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プロローグ兼エピローグ
もし自分専用のロケットが与えられたら、彼は喜んで乗りこむだろう。あの子はそういう子だ。
そのロケットに帰りの分の酸素が積まれていないと知っていて、笑顔で手を振る大人たちが自分のためには決して泣いてくれないとわかっていて、たった一人きりで乗りこむのだ。
引きとめることが出来なかった私たちの言い訳なんて気にも留めず、誰も恨まないけど、誰も必要としてくれない。
身動き出来ないほど狭いロケットの内側で、語る相手のいない夢を見る。
あの子は、そういう子だ。
目に留めてくださり、ありがとうございました。