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提案

_(._.)_

ようやく投稿出来ました……

「……っ!? ここから脱出するだって!?」


俺の提案を聞いた武志は、目を丸くして驚いていた。


この大学から皆を連れて脱出する事……


それが俺の考えだった。


「正気かよっ!?外は化物達(ゾンビ)だらけなんだぜ?この中にいた方が良いに決まってる。助けだって……きっと」


予想通りの反応を見せる武志に、何故このような考えに至ったのかを説明した。


まず、深刻なのが……食料の問題。


この体育館には食料が一切無い。

洗面台から水分を補給する事は出来るが、 水を飲むだけで、果たして何日持ちこたえられるだろうか…?


「……救助が来る間は、絶食状態で過ごす事になる。その間、時間と共に体力は確実に失われていく。耐えきれなくなり行動を起こそうとしても、体が動かなくなってからでは遅すぎる」


次に……連絡する手段が断たれている事。


先程から、スマートフォンで連絡をとろうとしているが、電話がまったく繋がらない。

回線が混雑しすぎてパンクしているようだ。

SNSで助けを呼ぼうにも、ネットにも繋ぐ事が出来ない。


学校のような公共施設は、有事の際に災害避難場所として指定されてはいるが、救助隊が本当に来るのかどうかは、正直怪しい。


大学は街の中心部から、そう遠くない場所にある。

街の方にも化物(ゾンビ)が徐々に現れ始めても、おかしくはない。

救助隊が来る可能性は極めて低いだろう。


仮に救助隊が来たとしても、大学の敷地内にいる大量の化物(ゾンビ)を見たら、救助を諦める可能性が高い。


「正直……安易に助けが来るものだと過信しない方がいいと思う。常に最悪の事を考えて行動した方が何かあった時に対処出来る。自力で脱出するプランは用意しておくべきだ」


「助けが来ない事を想定して準備をしておくって事か……たしかに、言われてみればそうだ」


武志は頷きながら、俺の考えに賛同してくれた。


「……武志。1つ言っておく事がある。これは俺の提案であって命令じゃない。決めるのはお前だ……ここにいる人間は、俺の提案など聞く耳もたないだろうしな」


誤解が解けたとはいえ、警戒されているのは変わらずだろう。

俺が言い出したところで、戯れ言としか受け取ってくれないことは分かっている。


「そうだな……わかった。皆が納得出来るプランが出来上がり次第、俺から皆に話そう。相馬の言う通りだ……こんな状況でも最善を尽くすべきだよ。俺達で作戦を練りあげようぜ」


合意した俺達は、2手に別れて行動することにした。

武志は使える物を探すために体育館の倉庫に、俺は脱出経路を探すために動き出した。


「……どうやって降りるかだが」


体育館の窓を開き、地上を見ながら俺は呟いた。


地上までビルの3階ほどの高さがある……おまけに路面がコンクリート材質では、飛び降りたら無事には済まないだろう。

窓に掛けてあるカーテンを繋ぎあわせて、ロープがわりにすれば降りる事は可能だが……。


いや……それでは時間かかりすぎる。


体育館にいる全員を、その方法で1人ずつ降ろしたら長時間の作業になる。


その間、化物(ゾンビ)は確実に集まってくる。

はたして、全員が地上に降りるまで化物(ゾンビ)共をくい止めていられるだろうか?


……おそらく無理だ。


いくら俺でも大量の化物(ゾンビ)は処理しきれない。


「さて……どうするか」


ポケットから煙草を取り出し、ライターで火をつけた時、誰かが俺の肩を軽く叩いた。


「もしよければ相談にのるよ。葛城君」


肩を叩いた人物は高槻だった。


笑顔の高槻は俺の横に並び、腕を組みながら話してきた。


「……ここから脱出する。そう考えているね?君なら、そう行動すると思っていたよ。僕も考えていたところだからさ」


どうやら、高槻も同じ事を考えていたらしい。


「……いかに安全に脱出するか……難題ではあるな」


高槻は俺に近寄ると、皆に聞こえないように耳元で呟いた。


「葛城君……別に全員を助ける必要なんてないんじゃないかな?」


……!?


「僕の予想では、ここから離れたくない人間が出てくると思うんだ。そういった人間は置いていけばいい」


俺は満面の笑顔で「冷徹な台詞」を平然と言う高槻に不快感を覚えた。


「それは……見捨てると言っているように聞こえるな。そんな考えは武志は許さない。俺達は全員が助かる案を探している」


「ふふ……武志君か。彼は優しいからね……人を切り捨てる覚悟はないだろうな。だが、君は違うだろう?……本当は分かっているはずだ。全員を助け出す方法は無いと言う事を」


「…………」


無言の俺の顔を見ると、高槻は満足したように笑顔になり、去っていった。


たしかに、奴の言う事は正論ではある。


脱出するプランを提示した際に、それがどんなに良い案であっても、それに反対する人間は必ず出てくる。

……それに便乗する人間もだ。


高槻は「そういった人間」を切り捨てろと言う。


奴は脱出する際に大人数で行動するよりも、少数で行動した方が生存率が高くなる事を知っているのだ。



そして……この体育館に残っていては「死」が待っている事も分かっている。



俺は煙草をふかしながら、武志がいる体育館の倉庫へと向かった。


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