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コレクター【上】

人は欲望のために生きているといっていい。


目に見える具体的な物であれば「金」や「物」


形の無い物であれば「権力」や「名声」と言ったところか。


誰しもが思っていることだろう。


誰よりも裕福でありたい…皆に認められた存在になりたい…と。



そういった「欲望の感情」を持つ人間によって、この「社会」は動いている。



とはいえ、だれもが「富」や「名声」などを手に入れられるわけでもなく、裕福な者がいる一方で「持たざる者」が出てくる。


そして「持たざる者」の心の中には「持つ者」に対しての



「嫉妬」と言う感情が芽生える



「嫉妬」の感情は相手への「憎悪」の感情を生みだし、やがて自身の心を醜く染めていく。


俺はアウトブレイクが起きた極限状況の中で、他人への「嫉妬」が狂気になり果てた人間に出会った。



ーーセーフハウスから一夜明けた次の日ーー



ここから「公民館」までは、そう遠くないらしい…相沢はそう言った。

邪魔になる感染者を排除しつつ進んでいた俺達だったが、前衛として進んでいた相沢は急に立ち止まり、俺に合図を送ってきた。


「おい…相馬。あの家見てみろよ。焼き芋を焼いてるらしいぜ」


相沢が指を差した家の二階の窓からは「赤い煙」が立ち上っていた。


発煙筒らしき煙…誰かが救援を求めて煙を出しているように見えた。


「…確認はすべきだとは思うが…アンタはどう思う?」


「ま~俺としちゃ~関わらない方がいいと思うがなぁ~」


乗り気じゃない相沢だったが、俺が行くならと渋々了承してくれた。

この状況下では危険となるものは、なにも感染者だけじゃない…何故なら理性というタガが外れた人間もいるからだ。


つまり救援を求めているように合図を送り、やって来た人間を「狩る」という行為。

俺が家に侵入する際に慎重に行動していたのも、感染者だけではなく、こういった人間に対しても気付かれないようにする為でもある。


相沢を先頭に俺達は家の外周から検索を開始した。


感染者が侵入出来ないように、家の周りには最低限のバリケードは築かれている。

窓から内部を確認したかったが、木製のバリケードが張られ、カーテンが閉められていて中の様子は確認出来ない。


俺達は家の扉から侵入を試みることにした。


相沢は戸口の横に立ち、銃を構えながら扉のノブを回す…てっきり鍵はかかってるものと思っていたが、扉には鍵がかかっていなかった。


相沢は、ゆっくりと扉を開けて銃を構えながら家へと侵入していく…俺も相沢の後に続いて入っていった。



家の中に入った途端に鼻につく異臭…



そこで俺達が目にしたものは「狂気」が生んだ光景だった。



テーブルや棚に置かれた人の「生首」…しかもその顔は、昔のホラー映画で見た人造人間のようにツギハギだらけだった。


「オイオイ…ずいぶんいい趣味してんじゃねぇか?家主は死体愛好家かぁ?」


相沢は置かれていた「生首」を銃の先に引っ掛けて持ち上げる…生首の内部から黒いゼリー状の「何か」がボトボトと床に落ちていった。


「あらら…できたてだったのね。防腐処理くらい徹底してもらいたいもんだぜ…なぁ?便所の臭いが香水に思える位にヒデェ臭いなんだからよ」


「…そういう問題じゃない。この作者が家の中にいる方が問題だ」


生前の物なのか死後の物なのか…置かれた「生首」はそれすらも分からない程に痛んで腐敗していた。

ただ分かるのは、この作者が異常な人間だと言うことだけだ。


俺達は銃を構えながら煙が出ていた二階へと向かっていく。

当然、「作者」に出会ったら躊躇なく引き金を引く用意はしながらだが…



二階は一つの部屋しかなかった。

部屋の中から物音はしない…相沢は俺と呼吸を合わせ、部屋の扉を蹴破り突入した。



部屋の中は一階とは異なり、驚くほど綺麗に中が整頓されていた。

そして部屋の中心に、目隠しをされ両手・両足を縛られた女性が寝転がっていた。


「こいつが家主…ってわけじゃあなさそうだな。生きているのか?」


かなり衰弱してはいるが、まだ生きているようだった。

俺はナイフで手足を拘束していた縄を切り、目隠しを取る…そこには見知った顔があった。



「さ…桜っ!?お前…桜なのか!」



安藤桜…大学の友人である安藤武志の妹。

こんな所で出会うとは…


桜は俺の顔を見ると、何か言いたそうに口を動かしているが声になっていない…

その目からは涙がこぼれていた。


「お前さんの知り合いか?随分とヒデェ事されたようだな」


桜の顔や腕などには幾つもの内出血の痕があった。

…食事や水を与えず何度も暴行されていたのだろう。桜はかろうじて生きている状態だった。


「捕虜には人権がねぇからなぁ…なんたら条約で「表向き」は認められてはいるが。もっとヒデェのを見たことがあるぜ?目ん玉を焼かれて性器を切り取られた奴とかな」


「…今は聞きたくない話だな。この子を連れ出したい…援護を頼めるか?」


「おいおい…マジかよ。まさかその子がお前さんの言っていた…」



そう…俺はこの町でやり残した事があると言った



その一つが安藤桜…この子を助ける事だった。






































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