表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/114

決着【下】


 ……これから行う最終策(ファイナルロッド)とは、形状変化させた血武器を右手の(てのひら)から高速で射出する事。

 

 一見、単純な策のようだが……成功する確信はある。

 

 だが、問題がないわけではない……察知した手駒が身を挺して射線上に入った際、駒ごと奴を撃ち抜く必要がある。それには「質量」を確保し、貫通力を高めなければならない。

 

 それには大量の血液が必要……問題なのは血液を一気に放出する為、【出血(ショック)死】を引き起こす可能性があると言う事だ……無論、ゼロが生命維持に尽力するだろうが、この満身創痍(ボロボロ)の身体では、命の保証はない。

 

 つまり、最終策とは「自己犠牲」……自身の命を捧げるに等しい行為。


 ……奴のような利己主義(エゴイズム)の人間には「そんな馬鹿げた真似をするはずがない」と思うだろう。


 ……だからこそ「やる価値」がある。


    

 そして【より(はや)く・より鋭く・より硬く】


 この条件を満たし、適切な形状に血液を変化させれば……必ず奴を消滅させる事が出来る。

 

 形状は【馬上槍(ランス)】がいい……あとは発射後の空気抵抗によるブレを「ジャイロ効果」で抑える必要がある為、飛翔体を施条(ライフリング)された弾丸のように螺旋状に回転させる。


 これで全ての準備は整った……


 掌に意識を集中させ、血武器が俺の望んだ形状へと変化する。

 ……使用出来る血液の量が少なかったのか、想像していたほど「馬上槍(ランス)」は大きくはならなかったが、その分は「速度」で補えばいい。


 馬上槍(ランス)はゆっくりと……そして、力強く回転し始めた。


 「……もう力は残っていないはず。あんな遠くで一体、何を? ……いや、まさかとは思うが」


 高槻は俺を注視していたが、回避行動をとらず、様子を(うかが)っているだけだった。

 

 ……今から、騎士や女王を俺に向かわせても間に合わない。事前に「十分な距離」で戦うように指示してある。

 よしんば、駒を俺の方に動かした時は、即座に(たかつき)()るように打ち合わせ済みだ。


 ……高槻、お前の敗因は明確。


 それは【(おご)り】だ。


 これまでの戦いの中、俺達を確実に()機会(チャンス)はあった。

 俺ならば「それ」を見逃さない……お前は優越感に浸り、あえて自分の能力を試すような戦いをした……それが敗因だ。


 「な……なんだっ!? 葛城君から発せられる、この()も知れない威圧感(プレッシャー)はっ! ま……まずい。本当に「アレ」をやるつもりか…………っ!? 女王(クイーン)っ!」 


 回避行動をとろうとした高槻の動きが急に止まった。

 右足の大腿部には、俺が投げつけた「バタフライナイフ」が突き刺さっている……刺したのは絶命したはずの「笹本さん」だった。


 「……バカタレがっ…………そ……相馬……後は……頼ん……だ……ぞ……」

 

 「……チィっ!!! こ……この老いぼれっ!ま……まだ生きてっ!? しまったっ!回避が間に合わ……」


 ……因果応報と言うべきだろうか? ナイフが刺さった箇所は、奇しくも高槻が武志に刺した場所だった。


 【……奴の動きが止まったっ! (はな)てっ! 葛城相馬っ!】

 

 ゼロの叫びと同時に、俺は「馬上槍(ランス)」を撃ち出した。 

 女王(クイーン)が射線上に割り込んできたが、その胴体を簡単に貫き、高槻の右肘に当たった。


 「馬上槍(ランス)」は、そのまま施設の壁をも突き破り、外へと飛び出していく。

 

 「ば……馬鹿なっ! この僕がっ! こんな人間(カス)どもに()られるハズがっ!? な……なんだっ? 熱い……右腕が溶ける……これが葛城君の悪魔(ディアブロ)の能力っ!?」


 女王(クイーン)の堅牢な皮膚のおかげで、胴体に直撃はしなかったが、右肘でも十分だ。

 いずれ全身に侵食し、内側から細胞を全て喰い尽くす……それが【ゼロイーター】。



 「……俺の……勝ちだ。消滅しろ……高槻」 



 かすれた声で勝利宣言をした。

 

 

 

 


 



   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ