プロローグ:出会い
ある男が電車に飛び込もうとしていた。階段を一気にかけあがり、周りの人に迷惑をかけない程度に走る。人混みのなかを慣れたように間を通っていく。
ベルの音が駅のなかに響き渡る。
「うおおおぉぉぉっっっ!」
一つの叫び声と一緒に閉じかけのドアに一人の男が飛び乗った。
「危なかったぁ~」
息を切らしながら男は言った。この台詞に周りの人は学校に遅刻しそうだったんだなと思い、いつものように本を読み始めたり音楽に耳を傾かせたり携帯電話をいじり始めた。
しかし、この男は入学式に行くのであり新入生は午前九時までに教室に入っていればいいのだ。
今の時刻は七時三十分、十分に間に合う。むしろ余り過ぎるくらいだ。なら、なぜ走ったかというと、この男の名前は緑神 雄夜といい、刹那主義者の一人である。しかし、雄夜の快楽は危険を味わうことである。そして、今回の電車に飛び乗ったのも危険を味わうためにしたものなのだ。
雄夜は電車に揺られながら、入学式の会場である浅華高校に向かった。
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雄夜が浅華高校にたどり着いたときの時刻は午前八時十五分であった。もちろん教室には誰もおらず、雄夜一人で教室の椅子に座っていた。
そんな時、雄夜の中で危険を味わいたいと思った。雄夜は誰もいない教室で危険なこととはなにができるかと悩んでいると、教卓が雄夜の目に入りあることを思いついた。
「楽しそうだな」
雄夜は上靴をぬいで、教卓の上に立ち上がると一つ、一つ机の上をジャンプして飛び乗る。少しずつスピードをあげていくと、雄夜も気分がよくなっていき机を一つ飛ばしながら飛んだりした。
周りから見るとただの危ない遊びだが、雄夜にとっては快感となってしまうのだ。
雄夜がふと、時計を見てみると時刻は八時三十分だった。雄夜はそろそろ他の人も来ると思い、机から降りて上靴をはき指定された真ん中の列の一番後ろの席に座ると、すぐさま次の人が入ってきた。
雄夜は基本的に他人には迷惑をかけずに楽しむと心掛けているのだ。
時刻は九時になり、全員の生徒と先生が教室に入ってきて先生に促されながら体育館に入場する。
雄夜はつまんないと思い、校長先生の話やらお祝いの言葉などを聞き流して、眠そうに首を上下に動かしていると後ろの席から肩を叩かた。雄夜は先生かと思いものすごい勢いで背筋を伸ばすと後ろから笑い声が聞こえた。
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「なんだったんだ?あいつは」
雄夜が教室で頭を抱えながら悩んでいると、左側から肩を叩かれ横から話しかけられた。
「さっき、眠そうにしてたよね」
雄夜はこいつが肩を叩いた人だと思い、一様礼を言うとゆっくり微笑んで「どういたしまして」と言った。黒いセミロングの髪を揺らして、黒い大きな瞳は雄夜をひたと見据えていた。雄夜は一瞬気をとられたがすぐに普通の顔に戻った。雄夜は眉毛が隠れない程度のサッパリとした髪型で、顔はスポーツ顔のイケメンと言った感じだ。
先生が自分の自己紹介を始める。たまに笑いも入れたりして、クラスの雰囲気が良くなっていく。その後、生徒の番になり順番に自己紹介を始める。一人、また一人と自己紹介が終わっていき、雄夜の番にまわる。
「俺の名前は緑神 雄夜っつうんだ、まぁ今を楽しく生きてればいい!的な感じで生きてます。一年間よろしく!」
雄夜の自己紹介は良かったらしく、近くにいる同じ中学だった人と「あいつ、おもしろそう」などと話してる男達がいた。
雄夜も得意気に席に座り込み、他の人の自己紹介に耳を傾けていた。あの女の番にくる。
「私は異星人の娘の霧山 怜奈といいます」
教室の空気が一瞬にして固まった。
そんな時に一つの笑い声がこだましていた。その笑い声の正体は雄夜だった。
「ぶははははっ!まじかよ、まじで言ってんのかよっ!涙がでてきたーあははははははっーひぃー腹痛い!いっ…息が…あははははっ…し、死ぬ…ゴホッゴホッ、ウエッ。はぁーぷっ、あははははっ」
雄夜が腹を抱えて笑っていても教室のクラスメイトはクスリともしない。なぜかというと、怜奈がものすごい怒ってる顔をしていたからだ。
「まぁ、まぁ、そんな怒らないでっ…ぷぷっぐはははははっ!無理無理耐えられん!」
怜奈は拳を机に叩きつけると鈍い音が教室に響き渡った。さすがに雄夜も笑うのを止め、教室は静かになった。
「そ、それでは、つぎの人」
先生が慌てて次の人に促し、静かになった教室を盛り上げようと頑張っていた。
そのあとはなにも起きずに、チャイムがなった。このチャイムの音は帰る時間を知らせるものだ。
先生からある程度の連絡を聞いた後、教室を後にした。
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「よーし、走るか」
雄夜は軽く準備運動を始めて、五分後に駅に向かって走り出した。周りの人からの視線が雄夜に集まるが雄夜はきにせず走り続ける。
雄夜は駅まで全力で走り抜けた。
電車のベルが鳴り響き、プシューという音と共にドアが閉まりだす。
「間に合えぇぇぇっ!」
雄夜は閉じかけのドアに手を伸ばし、走る。そして、雄夜の手がわずかにドアの中に入った瞬間、雄夜は何者かの手によって襟を掴まれ後ろに引っ張られた。雄夜のうめき声が出たときはもう、電車は出発していた。
「いててて、急になんだよっ!」
雄夜が尻餅をつき、怒りながら後ろを向くと怜奈が立っていた。
「えーと、雄夜君でしたっけ?よくも笑ってくれましたね」
怜奈は手をポキポキ鳴らして、雄夜に近づくと胸ぐらを掴み、雄夜を立ち上がらせた。
「一緒に来てもらいますよ」
雄夜は怜奈の行動に恐怖を覚えてなにもできないまま連れていかれた。




