状況
……昔も今も日本人は「協調性」を何よりも大切にする。
その「協調性」と言うものが、最も顕著に現れるもの……それは「集団」だ。
世間から疎まれ、閉鎖的な集団である暴走族を率いていた俺は、その集団の輪の中にいる人間がとる行動をある程度、理解していた。
大まかではあるが、その行動を3つに分ける事が出来る。
まず1つ目……
集団がとる行動を何よりも大事に考え、皆に「協調性」を求める者達。
一見、集団の輪を乱さぬ調停役のように思えるが……こういった者達は、何よりも集団の輪に外部からの「色」がつくのを嫌がる。
つまり、集団が変革するのを嫌う傾向にある。
そして2つ目……
周りの意見に逆らわず、その場の状況に流される者達。
いわゆる「日和見」という考えで、状況が変われば身を委ねるように意見に従う。
「協調性」があると思われるが、こういった者達は不満があっても、自らの意見を口に出さない。
集団の中では大多数の人間が、これに該当する。
そして3つ目……
集団の中で「どう立ち回っていくか」を常に考え、他人の様子や顔を伺いながら、自分に利のある方に流れていく者。
いわゆる「八方美人」的な顔を持ち、一見愛想が良い感じに見受けられるが、その人物が自分に利が無いと分かると容赦なく切り捨てる二面性を持つ。
早計かもしれないが、先程の高槻という男は「3つ目」に当てはまる感じがした。
あの「作り笑い」に嫌悪感を抱いたものもあるが、この異常な状況下の中であるにも関わらず、俺が元暴走族と分かって友好的に迫ってこれるのは、普通の神経では出来ない。
むしろ、俺に対して嫌悪感を抱いた彼女(斎藤)の態度の方が普通だ。
俺は高槻と距離を置くため、武志と話したい事がある、と言って適当にその場を離れた。
武志と共に体育館の端まで離れ、俺はタバコに火をつけて一服する。
「武志……これまでの経緯を知りたい。俺と電話で会話した後に何が起こったんだ?」
武志は頷きながら語ってくれた。
あの後、校内にいた生徒たちは講師達の誘導のもと、体育館や講堂に避難する手筈だった……。
だが、大学の正門付近で騒ぎが起こり、それどころではなくなったと言うことだ。
騒ぎが起きた時、2階の教室にいた武志は窓から正門の様子を見ていたとの事だ。
正門から1人……また1人と敷地内に進入しようとする化物達の群れ。
化物とは知らずに近づいた大学の関係者達は次々と餌食にされていった。
その様子を見た生徒達が次々と悲鳴をあげ、大学内はパニック状態におちいる。
そんな中、緊急サイレンと共に救急車が正門にいた化物と、逃げまどう大学関係者達を撥ね飛ばし1階ロビーへと突っ込んだ。
その後の出来事は、ここに一緒に逃げこんだ人間から聞いたとの事だが……さながら地獄絵図だったらしい。
ロビーに待機していた大勢の生徒達を巻き込みながら、暴走した救急車は横倒しになり……後部扉から化物が現れた。
怪我をして動けなくなった者から餌食となり、喰われた者は化物として動きだし、次々と変異していったそうだ。
ネズミ算のように生徒達は次々と化物となっていき現在の状況になった。
そんな中、武志は生存者を出来るだけ集めて体育館に避難した。
「怪我をして動けなくなった奴も助けたかったんだけど……どうしようもなかったんだ。俺は精一杯頑張ったんだけど……クソッ!」
武志は自分の不甲斐なさを心底悔しがっていた。
「武志……お前は立派だ。こんな状況の中で自分の事ではなく他人のために咄嗟に行動出来る人間は、そういない。お前は出来る限りの事をしたんだ」
俺の言葉に救われたのか、武志は少し頷いていた。
実際、武志は大した奴だ。
普通の人間は、身の危険があれば自分を守るのを第一に優先する。
だが、武志は自分の事よりも他人を優先した。
こういった状況下では「人間の本性」が嘘偽りなく出てくる。
普段、どんなに綺麗事を並べている人間でも極限化では化けの皮が剥がれるものだ。
武志は「善人」と呼ぶに相応しい人間と言うことだ。
だからこそ、友人としてこんな所で死なせたくはない。
俺は武志にある提案を持ちかけた。
ちょっと短いです
近々更新しますゆえ、許してください・勘弁してください




