死の予感
あの家からの惨劇から3日目
俺は耐え難い頭痛と吐き気、全身を襲う怠惰感に蝕まれていた。
何かに掴まっていなければ、まともに歩く事は出来ず、なんとか歩いたとしても胃液が逆流して四つん這いになり、ヘドを吐いてしまう。
運よく感染者がいない家に侵入した俺は、床に仰向けになって倒れ込み、朦朧とした意識で天井を見ていた。
「…奴等の仲間入りは…時間の問題ってやつか」
そう…俺は「感染」してしまったのだ。
あの家を出た直後に…
それは祐也や美佳を失った事による虚無感からなのか…
どこか上の空だった俺は「覚悟」が出来ていないまま、食料を求めて家へと侵入した。
集中力を欠いていた俺は、普段なら聞こえていたはずの感染者の足音に気付かず、背後から襲われてしまったのだ。
その結果、感染者を払いのけようとした時に腕を噛まれてしまった。
その感染者を始末し、急いで救急キットで止血等の措置をとったが、その時ウィルスはすでに全身にまわっていたようだ。
その日の夜に激しい頭痛と嘔吐を繰り返し、俺はウィルスに感染している事を実感した。
「昔やったゲームの中では…徐々にゾンビになっていく感染者の日記なんてものがあったな…俺もそうなっちまうのか」
ゲームでは徐々に常軌を逸していく姿を記した日記の内容だったが、俺は意識こそ混濁しているものの「人を食いたい」と言う欲求はない。
…ただ自分の肉体が破壊されていく感覚は感じていた。
薄れゆく意識の中、家の扉が開く音がした。
体を起こそうとしたが、もはや俺にはそんな気力も失せていた。
「…クソ…好きにしやが…れ」
精一杯の悪態をついて俺は意識を失った。
最終回ではありません
つなぎの話しになるので、やたら短いですが