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真実【上】

俺は拘束されている…


公民館の一室の真っ白な部屋…中にはベットと椅子が一つ置いてあるだけの簡素な留置所だ。


いや…正確には「隔離室」と言ったほうがいいかもしれない。


当然、部屋には鍵がかけられている。


俺は椅子に腰掛けながら、この真っ白な空間で部屋の扉を睨み続けていた。


「…桜は無事なのだろうか?…せっかくたどり着いた公民館で拘束される事になるなんて…な」


ぼんやりと独り言を呟いたのと同時に、部屋の扉が開いた。


「所持していた免許証で名前は確認させてもらったわ。葛城相馬くん…初めまして。私はマリア・イアン…ここの現場統括者ってやつね」


扉から入ってきたのは、白衣を着た金髪の白人女性だった。


「外国人か…随分と日本語が上手いんだな。この公民館を仕切っているのが外国人で、しかも女性だったのは意外だったが」


「フフ…ありがとう。前々から日本の文化に興味があったのもあるけれど、日本語は知的好奇心から学んだわ。世界中の言語の中でも特に難しい言語だからね」


マリアと名乗った女性は赤い縁のメガネを外し、自分の白衣の胸ポケットにしまいながら話した。


「手洗い歓迎をして悪かったわ。あの時点では貴方達が「感染」しているかどうか分からないからね。訪問者には厳しく接するように指示しているの」


「…外にいる兵士に言っといてくれ。もう少し「客人」には人間らしい扱いをしろとな」


公民館の門についた俺達は、武装した兵士達に銃を頭に突き付けられ、地面に薙ぎ倒された。


その後は「戦争捕虜状態」だ。


銃の柄で腹や腰を殴られ、腕から血液をむりやり採取された。

そして、この部屋へと引きずり回され、押し込められた…というわけだ。

桜とは血液を取られるまで一緒だったが、その後どうなったのか…


「あの時、貴方がナオキの知り合いと言わなければ射殺されていたかもね。一緒に彼がいたら、こんな目に会わなくて済んだのに」


「…相沢とは知り合いなのか?」


「知り合いもなにも…元同僚よ。世界的なPMCであるライオットカンパニーのね」


PMC…?民間軍事会社か。

ライオットカンパニーの名前はネットで見た覚えがあるな…たしか、ここ数年で急成長した傭兵企業の名前だ。

相沢はそんな所に勤めていたのか。


「相沢は随分と有名な会社に属していたんだな。「こうなる」前の世界ではそんなに需要があったのか?」


「ライオットカンパニーのような傭兵会社が急成長を遂げたのは無理ないことだわ。君もニュースを見てるでしょ?戦争はもはや、大国同士の争いではなく「テロ」などの小規模なものへと移り変わっているわ」


「…大国がそれを処理しようとすると、宗教状の理由などの軋轢が生まれたりする…ならば利害が無い傭兵会社に委託するということか」


マリアは部屋の奥へと進み、ベットに腰をかけてニッコリと笑った。


「そうよ…なかなか良い理解力を持っているじゃない。好感が持てるわ…ライオットカンパニーは表向きには「民間会社」を装おっているけど、その資金の出所は国連の常任理事国などの大国が資金提供しているの…勿論、君たちの国…日本も例外ではないわ」


日本…も?


常任理事国ではないが、日本のマネーパワーは世界経済に大きな影響を与える程に強大だ。

しかし、平和を謳っている日本が傭兵会社に資金を提供していたとは…


「人間は言っている事とやっている事を上手く使いわけている動物だ、と言うことの一例ね。悪く言ってしまうと、君たちが納めた「税金」が人殺しの会社の資金の一部になっていたことになるのよ」


「…テロなどの犯罪行為を抑止する会社に投資しているとも言えなくもないがな」


「フフ…そう願いたいのも無理がないけど、ライオットカンパニーには抑止の他に大事な事があるのよ。それはね……世界の戦争経済の均衡を保つこと」


戦争経済…戦争によって生まれる利益の事か?


「完全に平和になってしまったら兵器は必要ないでしょ?かといって世界が混沌になってしまったら利益どころではないわ…つまり、適度に争いが起きて兵器が必要な世界が理想なのよ。そして、それは大国以外で争いが常に起きていなければいけないの」


「…まるでアンタ達の会社が世界の悪のような印象を受けるな」


「フフ…そうね。でも、それによって世界が均衡を保たれていることも忘れないでね。君たちが発展途上国よりも裕福な暮らしをしているのも私達の「必要な悪」のおかげなのよ?」


…いつの世も虐げられるのは力の無い者達。

自分達が平和と思っていたのも、他国にいる無力な人たちの理不尽な死によって作り上げられていたとはな。


「………」


「私とナオキはライオットカンパニーの特殊部隊…通称・色付き(カラーズ)の部隊員なの」


「アンタも…?」


相沢は「赤い狼」と呼ばれていたと言った。

目の前にいるマリアもコードネームを持つ特殊部隊なのか?


「私のコードネームは紫色の(パープルスネイク)…人体に対する毒物と医療のスペシャリストってところよ」


「つまりは…科学者兼医者ってやつか?相沢とは違い兵士ではなさそうだが」


マリアは鋭い目付きで俺を見つつ薄く笑っている。


「あら…?安く見られたものね。ライオットカンパニーでは自分の事は自分で守るのを掟としているの。科学者とはいえパープルの称号を与えられたのよ…護衛もつけずに貴方と話しているのが、何よりの証拠だと思うけど?」


つまりは…いつでも俺を殺すことは出来るというわけか。


…たしかに施設の現場統括者だ。

この異常下で頭の良さだけでは部下を統率することは難しい。


「それでは聞いておこうかしら…ナオキはどこまで話したの?」


一体なんの話だ?

相沢はアウトブレイクについて何も話していない。この言い方だとアイツは何か知っていたのか?


「…相沢は何も話していなかったが?」


マリアは溜め息をつくと呆れた顔をして俺に話してくる。


「なるほどね…ナオキらしいといえばらしいけど」


「…どういうことだ?アンタは知っているのか?このアウトブレイクの原因を」


マリアはベットから立ち上がり、壁に寄りかかりながら腕を組み俺に話してきた。


「…いいわ。ナオキから銃を託された貴方は知って おいた方がいいかもしれないわね。「ゼロ」の事を」


「…ゼロ?」


マリアは淡々と話し始めた。

世界がこうなってしまった原因…ゼロの事を









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