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包む者【下】


 「……へッ!だらしなくブクブク膨れやがって、このフーセン野郎がっ!今すぐ風穴を開けてやるぜっ!」


 相沢の合図と共に変異体(スライム)に対して、容赦ない一斉射撃を行った。


 辺りに硝煙が舞い、銃声が鳴り響く……全ての銃撃を受け止めた変異体は、多少の怯みはしたものの、歩みを止めなかった。


 「相沢……奴の体を見ろ。銃弾が身体(ミイラ)に届いていない。覆っている変異体(スライム)の表面で止まっているぞ」


 変異体は液体のように見えるが表層は「高質化」しているのだろうか……?

 撃ち込んだ銃弾は、変異体(スライム)の表面からパラパラと地面に落ちていった。


 「オイオイ……1マガぶちこんだんだぜ?コイツ、銃が効かねぇのかよっ!?……だったらコレならどうよっ!」


 相沢は胸に装着していたホルスターから「手投げナイフ」を取り出して投げつけた。


 しかし……ナイフは数センチほど突き刺さったものの、先程の銃弾のように表面で止まり、虚しく地面へと転がり落ちた。


 「銃弾も駄目……刺突も効かない。ならば……っ!!」


 俺はバラバラになったアンティーク机の足を拾い、危険を承知で変異体の正面に踊り出て、おもいっきり殴りつけた。

 

 妙な手応え……まるで自動車のタイヤを殴りつけたような感覚を覚えた。

 

 持っていた机の足は手元で折れ、変異体は両手を振り回して俺を弾き飛ばした。

 かろうじて防御が間に合ったが、凄まじい力で殴られた俺は、後方の壁へとふっ飛ばされた。


 「相馬っ!大丈夫かっ!?」


 「あぁ……何とかな。咄嗟に防御(ガード)した左腕がイカれちまったが……それなりの収穫はあった」


 まず、液体に見える変異体(コイツ)の表面は硬質ゴムのような物である事……表層が固く液体の部分で外部からの衝撃を吸収している。

 そして……初老の男性のように俺達を取り込む気は無いようだ。

 

 吸収する気があるのならば、接近戦を挑んだ俺を弾き飛ばす必要が無い……そのまま俺を喰えばいいだけだからな。


 そして重要な事が1つ分かった……


 コイツは俺だけを狙っている。


 近くにいる相沢には目もくれず、離れている俺の方へと歩み寄ってくる。 


 「……怨恨か。吸収した人間の記憶や感情も引き継いでいるとでも言うのか?」


 俺は感染者となった男性の妻を殺した……その直後、娘が変異し妻と同化した。

 そして、初老の男性を生きたまま取り込んだ……娘の記憶が次々と受け継がれているのであれば「夫と娘の憎しみ」は俺に向けられても不思議ではない。


 【…………キライ…………キライ…………】


 先程から直接、頭に流れ込んでくるメッセージのような呟き。

 どうやら、相沢には聞こえてないようだ……

 

 「とんだデタラメ野郎だぜ……銃もナイフを効かねぇなら勝ち目はねぇ。さっさとトンズラしよーぜ」


 「いや……奴は俺が()る。離れていてくれ……」


 変異体(アイツ)が俺に憎しみを抱いているように、俺も奴に対して激しい憎しみを持ち始めていた。


 いや……正確には俺の中にいるゼロが奴の存在を許さない、と言っている。


 身体中の血液が沸騰するかのように暴力的な力が溢れてくる……両手の爪の間から血が大量に流れ出し、視界が赤く染まり始めた。


 「お……おいっ!相馬……お前、目から血が……」


 「殺す……奴を……この世から消してやる」


 俺は、激しい憎しみと怒りに支配されながら変異体の前に立った。

 

 俺を叩き潰そうと膨れあがった腕を振り下ろすが、なんなく受け止めて変異体(スライム)ごと腕を握り潰した。


 ボタボタと地面にスライムの部位が流れ落ちていく……腕を潰した際に「俺の血」が混入したようだ。

 ZE(ゼロイーター)ウィルスは、瞬く間に千切れ落ちた腕を蒸発させた。


 蒸発した自分の腕を見て、あろうことか変異体が怯え始めた……



 【お前のような「不完全体」を見るのは非常に不愉快だ!……消え失せろっ!】



 何だ……これは俺の意志でしゃべったのではない。

 

 これは……ゼロの意志……?


 俺が考える間を与えず、体が勝手に動いた……空手の「貫手(ぬきて)」を模した右手は変異体(スライム)を貫き、本体(ミイラ)の腹部を刺した。


 そして、背骨の一部を掴むと無慈悲に砕き割った。


 人間の構造上、背骨を砕かれたら立つことは出来ない……変異体は折れ曲がるように地面に伏した。


 ZEウィルスを注入された変異体は煙を立てながら消え去っていく……操られていた男性の遺体(ミイラ)も服を残して灰となった。


 「ヒョエ~……なんとまぁ、グロテスクなこと。人が溶けていったぜ。つーか…お前、本当に相馬だよな?」


 「あぁ……医者(リッパー)と時とは違い、かろうじて意識は保てた。今回もゼロに助けられた、と言うべきかどうかは分からんが……」


 視界は元に戻り、両手の爪からは血が止まった……どうやら俺の中にいるゼロは、支配を望んでいないらしい。


 俺は考える……あの時は死に直面してゼロが暴走した。


 だが、今回は「ゼロの意志」で戦った。


 変異体を進化と捉えるのであれば、俺の体の中にいるゼロも進化しているのではないか……?


 そして進化を終えた時、俺は人ならざる別の生命体になってしまうのだろうか……?


 

 

 ファントムミサイルの刻限は近づいている……弟を探す戦いは、まだ終わりそうにない。

 

 

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