第二十六遭遇
あーぁ、こんなことになるならもっと青春とか味わいたかったな。いやいやそれより青春ってなんだ?生まれてこのかた青春という言葉は友達が連呼していた言葉であり、体験したことはない。体験?味わう?楽しむ?なんと言っていいのかすら分からない。うん、まぁ楽しいということは分かっている。なんか死ぬまえだと時間が遅く感じられるって聞いてたが、今までなかったから信じてなかったけど、やっぱり本当のことなんだと体感しながら気づくな。たしかに危険なことをしたり味わうのは楽しいが、これはどうやっても助かるはずがない。危険というのは、どこかに助かるすべがあるときに使う言葉だと俺は思っている。しかし、この状況は助かるすべがない。まだかな…銃弾が俺に当たるの。
雄夜は目をつぶり今までのことをゆっくりと思い出した。実際にはものすごい早さなのだが、雄夜にとっては十分過ぎるほど時間があった。
怜奈と出会い振り回され、いつも自己中だと言われていた性格で雫を助けられた。優衣は………あ、あれだ俺のお陰で皆が優衣と出会えたんだ。健次も助けられた。もうたくさんたくさんだ。思い出はいっぱいある。
雄夜は涙を流した。
「¢%$§*@!」
雄夜の耳に女性の声が聞こえた。
雄夜は明らかに時間遅すぎるのをおかしいと思い、ゆっくりゆっくり雄夜は目を開けていく。目の前には怜奈の顔があった。弱々しく息をあらげながら、雄夜のことを包むように抱きついている。
「泣いてる友達はほっとけないって前に言ったでしょ?」
その言葉を言い終えると怜奈の力が抜けていき雄夜に寄りかかった。
雄夜は悲しみより先に、怒りがこみ上げた。自分にたいしてもだし、目の前にいる十一人男女に対してでもある。
「てめぇら…」
雄夜はゆっくり怜奈を寝かせてあげて、立ち上がり、殺意のこもった瞳で男達を見る。
雄夜は男達に向かって走り出した。
が、雄夜はいきなり倒れこんでしまった。全身の力が抜かれたかのようだった。
雄夜は男達が何をしたのかを確認するために目を開けると、男達は目を丸くして驚いていた。
「&#§%¢£!」
男達は焦りながら手にしていた銃を雄夜に向けた。
発砲。
また、何発もの弾が飛んでくる。しかし、雄夜にではなく雄夜の右横に打っていた。怜奈は雄夜の左横に寝ている。
雄夜は状況を理解できなかった。
『あんがとよ、お前の怒りの感情うまかったぜ』
雄夜の頭のなかに響いてくる。
雄夜は恐る恐る男達が打った右横を見ると、ライオンの形でライオンの三倍はあろうかという大きさであり、そして体毛の色が真っ黒の化け物がいた。
「なっ…」
『おっと、怖がんなくてもいいぜ。俺様はお前の仲間だ。だからお前の思ってることはだいたい分かったぜ、こいつらを殺したい、だろ?』
雄夜は死ぬ間際だから幻覚を見てるのだろうと思い、半分冗談で頷いた。
『やっぱりな~、まぁ俺様のことを解放してくれたんだそんくらいはしてやるよ』
刹那。
雄夜がまばたきをしてる間に男達は消えていた。
『おっ、この女も殺すのか?つーか死んでんじゃねぇか。俺様からでも綺麗な女だって分かるな。生き返らせようかな~』
「………!?……できんのかよ」
『できるかな~?できないかもな~?』
「いいから…やれよ」
『なんだよその言い方は』
「ふざけん…」
『やっぱお前いいわ~。すぐ怒ってくれるし良い精神を持ってやがる。しょうがねぇやってやるよ………あれ、動かない。体力と精神力とりすぎたかな』
「生きてるよ…」
『最高~。あと、女にやっといたから三分ぐらいしたら起きると思うぜ。傷もなくなってな』
「…ありがと」
『うわぁうぜぇうぜぇ、一番嫌いな感情だ。お前も治すけどその言葉だけは俺様に言うなよ』
「…分かった、ありがとよ」
『お前ぜってぇわざとだろ!』
「私はいったい…」
『起きんの早すぎるわ!まだ十秒ぐらいしか経ってねぇぞ!』
怜奈が化け物を見て、少しボーっとしている間に雄夜は傷が治った。そして、怜奈は悲鳴をあげた。
「怜奈!俺、雄夜だよ!分かる!?」
と雄夜が怜奈の肩を揺らしながらまるで事故に遭った後に記憶喪失になるかもしれないひとに言う言葉を言った。
「え…あ…あれ?そういえば私、雄夜を庇って銃弾を喰らったはずじゃ…それより、私を騙した男はどこにいったの!?」
『うるさいな』
「そうだ、一番気になるのはあなたよ!」
そう言いながら怜奈は化け物に指差す。
「そういえば、俺も知らない。教えてくれ」
『この状況でか!?もっと他の事は気にならないのか!?』
「気になりだしたら止まらないたちなの」
『子供か!そんで雄夜も俺も子供だったのかみたいながっかりした顔すんな!』
「つっこみに切れがありますね~…つうより、なんで俺の名前分かったんだよ」
『お前の感情を奪ったんだ、ある程度の情報なら分かるぜ』
「理屈は分からんが、まぁいいや」
『そうだ、俺様は本当になんなのかわかんねぇのか?』
「「うん」」
『黒い玉のストラップだ』
「………。はあぁぁぁあぁ!?」
『お、そんなに驚いてくれるとは嬉しいな』
「ど、どういうわけだよ」
『信じないと思うが俺様は異世界から来たんだぜ』
「おいおい、宇宙の次は異世界って意味わかんねぇ。でも、宇宙人がいたんだ信じてやるよ」
「私はもう大歓迎って感じ」
雄夜が項垂れていると、宇宙船の中にアナウンスが流れ出す。
「今からワープ圏内に入ります。強い衝撃が予想されますのでしっかり捕まっててください」
怜奈が急に慌てだす。
「早く外に出ないと私の星に行ってしまう!」
「ん?自分の星に帰れるから良いじゃねぇか」
「あんたね、私はさっきまで連れ去られるところだったんだよ。しかもあの人達はこっちで言う警察みたいな人だよ」
『お前の母親はどうすんだよ』
「うわ、ほんとだ。帰んないと」
「でも、ワープ圏内って事は上空百メートルぐらいに今いるのよ!この宇宙船には小型宇宙船は搭載されてないし、飛び降りる方法しかないわよ。今、私の星に行っても命を狙われるだけだよ」
「なんか俺の頭の中はパンパンだ。話にあまりついていけないけど…帰らないといけないってことは分かった」
雄夜は怜奈の後ろの首辺りに肘鉄を喰らわせた。怜奈は気を失い、倒れそうになるが雄夜がそれを抑えて、怜奈の事をおぶる。
「よし、あとはガラスを割っていけば良いのか」
『やっぱりそうすんのか』
「やっぱ分かった感じ?」
『俺様をなめんなよ。お前の思ってることはだいたい分かったぜ』
「お前は大丈夫なのか?」
『さっきも言っただろ?俺様をなめんなよって』
雄夜は深呼吸をしたあと、すぐに走り出した。
雄夜はガラスを身体全体で突き破り、外に出る。その瞬間宇宙船が跡形もなく消えていた。
そして、重力に従いそのまま急速落下をしていく。
「そうだそうだ、怜奈って勘違いしてんだよね」
『双子のもう一人は能力だけを持ってるっていうことだろ?』
「あぁ、それは両親が俺達を逃がすときに言った嘘だ」
『お前の片目も青いんだろ?』
「その通り」
『なんで女にその事言わねぇんだよ』
「いや…あのさ…俺が路地裏に連れ込まれたとき、あれだよ…一目惚れしたんだよ」
『ガハハハッ。まぁ知ってたんだけどな』
「言わせんなよ」
『青春だな』
「…これがか?」
『あぁ、そうなんだよ。ほらもうすぐだ』
雄夜は体勢をたてなおして、着地の準備をする。
雄夜が深呼吸をすると、雄夜の片目がオーシャンビューのような綺麗な青い目になった。
雄夜は着地をするときに出来るだけ衝撃を受け流すようにして音をださないようにした。
「やっぱ本気をだしてもさすがに痛いわ」
雄夜は綺麗に着地をすることができて、音もあまりださなかった。
周りの景色は見たときのなにところだった。
雄夜が隣をみると化け物は黒い玉のストラップに変わっていた。
「あーぁ、疲れた。頭がこんがらがってるわ。もう本当に意味わかんねぇ」
雄夜は怜奈を下ろして、木によりかかせたら黒い玉のストラップをポッケに入れて雄夜は寝転がり夜空を見上げた。とても綺麗だった。
「あ、そうだ。優衣達はどうしたんだろ」
雄夜は携帯を取り出し、電話帳から優衣を選択して電話をする。
三回のコールのあと優衣が電話にでる。
『おい!怜奈はどうなった!?』
「…俺は?」
『お前なんてどうでもいい!』
「ひどくね!?」
『まぁ、声のテンションから助かったみたいだな』
「おう」
『どうやって助かったんだよ。つーか今からそっちに向かうから今どこだ?』
「俺にも分からん。まぁ、明日までにはそっち行けるようにするわ」
『お前本当にお気楽だな。いまどんな状況だと思ってんだよ』
「道に迷って危険、だろ?」
『あ、お前にとっては嬉しいんだっけか。この変態が』
「変態呼ばわりすんな」
雄夜と優衣は笑いあった。
その笑い声につられるように怜奈が起きる。
「おお、起きたか。つーことで家に帰るぞ」
「…え!?ここどこ!?」
「いまさら驚くなよ」
『隣に怜奈がいるのか!?変われ!早くかわ―――』
「うるさい」
雄夜は電話を切る。
「というか、どうやって脱出してきたの?」
「秘密だ」
「ええぇー」
「男には秘密があった方がかっこいいだろ?」
雄夜はそう言いながら少し早めに歩く。しかし怜奈は俯きながら、もごもごと口を動かす。
「秘密が無くても…格好良いよ」
その声は雄夜には届かなかった。




