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赤い狼

○○、仕事しろ!!!


状態ですが、なんとこさ投稿出来ました。


エタる予定はありません。


結末の構想は出来ておりますゆえ

薄暗くなった部屋の中で、俺は手に持った煙草の火を見つめていた。

「奪還部隊」の施設を後にした俺は「公民館」に向かうため、相沢と行動を共にしている。


「あんなに群がって、よくもまぁ…頑張るもんだよなぁ~ゾンビってやつは……そう思わねぇか?相馬」


セーフハウスとして選んだ家の2階から、周りを取り囲んでいる感染者達を見て、相沢は呆れたように話してきた。

感染達はバリケードに阻まれ、俺達に「接触」出来ずに「いつも」の呻き声を苦し紛れに上げていた。


「まぁ~ゾンビの声を「子守唄」にしながら寝るのも一興ってやつだ。そのうち酔っぱらいの「鼻歌」みたく気にならなくなるわな」


相沢は皮肉を込めた冗談を言いながら、自分の荷物から缶コーヒーを2本取り出すと俺に渡してきた。


「…およ?…なんだぁ~まだ引きずってんのか?お前さんもクールに見えて意外とウェットなんだなぁ~」


「…そんなに早く気持ちは切り替えられない…アンタのようにはな」


施設から離れて、まだ1日しか経っていない。

目を閉じると川本が渡してきた写真の「祐也」の笑顔が浮かんでくる…


遺体となった顔も…


「ここはもう戦場なんだぜ?戦場じゃあ人なんて簡単に死んでいくもんだ。それこそ死んだ奴の顔を思い出す間もなく、次の奴が死んでいく…嘆いている暇なんてないのさ」


戦場……か。


たしかに、相沢の言う通り「世界」は戦場になってしまった。

生よりも死が…秩序よりも混沌が支配する「弱肉強食」の世界。


相沢のように死というものに感情を抱かなくなる方が良いかもしれない…


「今日の命に…乾杯!」


受け取った缶コーヒーの蓋を開けようとした時、相沢はそう言ってきた。


「なんだ…その掛け声は?」


「ん?…これか?俺に「傭兵」としてのイロハを叩きこんでくれた恩師の口癖だ。明日、死ぬかもしれない命で今日を生きた事に感謝する言葉だよ。どうだ?…グッとくる言葉だろ?」


相沢は傭兵として世界の「紛争地域」を、自分の命を代価に渡り歩いてきた。

死と隣り合わせの日常……平和な日本にいた俺が想像もつかない世界を見てきただろう。


自分の今日ある命に感謝する…相沢の言葉を俺は重く感じた。


「アンタ…なんで傭兵になったんだ?」


「う~ん…そうだなぁ~命を賭けて自分がどこまでやれるか、試してみたくなった…かな?俺の場合はその仕事が「傭兵」だったわけよ」


相沢はタバコに火をつけて笑いながら話していた。


「さっき話した恩師のもとで死に物狂いで訓練したなぁ~。新兵の頃なんて戦場で何度も死にかけたけどよ…何とか生き残ってきたなぁ。気付いたら赤狼(レッドウルフ)なんて呼ばれるようになっちまったわけさ」


「赤狼…?呼び(コードネーム)ってやつか?」


相沢は少し照れながら話しを続ける。


「大量の返り血で真っ赤に染まった俺を見て名付けたんだとよ…ちょっと恥ずかしいだろ?俺としちゃあ…もっとこう…「雷神」とか「戦鬼」とかの方が良かったんだけどなぁ~」


むしろ、そっちの方が恥ずかしい気もするが…


「その調子なら仕事を辞めようと思った事はなさそうだな」


「いや……あるぜ。俺が前に話した「出来事」の時はマジで考えたなぁ~」


前に話した?……罪の無い村人を政府の指示で皆殺しにした作戦。相沢が人の死に対して感情を抱かなくなった出来事か。

相沢は手に持った缶コーヒーを一気に飲み干すと、灰がこぼれ落ちそうなタバコを缶の中に押し込めて、ため息を吐いた。


「最後……そう…最後の村人と思っていた若い女を俺は撃ち殺した。そうしたらよ…小さな子供が死んだ女に近寄ってきた。その子供は喋る事が出来なかったのか、必死に死んだ女の体を揺さぶっていた…多分、その女の子供だったんだろうな」


相沢はタバコに火をつけると部屋の天井を見つめながら煙をふかしていた。


「その子供は銃を構えた俺をずっと見ていた…怒りや憎しみじゃない。あの哀れみを含んだ「目」…俺は、その子供に対して何も出来ずに後退りしていた…気が狂いそうになった俺は、あらんかぎりの声で叫んだよ」


「…その子供は?」


「…仲間が処理した。俺は狂ったように暴れていたそうだ。次に気付いたのは野戦病院のベッドの上ってわけだ」


相沢が人の死に対して感情が消えた出来事…その子供の訴えるような目が相沢の感情を殺してしまったのか。


「…俺は数えきれないほどの人を殺してきた。殺した人間に感情はわかねぇ…だが、1日たりとて「あの目」が忘れられた事はねぇ……あぁ…つまんねぇ話しをしちまって悪かったな」


「相沢…」


「相馬…忘れる事が出来るなら、早く忘れたほうがいい。決して俺みたいになるなよ……さぁ!もう寝ようぜ?明日は「公民館」に行くんだろ?」


いつもの調子に戻った相沢は寝袋を渡してきた。


相沢は自分の暗い過去を俺に話してくれた。

それは過去にとらわれていては苦しむだけだ、と




ならば「後悔」ではなく


「祐也」の死を俺は背負っていこう。



…それが俺に出来る唯一の事だから。






アウトブレイクから1ヶ月がたった。



俺の戦いはまだ続いている…




















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