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本性


人間の集中力には限界がある。


まして、この状況下……いつ自分が喰い殺されてしまうか分からない状況で、どれほど長く集中力を保っていられるのだろうか?


俺達が降下してから、それほど時間は経っていないが皆の顔からは、生気が抜け…死への恐怖で怯えきっているのが分かる。


俺と高槻でフォローはしているものの、先頭に立って化物(ゾンビ)を処理しつつ、皆を守るのは負担が大きすぎる。


1人で奴等と戦っていた時より体力の消耗が激しい。


俺は肩で息を切らしながら、ロープで降下している彼女を横目で見たが、先程から同じ位置で止まっていた。

どうやら、高所から降りる恐怖と化物達(ゾンビ)に心底怯えているようだ。


このまま悪戯に時間が立てば、恐怖に負けて自分だけ逃げ出す奴が出てくるだろう。

1人が逃げ出せば、後から追従する者が必ず出てくる。


そうなれば、俺達には「全滅」という悲惨な結果が待っている。


だが、彼女が降りてこなければ動く事は出来ない……八方塞がり、と言うやつだ。


「葛城君……悪いが、ここからは僕の判断で行動させてもらうよ。彼女を待っていたら我々は殺されてしまうからね」


そう言うと、高槻は脱出用マットに向かい……「草刈り用の鎌」をマットから取り出した。


「まさか……よせっ!高槻っ!!」


俺の制止も聞かず、高槻は手に持った鎌を彼女めがけて投げつけた……鎌は背中に刺さり、悲痛な叫び声ともに彼女は地面へと落下した。


激しく地面に叩きつけられた彼女だったが、小刻みに痙攣しながら助けを求めている……辛うじてだが、生きているようだ。


だが、高槻は無情にも手に持った鈍器を頭に振り下ろし……彼女に止めを刺した。


「高槻っ!貴様……っ!」


「葛城君……これは非情だが、冷静な判断だよ。彼女を助けて皆が死ぬか、彼女を見捨てて皆を救うか……君には出来なそうだったから僕がやってあげたよ」


高槻……だが、奴の言う事も一理あるのも事実。


あのままでは彼女は一向に降りてこなかっただろう。


だが、他に方法があったのでは無いのか?彼女を助ける方法が……。


困惑する俺の横にいた人間が一言「ざまあみろ…グズグズしやがって」と呟いた。

周りの人間も一部始終を見ていたようだが、高槻を咎める事なく……むしろ安堵の表情を浮かべていた。


彼らには他人を助ける等の余裕は無い…自分が生き残るだけで精一杯なのだ。


「葛城君……これが人間だよ。お互い助け合うなんて事は自分に余裕がある時にしか出来ない事だ。誰しも君のように強い人間ではないからね……余裕が無い人間は、平気で他人を見捨てる事が出来るのさ」


高槻は配置に戻りつつ、俺に吐き捨てるように言った。


俺は考える……「人間(ヒト)としての尊厳」それは平時では守らなくてはならないものだ。

だが、化物(ゾンビ)どもが人間を喰い殺す世界で果たして「ソレ」が必要なモノだろうか?


過程に目をつぶれば、今の高槻の行動は皆を救った結果となる。


高槻が冷酷なのではなく、非情になれない俺が甘かっただけなのでは?


武志に降下するよう促しながら俺は、そう感じた。


そして、この後……俺は自分自身の不甲斐なさを痛感する事となる。


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