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選択


人生の中で大きな決断を迫られる時は幾度とある……


数多くある選択肢の中、これが最善と思って選んだものの……後で思い返してみれば「ああしとけば良かった」「もっと違う方法があったのでは?」と後悔する事も多い。


だが、遅かれ早かれ「選択」をしなくてはならない。


特に生か死かを問われる状況の中では……



作戦は予想外に順調だった……いや、高槻が即座に降りてきてくれたおかげ、と言ってもいいだろう。

俺は降下地点(マット)の周辺の防衛に専念し、高槻は後続が飛び降りやすいように準備を整えた。


1人……また1人と、体育館の窓からメンバーが降りてくる……武器の準備が完了した高槻は前線へと加わり、単体でにじり寄って来る化物(ゾンビ)の「処理」を開始した。


予想通りだが、高槻には化物(ゾンビ)に対して躊躇や恐怖といった「迷い」が無かった。


鈍器で殴り倒した化物(ゾンビ)に止めを刺す高槻は、楽しそうな表情さえ見せる……だが、この状況の中では恐怖に怯える者より高槻のような人間の方が役に立ってくれるのも事実。


俺達はマットを中心に円陣を組み、化物達(ゾンビ)を次々に撃退していた。


そして残りはあと2人……武志と「動揺していた彼女」が降りれば問題なく終了するはずだった……が、彼女は窓に手をかけて下を見ると、恐る恐る体育館の奥へと引っ込んでしまった。


「……何をしている、早く降りてこい」


俺は思わず呟いてしまった。


彼女の様子を見ていた高槻が、俺に近寄り耳打ちしてきた。


「葛城君……彼女と武志君は諦めた方がいい。おそらく「あの方法」で武志君は彼女を降ろすつもりだ。君と僕だけでは、ゾンビ達を長くは抑えきれない。非情な選択だが……決断をしなければならないよ」


あの方法とは……おそらく、カーテンで作ったロープで降ろす事だろう。


そんな悠長な事をしてられないのは武志にも分かっているはずだ……だが、武志には人を見捨てる、と言う事が出来ない。


高槻が提案した事が正解である事は、俺にも分かっている。


だが、そのような「選択」は出来ない……


「悪いが……俺は武志を置いていく事は出来ない。お前は周りの人間の援護を頼みたい。俺が先頭に立って化物どもを処理する」


呆れ顔の高槻は、ため息をつきながら呟いた。


「葛城君……それが愚かな選択である事は君には分かっているのでは?やれやれ……どうやら君は非情になれないようだ」


高槻が配置に戻ったのと同時に体育館の窓から「ロープ」が垂れ下がった……やはり、どうあっても武志は彼女を降ろすつもりらしい。


彼女は垂れ下がったロープを必死に掴みながら、ゆっくりと慎重に降下を始めた…。


俺は今のところ散発的に襲ってくる化物(ゾンビ)を処理しながら自問自答している。


俺は武志を救いたいが為に、脱出するメンバーを危険に晒しているだけなのでは?



本当にこれが正しい選択だったのか……と




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