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別れ

俺達は化け(コレクター)の家から、再び公民館へと向かっている。

歩く事が出来ない桜を背負いながら感染者達を排除していた。


俺は桜を背負いながら、あの化け物の異常な生命力について考えていた。


同じく疑問に思っていた相沢は、一つの仮説を立てた。


このアウトブレイクの原因が細菌(ウィルス)によるものだと仮定し、俺のような抗体を持つ者が細菌(ウィルス)の力を逆に取り込み、人の生命力を凌駕する存在になったのではないかと…


勿論、これは何の科学的根拠の無い仮説だ。


だが、あの女の怪力や異常な生命力を考えると…

この説が、あながち間違っているとは言えない。


…事実、あの女の蹴りの威力は尋常ではなかったと相沢は話していた。


体格も華奢な中年の女性が、荷物や銃を持った成人男性を、ただの足蹴りで壁まで蹴り飛ばす事が出来るだろうか?


さらに、銃弾を致命的な箇所に受けたにもかかわらず立ち上がる異常な生命力。


相沢が言うには銃弾は心臓や肺に当たっていたという…

普通の人間なら立ち上がる事はおろか、そのまま反撃に転じるなどという芸当は出来ないだろう。


俺はゲームの「ラストデイ」に登場したクリーチャーを思い出していた。


「…特殊感染者ってやつか。…人としての意識を失わずに能力を身に付けた者」


「う~ん…まぁ~そんなところだろうなぁ。この騒ぎが起こってから約一ヶ月…そんな化け物がボチボチ出始めてもおかしくねぇよ」


「あぁ…そうだな。俺もいずれ…」



他人事じゃない…俺も感染しているのだ。



今は「そうなる」兆候が無いが…遅かれ早かれ、俺も奴等の仲間入りすることになるだろう。


あの化け物のように人としての意識を保ちながら「人間をやめる」ことになるのかは分からないが。



「ま……あんまり思い詰めんなよ。お前さんは大丈夫だ。そう俺の勘が言ってる……馬鹿にすんなよ?結構、俺の勘は当たるんだぜ?」


「…そう願いたいもんだな。桜のためにも」


そんな会話をしつつ、感染者達を排除しながら進んでいた俺達の前に「公民館」が見えてきた。


大きな二階立ての建物の周りや塀には、見るからに強固なバリケードが張られている。

正面の門の両脇には、自分達で作ったと思われる監視塔が設置され、外の動きを随時、監視しているようだった。


「さてと…あれが公民館だ。相馬…わりぃが俺はここまでだ。つまりはお別れってやつだな」


「…一緒に来ないのか?」


「まぁな…俺は傭兵だしよ。「契約」があっての仕事だからなぁ…あそこには俺が欲しい「見返り」が無いだろうし…な」


つまり「慈善事業」はしないって事か。


「…分かった。ここまで付き合ってくれて感謝する。俺一人では桜を助ける事も、連れてくる事も不可能だったからな…預かっていたコイツは返すよ」


俺はタクティカルベストにしまっていた拳銃を取りだして相沢に渡そうとする。


「ソイツは返さなくてもいいぜ!お別れの選別ってやつだ。無くすなよ~?色々カスタマイズした「お気に入りの銃」なんだからよ」


そんな大事な銃を俺に渡していいのか?と答えようとしたが、相沢は続けて話してきた。


「それと…多分入れてくれねぇだろうから、見張りにこう言うんだぜ?色付き(カラーズ)の相沢の知り合いだってな」


「…色付き(カラーズ)?」


「何の事か分からねぇだろうけど、これで入れてくれるはずだ。そんじゃあ…またな!お互い生きていたら、また会おうぜ!」


相沢はタバコを取り出しながら笑顔になり、俺に敬礼をしつつ去っていった。


公民館にいる人間は相沢と知り合いなのか?


色付き(カラーズ)の意味を理解出来ないまま、俺は公民館の正面にある門へと歩き出す。




ここで俺はアウトブレイクの真実を知る事になった…







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