第十六遭遇
ショッピングモールの自動ドアに雄夜と怜奈が入る。
「んで、結局ついてきてあげたけど。一人で返せないの?」
「いや…なんつうか…店が…入りにくい…」
「……………はぁ?」
呆れてものもいえないといった感じで怜奈は雄夜をためいきしながら見た。
「つまり…私が彼女のフリでもしろと?」
「ちげぇよ、ただついてくるだけでいいんだ」
「はぁ~、おこちゃま」
雄夜は言い返すことができなかった。
∇▲∇▲∇
「それでここが、入れないところ?」
「あ、あぁ」
雄夜が隣にいる怜奈をおそるおそる見てみると、怜奈の手が震えていた。
「ど、どうした?」
「む、無理、絶対無理。嫌だ、寒気がする」
「分かっててついてきたんじゃねぇのかよ」
「私が思ってたのは、宇宙についての本やストラップとか、宇宙人の歴史とか、昔の宇宙人の剥製とか…と、とにかく、こんなピンクピンクしてる所は一回も来たとき無いし、入りたくもない!」
そういいながら怜奈は雄夜の胸ぐらを両手でつかんだ。
「まてまて、なんでそうなる」
「むず痒くなるの!」
怜奈が一発ビンタをする。
「いってぇー!」
「寒気がするの!」
もう一発ビンタをする。
「分かった分かった!俺一人で行ってくるから!」
雄夜は怜奈から距離を離れ、少し走りぎみでピンクピンクした店のなかに入っていった。
「早く終わらせよう」
雄夜は黒い石があった商品棚に、他のものにも目もくれず向かった。
すぐに黒い石があった、ところについた。
やはり、黒い石が似合わないストラップなどがところせましとならんでいる。
「ま、いっか」
雄夜はポッケから黒い石を取りだし、黒い石についている鎖をかける。
雄夜は走って、その場をあとにした。
「戻ってきた………え?あの野郎、どこ行きやがった」
雄夜が戻ってきたときには、怜奈の姿が見えなかった。
雄夜は頭を掻いたあと、怜奈を見つけるために歩き出した。
雄夜は怜奈を十分で見つけた。
怜奈がいたところは宇宙の博物館という入館料が無料のところにいた。雄夜が探した十分はここまでに来るためにかかった時間だ。
「これを見るんだ!エイリアン饅頭からエイリアンストラップ、エイリアンパズル、エイリアンシャーペン、エイリアンノート、エイリアン図鑑、エイリアンの歴史書、まだまだあるぞ」
雄夜の目の前には、両手いっぱいにエイリアングッズを持ってる怜奈がいた。雄夜は呆れてため息を漏らす。
「今から、全部買ってくるから待ってるんだ」
「ぶつかんねぇように気をつけろよ」
怜奈はよたよたしながら、レジへと歩いていった。と、思ったが途中でぶつかってしまった。
「あの、バカ」
雄夜は前にも言ったことがある台詞をもう一回口にする。
「前見てろよ!」
しかも、ぶつかった人は怒ってしまったようだ。
「まじかよ…」
いつもなら雄夜が助けにいくのだが、雄夜見ている光景、というより人物に驚いた。怜奈によくにている金髪の女だったからだ。それにもうひとつ、金髪の女がこの博物館に似合わないのだ。
「ごめんなさい」
怜奈が謝っているが、金髪の女はきがたっていた。
「おいおい、こっちはいたい思いしたんだよ」
金髪の女が大きな声で叫ぶ。雄夜は走って怜奈と金髪の女の間に入った。
「ちょっと、ストーップ」
「あぁ!?なんだよ!………おい、てめぇ」
「どっかで会いましたっけ?」
「ふざけんなよ、覚えてるだろ!?」
雄夜は知らないフリを突き通した。
「もういい、けっ、今度は気を付けろよ!」
そう言って、金髪の女はふてくされながら博物館をでていった。
「買ってきたぞ~」
声の方向に雄夜が向いてみると、ビニール袋を両手に持っていた。
雄夜は開いた口が閉じれなかった。
∇▲∇▲∇
怜奈は満足そうに電車に乗り込み、雄夜も入っていった。
「よしっ、これからミステリーサークルのとこにいくよ」
雄夜は最初、怜奈が何を言ってるのか分からなかった。いや、理解をしようとしなかったのか。
「え……?」
「だぁーかぁーらぁ、ミステリーサークルに行こうっていったの」
「宇宙船を呼び出すために、エイリアングッズをお供えするの」
雄夜は怜奈から目をそらし、口をおさえた。笑いをこらえているのだ。
雄夜はそういやこいつはこんなやつだった、と思いながら吹き出しそうな口を必死におさえた。
「なに後ろ見てんの?」
怜奈は雄夜の顔を見ようとするが、雄夜も怜奈の動きに合わせるように、顔を見られないようにした。
「な、なんでも…ねぇよ」
「まぁ、いっか、だから戻るよ」
雄夜達が乗っている電車は浅華公園には向かってはいない。
「あぁ、分かったよ、一緒に行ってやるよ」
すると、怜奈は上機嫌で外の景色を見始めた。
∇▲∇▲∇
怜奈と雄夜が、ミステリーサークルがある浅華公園の入り口についた。
「早く終わらせようぜ」
雄夜があくびをしながら、テンションが高い怜奈に言った。
怜奈と雄夜はミステリーサークルのある広場に歩いてくると、人影が一つ、あった。
「もしかして…」
雄夜は走りながら、人影に向かって走り出した。怜奈は雄夜の行動が分からなかったが、一応ついていった。
雄夜が見たのは中心の穴にエイリアングッズを並べている、金髪の女だった。
「え、あ、こ、これは違う!これは…落ちてあったおもちゃだ!」
金髪の女が焦りながら言うが、並べてあったおもちゃはまさに新品同様で、おもちゃは一列に綺麗に並べてあった。
「ぷっ…ぷぷ…悪い」
雄夜が笑っているのを見ると、金髪の女の顔が真っ赤になっていった。
「てんめぇ!笑うな!」
金髪の女は雄夜に近づき、顔面を殴る。雄夜は首を傾け、金髪の女の拳を避ける。
「いきなり、走ってどうかした…のっ!」
金髪の女の拳は綺麗に怜奈の顔面にあたった。