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誓い


俺は、高校時代に「アウトサイダー」と呼ばれた暴走族……いわば愚連隊を率いていた。


喧嘩で負けた事は1度もなく……族同士の「抗争」であっても敗北を知らなかった。

単純な「力」による闘争においては、自分は誰よりも「強い」と自惚れていた時期もあった。


この異常事態の最中であっても、冷静さを失わずにいられたのは、俺には「力」があると自負していたからだ。


だが、俺が過信していた「力」とは……たった1人の友ですら守る事が出来ない「価値の無い」ものだった。


「俺は……お前を助ける事が出来なかった。許してくれ……武志」


武志と母親の遺体を居間に運び、亡骸に向かって俺は呟いた。


遺体を埋葬する手段が無い以上、俺が出来る弔いはこの方法しかなかった。


「お前の妹の桜は……俺が必ず見つけて助け出してみせる。だから……安心してくれ」


俺は武志の亡骸を後にすると、息絶えた中年の足に刺さったバタフライナイフを無造作に抜き、刃についた血を拭った。


高槻(ヤツ)が刺した傷がなければ……あるいは、武志は中年の襲撃を躱して今も生きていただろうか?


ナイフの刃先を見ながら俺は自問自答し、同時にドス黒い憎しみを沸き立たせた。


「高槻……貴様には武志が受けた苦痛以上の恐怖を与えてやる。楽しみにしていろ……」


俺はナイフを折り畳み、ポケットの中にしまい込むと武志の家を後にした。


「雨か……」


小雨が降りしきる中、俺はバイクに股がりエンジンを掛けた。


武志の家から自宅まで20分あれば着くだろう……桜の安否が気になるが、まずは弟の正平やお袋の安全を確認してからだ。


俺は環状線を避けて、地元民しか通らない裏道を使いながら家を目指した。


道中、化物(ゾンビ)の気配は無かった……街は奇妙なほどに静まりかえっている。

暫く走っていると、暗い車道の真ん中で、片手を大きく振りながら、こちらに合図を送っていた人間がいた。


若い女だった……女は脇にバスタオルでくるんだ「何か」をかかえていた。


「良かった……止まってくれて。どうか、お願いします!この子が体調をくずしているんです!病院まで連れていってくれませんか?救急車を呼ぼうにも携帯がつながらなくて……」


脇に抱えている子供は泣き声ひとつあげていない……気を失っているのだろうか?


「その子供……泣き声がしていないが、気を失っているのか?緊急なら何故、自分で連れていかないんだ?」


「あっ!?……えぇ。そ……それは……そのぉ~」


俺の質問に対して、たどたどしい話し方で返した女は、俺の背後に目を反らした。


……やはり、何かおかしい。


俺はバイクを急発進させ、アクセルターンをして女の背後に周りこんだ。


バイクのヘッドライトに照らされたのは鉄パイプを構えた男だった。


「なるほど……そういうワケか」


注意を引くために女が臭い演技をし、男が背後から襲いかかる算段だったとはな。


「チクショウ!テメェ……何でもっと上手くやれねぇんだよっ!くそったれが!」


男は女が抱えていた「モノ」を叩き落とした。


「やはり人形か……今度は、赤ん坊の泣き声の機能がある人形を用意するんだな。三文芝居でも、それなりに信憑性は出てくる」


「……あ?いいからテメェは、俺達にそのバイクをよこせば……ちょっ!?……まてコラァっ!」


こういう手合に付き合っている暇はない……再度、アクセルターンをして、俺はその場を離れた。


武志の家に行く途中で見た、スーパーやコンビニになだれ込んでいた暴徒……武志の命を奪ったイカれた中年、先ほどの騙し討ちを企む男女。


すでに理性のタガが外れた人間達が出始めている。


胸騒ぎがした俺は、急いで家へと向かった。



昨今の状況でバタバタしてました。

更新を待っていた方、大変お待たせしました。

これからは時間を作ってちょくちょく更新します。


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