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捕縛


 補給物資の投下予定ポイントにたどり着いた俺達だったが、予定時刻を過ぎても物資を積んだヘリが来る気配は無かった。


 「……相沢。この場所で本当に間違いないのか?」


 投下地点の安全を確保する為にゾンビ達の処理をしていたが、むやみに発砲出来ない以上、所持しているナイフや拾った鈍器で俺達は戦わざるを得なかった。

 とてもじゃないが……これでは体力(スタミナ)が持ちそうにもない。


 ……街の郊外とはいえ、少数のゾンビ達が常に徘徊しているからだ。

 

 例の変異体(カバー)【マリアが名付けた】が現れていない事が唯一の救いか……


 「まぁ、色々と忙しいんじゃないの?予定は、あくまで予定だって事だ。さすがに来ないって事はないと思うぜ……たぶん」


 自信がなくなってきたのか、いつもの相沢の軽口も気持ち少なくなってきた。


 「……まさか、このまま日が暮れるまで永遠とゾンビ達と戦う気じゃないだろうな?……相沢」

 

 「……マジでそうなったら俺は転職を考えるぜ」


 愚痴を垂れ流していた俺達に向かって1台の大型車両が向かってきた。

 

 戦車?……いや、あれは装甲車か……?

 

 車両前面に特殊な装甲が装着された装甲車は、路上に停車していた一般車両を、まるで氷を砕いて進む砕氷船のように弾き飛ばしながら進んでいた。



 「何だぁっ?アレはウチの「社用車」じゃねーか。オイオイ……ヘリはどうしたんだよ?話がちげーじゃねーか」

 

 目の前に止まった装甲車から重装備の兵士達が降りてきた。

 手には見たことも無い突撃銃(アサルトライフル)を持ち、厳つい黒色のフルボディアーマーを装着した姿は、SF映画に出てくる未来兵士の印象を俺に与えた。

 

 兵士達は皆ヘルメットに付属している黒色バイザーを降ろしている為、どんな人相なのかは分からない。


 「お待たせして申し訳ありません大尉っ!我々はライオットカンパニー日本支部の者です。本部から大尉の活動を補佐するよう命じられました。つきましては……」


 1人の兵士が懐から取り出した携帯端末を相沢に見せた。


 「親父(ライアン)からか……なるほど。これは間違いないようだな」


 端末を見た相沢の表情が険しくなっていく……一体、何を見たのだろうか?


 「ゼロストーム作戦は直ちに終了し、マリア女史を回収後に即座に日本を発ちます。そして、そこの青年「葛城相馬」を拘束し、楽園(エデン)に向かうように、との命令です」


 ……これは何かの間違いじゃないのか?


 「……相沢。無線でマリアに話をさせてくれ。こんな事は聞いてな……っ!?」


 相沢は手に持ったMP5の銃口を俺に向けた。


 「すまねぇな……相馬。残念だが命令は変更された。お前を連れて行かなくちゃならねぇ……ワリィな」


 相沢と重装備の兵士達を相手に、まともに戦って勝てるハズが無い事は分かっている。

 しかし、抗う事もせずに拘束される気もない……


 俺は気付かれないように、ゆっくりと左手を拳銃を隠していた背中の方へ動かした。

 だが……行動を察した相沢は、素早く俺の額に銃口を押し付けた。


 「妙な真似はよせ……相馬、お前は良い奴だ。俺の手で引き金を引かせるな」


 相沢の殺意は本物だ……本気という事か。


 「……相沢。裏切るつもりか?」


 「裏切る……?バカ言っちゃいけねぇ。俺は傭兵であると同時に兵士だ。兵士は上の命令で動く……そこに感情を持ち込むわけがねぇ。俺のような一流なら尚更だ」


 ……兵士? 


 これは、まさかとは思うが……


 いや、今はこれに賭けるしかない……か。



 「……分かった。俺の敗けだ……好きにしろ」



 俺は両膝を地面につけ、両手を上げて降伏した。


 後方で銃を構えて待機していた兵士の1人が、俺に手錠をかけて拘束する。

 


 一体、何処に連れて行くつもりなのか……?



 行き先を告げずに全員を乗せた装甲車は再び走りだした。


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