


 この場所は知っている……町の税金を使い、使途不明な大型公共施設を強引に建設しようとして「住民の反対運動」が起こった場所だ。

 当時、大手マスコミも駆けつけるほどの大騒ぎになり、事業計画自体が「頓挫(とんざ)」したと聞いている。


 なるほど……考えてみれば軍事拠点として利用するには最適な場所ではある。


 建設現場には「仮囲い」と呼ばれる鉄製の壁が、敷地内の周囲に建てられている。

 現場内に置いてある鉄骨などの資材を使えば「防壁」の更なる補強も可能だろう。

 作業員が使用していたプレハブや発電機も使用できる事を考えれば、最小限の労力と資材で拠点を設営できる。


 ……装甲車から降ろされた俺は、相沢からボディチェックを受けた。


 「バタフライナイフか……危険なモンは預からせてもらうぜ」


 「……大事に扱ってくれ。いずれ「持ち主」に返す代物(モノ)だからな」


 相沢はスラックスのベルトの裏側に仕込ませていた俺のナイフを奪い取り、意気揚々と兵士達を引き連れてプレハブ小屋へと向かって行った。


 そして俺は突撃銃(アサルトライフル)の銃口を背中に突き付けられながら、シャークゲージに似た鉄格子の檻に入れられた。


 「吹きっさらしの屋外に放置か……猛獣より酷い扱いだな。そんなに俺が怖いのか?」


 檻の中で座り込みながら、見張りの兵士に問いかけた。

 

 「……実験動物(モルモット)風情が。生きていられるだけでも感謝しろ……化け物め」


 兵士はヘルメットのバイザーを上げると、汚物を見るかのように俺を睨みつけ、地面に唾を吐いた。


 ……どうやら俺を「人間」として扱う気は無さそうだ。


 空を見上げると夕暮れが近い事が分かった。


 現状、出来る事といえば体力を回復させる為に寝るぐらいしか出来ない……俺は檻の中で寝そべり(まぶた)を閉じた。


 


  …………………………っ!



 ふと(まぶた)に強い光を感じ、俺は上半身を起こした。


 すっかり辺りは真っ暗闇になっていた……だが、俺が収監されている檻だけは、建設用のLED照明が眩しく照らされていた。

 

 先程、俺に悪態をついた兵士は首から血を流して檻の側で死んでいた……この静寂な暗闇の中、寝ていた俺を起こさず、対象(ターゲット)の悲鳴すら上げさせずに暗殺(サイレントキル)する事が出来る人物。


 そんな奴は1人しかいない……


 周りに人の気配は感じられないが、俺は確信をもって呟いた。


 「……どうにもLEDの光は慣れない。アンタはどうなんだ?……相沢」

 

 「……ヨっ♪お待たせっ!ちょっぴり寂しかった?」


 相沢は俺を裏切ってはいない……いや、銃口を額に突き付けられた時は、裏切られたと本気で思ったが。


 あの時、相沢は自分の事を「兵士」と言った。その時……道中、口癖のように自信満々に自分語りをしていたのを思い出した。

 

【俺が目指すのは史上最高の戦士であり、史上最低の兵士だ】と……


 そして、知っていたはずなのに服の背中に隠していた拳銃をボディチェックの際に取り上げなかった……コレが決め手ではあるが。 


 「……他の兵士達はどうしたんだ?」


 「あぁ、アイツらか?寝相が悪いから俺が寝かしつけといたぜ。もっとも2度と目は覚めねぇと思うがな」


 どうやら相沢の能力「狩りの領域」で全員始末したようだ……無音高速移動術、暗闇の中や閉場であれば対象(ターゲット)は自分が「始末」された事すら気付かないだろう。


 とはいえ、相沢が()ったとなるとライオットカンパニーの人間ではないはず……この兵士達は、一体何者なのだろうか?


 俺は相沢に問いただした。


 「コイツらがマリア達を襲った部隊、米軍特殊部隊パラベラムと特殊戦略部隊ミストの混成部隊だ。姿(ナリ)はウチのモンっぽいけどな。ま……色々とツメがアメーぜ」


 相沢は最初から偽物だと感づいていたらしい……


 まず、相沢の事をコードネームで呼ばず嫌悪している「階級」で呼んだこと……この事は会社(ライオットカンパニー)で働いている者は、誰もが知っている暗黙の了解らしい。

 

 そして所持していた銃……兵士達(コイツら)が持っているのは【WSAR-8】と言う米軍の次期主力銃で、まだ流通していないものと言う事だ。


 「……芝居をしたと言うわけか。あやうく俺も騙されるとこだったが」


 「ムフフ……敵を騙すには、まず味方からって言うだろ?ま~お前さんなら、すぐ気付くとは思ってたがな」


 檻と手錠から解放され、辺りを見回した俺は暗闇に蠢く影にきづいた。


 「…………っ!?」


 俺が叫ぶ間もなく建設現場内の照明が次々と点き始めた。


 「バカなっ!全員殺()ったはずだ……いや、この感じ……まさかっ!?」


 

 「…………久しぶりだなぁ~日本人野郎(ジャップ)。会いたかったぜぇ~」


 1人の外国人男性が積み上げられた資材の上から俺達を見下ろしていた。

 


 

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