第六遭遇
「あ、あの…」
日が傾き、教室の半分ほどが夕焼けの色に染め上げられて放課後のときに、怜奈に向かって雫は話したかけた。
「それでね、地球上の人類誕生は異星人が関係してんだよ。つぎにその歴史についてだけど―――」
怜奈は雄夜に向かって異星人について熱弁をしているが、雄夜は目をつぶりながらそっけなく相づちをしているだけだ。
「あのー…」
雫が声をだしても怜奈の大きな声に遮られる。
「すみませーん…」
雫は次第に声が小さくなってしまう。
「分かったから帰らせてくれないか?」
雄夜は目をつぶりながら眠そうに言うと、怜奈は「絶対、信じてないでしょ!」などと言って雄夜を帰らそうとしない。
雄夜はこんなことになってしまったのは、朝のホームルームの時に今後の予定について怜奈から一方的に話を雄夜が聞かされていたときになる。雄夜は昨日、待たせてしまったことに罪悪感を覚え、次の予定には必ずいくと言った。その事を怜奈は喜んだ。しかし、話を聞いてくうちに雄夜は怜奈に異星人のことについて聞いてしまったのだ。怜奈は待ってましたと言わんばかりに話を始めて、この時間まで続いた。
雄夜は帰ろうとするが帰れない。だって、帰ろうとすると涙目になりながら怜奈が腕に抱きつきながら下から目線で「待って」と言うのだ。
雄夜は演技だとわかっているのだが反抗心が削がれてしまうのだ。
「今何時だ?」
雄夜が目を開けて、黒板の上にある時計を見ると、視界にもじもじしながら下を見ている雫が入る。
「お、おい。どうしたんだよ?」
雄夜は少し驚きながら時計から視線をはずして雫の方を見る。
「あ、あのー、たいしたことじゃないんですけど…なんていうか、その…」
雫は両手の人差し指を胸の前で合わせながら言った。
「雫、どうかしたの?」
怜奈が雫を見てながら言うと、雫は一層顔を赤くした。雫は人見知りなのだ。
「じ、実はですね…」
「あ、分かった!これから雫ちゃんは雄夜に告白するのか~。教室でてるね」
「ち、違います!」
雫の声は怜奈には届かなかった。
「待ってくれ、いきなしというか…早すぎるというか……もっとお互いに知り合うべきだと…」
雄夜は顔を赤くしながら、ぶつぶつ一人言のように言った。雫は雄夜の豹変ぶりに少し笑った。
「違いますよ」
雫がそういうと雄夜は安心したのか寂しかったのか悔しかったのか、よく分からない表情をしていた。
「面白いですね。緑神くん」
微笑みながら雫は雄夜に言った。
「本当だったら嬉しかったのに…」
雄夜のなにげない言葉に少しだけ雫は頬を染めた。
「おぉ、そうだ用事があるんじゃないのか?」
「あ、そうでした。緑神くん、実は私………」
雫は目を泳がしたあと、ため息をついた。
「やっぱりまた今度にします。時間を裂いてしまってすみません」
そう言って、雫は教室を早歩きしながら出ていった。入れ替わるように怜奈が入ってくると、怜奈は蔑んだ目で雄夜を睨んだ。
「待ってくれ、告白じゃなかったし、俺にもよくわかんねぇんだよ」
「あっそ…」
雄夜が必死に言っても怜奈の反応は変わらなかった。
「もういいわ、じゃあね」
そう言ったまま怜奈はカバンを肩にかけて教室をあとにした。
雄夜は大きくため息をして、教室にある時計を見た。時刻は五時をまわろうとしていた。
雄夜は頭のなかで電車の来る時間を考えた後、駅に向かって走りだすのだった。
∇▲∇▲∇
時刻は七時になった。
「意味わかんねぇよ」
雄夜は不機嫌そうにソファーに寝転がった。
不機嫌の原因は放課後の怜奈についてもだし、今日の電車に乗ることができなかったのもある。しかし、一番の理由は怜奈からのお呼びだしをくらったのだ。メールの内容はいたって簡単、ミステリーサークルのある浅華公園に来いというものなのだ。
メルアドは昼休みに交換したのだ。
雄夜は行きたくないのだが、怜奈に今度は絶対に行くと言ってしまったので、いかないといけない。
「めんどくせぇ」
雄夜はそう言いながら起き上がり、用意を始めた。
用意を終わらせ、駅に向かっていく。
三十分かけて浅華公園に雄夜がつくと、人影が一つあった。怜奈の身長ではなく、小学生と同じくらいの身長だった。雄夜は顔を見なくても雫だと分かった。
「こんなところでなにしてんだよ」
雄夜が雫に近づきながら言うと、雫はビクッと体を動かしたあと後ろを向いて、雄夜に「こんばんわ」と言った。
「うっす。んで、なんでいるんだよ」
「霧山さんに呼ばれまして」
「お前もか」
「緑神くんもだったんですか」
二人は星の煌めく夜空を見上げた。眩いほどのたくさんの星が綺麗に光っていた。そこに、一つの流れ星が通った。二人は互いに横目で見て、目が合うと少し照れながら夜空をまた見上げる。
「そういやさ、昨日、なんでここにいたの?」
雫が少しためらった後、話始めた。
「最初は興味本意だけでここに来たんです。でも、何故かここにいると落ち着いて、気づいたらあんな時間まで座ってたんです」
「親とかは心配しなかったのか?」
雄夜は周りの空気が固まった様な気がした。地雷を踏んでしまったのだ。
「私の両親は死にました…」
「…んで?」
雫は雄夜のことを目を見開きながら見た。
「どうした?」
「普通なら話の話題を変えたりするもんじゃないですか?」
「普通なら、だろ?俺は今を後悔したくない人なんでね。あ、あと、そんな地雷は自ら踏みにいくぜ」
雫は微笑んで、雄夜の目を真剣に見ながら話始めた。
「私の両親は自殺したんです。いや、私が殺したんです」




