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第十五遭遇

「「ハッピーバースデー!」」


雄夜が酒屋の途中で買ったクラッカーを雄夜と洋子が二つ一気に鳴らす。


テーブルの上には雄夜が腕によりをかけた料理たちが並んでいた。ケーキは作っている途中だ。


「いただきまーす」


洋子が嬉々とした顔で両手を合わせながらいうと、箸を持ち、唐揚げを食べようとする。


「ちょっと待ってくれ」

「どうしたの?雄ちゃん」


止められたことを少し不満そうにしながら、洋子は雄夜のことを見た。


「今日のプレゼントなんだけどさ…」


雄夜が頭をかきながら言うと、洋子は頭に「?」のマークを浮かべた。


「取ってくるから待っててくれ」


雄夜は二階に上がり、自分の部屋に置いてある酒屋で、雄夜の小遣いをすべて使って買ったお酒があった。茶色の半透明の容器に入ってる酒はいつもよりは高い酒なのだが、お祝いに飲むほどの酒ではない。


雄夜ががっくりと肩を落として、酒の底をを両手で持つために前屈みになった瞬間、ポッケからなにかが落ちた。


「あ……やっちまった…」


落ちてきたのは鎖が繋がった黒い玉だった。黒い玉はショッピングモールから逃げるときに、商品棚に戻さず持ってきてしまったようだ。


「盗みになんのかな…。だ、大丈夫だ。明日、返しに行けばいいはずだ」


雄夜は黒い玉をポッケに突っ込み、酒の底を両手で持ちながら、洋子がいるリビングに向かった。


「遅かったわね~」


リビングに戻ると、すでに洋子は料理を食べていた。


「あ、それって…」

「ごめんな、こんなのしか用意できなくて」

「全然嬉しい!」


雄夜は思ってた反応と逆だったので驚いたが、嬉しそうに買ってきた酒をグラスに注いでる洋子を見て、微笑んだ。


「あ!雄ちゃんが笑ってる。かわいい~」

「う、うるせぇ」


雄夜は顔を赤くしながら、袖で顔を隠すのだった。


そのあとも雄夜と洋子は楽しく話をしながら、夜を過ごした。



∇▲∇▲∇



「二日酔いだ~気持ち悪~」


洋子がソファーに寝ながら言った。それを横目に雄夜は朝飯を作っていた。


「それじゃあ、胃に優しいお茶漬けでもたべてろ」

「え~、雄ちゃんの朝ごはんだべたい」

「今日も午後から仕事あるんだろ」


雄夜がそういうと、洋子は頬を膨らましながら起き上がり、ソファーの前に置いてあるお茶漬けを胃に流し込むのだった。


雄夜は自分のぶんと洋子の弁当を作り、用意を済ませて浅華高校に向かうのだった。


「行ってきます」

「いってらっしゃーい」



∇▲∇▲∇



「お、今日は休んでくれなかったのか」

「なんだと、まるで私がお邪魔虫みたいじゃないか」


雄夜の隣の席には授業の予習をしてる怜奈がいた。昨日見た金髪の女にやっぱり似ていた。


「お前って本当に双子を探してんだよな」

「当たり前だ」


怜奈の机の上にある予習課題はどんどん空欄がなくなってていく。


「俺の勘違いかもしれないが、お前の双子ぽい奴見つけたぞ」


怜奈の手が動くのを止め、少しの間沈黙が流れてから、怜奈は立ち上がった。


「それは本当か!?」


目を輝かせながら俺の顔を覗いてくる。


「お、おう。つーか、近いって」


目の前に怜奈の瞳があり、嬉々爛々としていた。状況は違うが、やはり金髪の女とダブって見えた。


怜奈が席に座り直す。


「それで、名前は?」

「分からん」

「…居場所は?」

「分からん」

「………はぁ、使えないわね」

「なんだよ、情報与えたんだぞ」

「………らちがあかないわ」


怜奈がやれやれといった感じに首をふった。


「なんだかイラつくな」

「イラつくのはこっちの方」

「喧嘩は止めてください」


目線で火花を散らしてる雄夜と怜奈の間に雫が入ってきた。


「なんの話をしてるんですか?」

「それがよ、昨日会った怜奈に似てる女がいたじゃん」

「いましたね」

「えっ!?雫ちゃんと雄夜で二人っきりで遊びにいってたの!?」

「え、まぁそうです」

「なんか変なことされなかった?大丈夫?」

「なんもしてねぇよ」

「信じられない」

「あの…それで……どうしたんですか?」

「あぁ、そうだったな怜奈は、まぁ、色々あって、双子を探してるんだよ。それで教えてあげたのに怒ってんだよ」

「ちゃんと雫ちゃんに説明してよ。雄夜が自信ありげに話してたから名前を聞いたら居場所すら知らないっていってるの」

「あぁ、そうだったんですか。つまらない喧嘩ですね」


雄夜と怜奈はピクッと眉を動かした。雫も気づいたらしく、慌てて言い直した。


「あ、あの双子を探してるなんて、とってもドラマとか漫画にありますよね。えーと、なんか憧れるな、なんて…」

「だよな…つまらないことだよな……」

「雫ちゃんに言われるとはね…しかも、憧れてもいいことはないと思うよ」


雫の弁明もむなしく雄夜と怜奈は机に深く座り、一人言を言い始めた。


「なんか…ごめんなさい」


そこで、朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴った。


雫は、ボクシングでボクサーがゴングに救われたというのを初めて実感した。



∇▲∇▲∇



時はすでに放課後になった。


「雫、昨日お礼できなかったから、行かないか?」

「昨日で十分楽しみました」

「全然楽しくなかっただろ。泣いてたし…」

「また雫ちゃんを泣かせたの!?」


怜奈が間から入ってきた。


「はぁー、うるさいな」

「どうして泣かされたの?」

「な、なにもしてませんよ」

「嘘つかなくてもいいのよ。はっ、もしかして弱味が握られてるとか、はたまた雄夜が雫ちゃんに………げふっ」

「うるせぇよ」


雄夜は怜奈の頭にげんこつをくらわした。


「いったーい!うっ、泣いちゃうかも」

「嘘つくな」

「本当だよ~、女二人も泣かした~」


そう言いながら怜奈は雄夜を見た。怜奈の瞳は潤んでいた。


「ま、まじかよ……まぁ、悪かった」

「はい!認めたね!この最悪男!」

「てめぇ!演技だったのか」


雄夜は最初の約束ごとの時のことをすっかり忘れていた。


「緑神くん、私、今日用事があるの。だから行けないの」


怜奈と言い合ってた雄夜は怜奈と話を止めて、「そうか」と言った。


「しょうがねぇ、怜奈、俺と一緒にショッピングモールに来い」

「デートのお誘い~?」

「違うわ!これを返しにいくのに」


そう言いながら雄夜はポッケから黒い玉を取り出した。


「え、なにそれ?悪趣味~」

「間違って持ってきちまったんだよ」

「泥棒~警察呼ばないと。そんなにそれが欲しかったのか…あとでカツ丼でも食わせてやるよ」

「うっせぇよ!つーか、カツ丼は実際でねえよ」

「当たり前~」

「そうだったんですか!?」

「そんなに驚く雫ちゃんかわいい~」

「話が進まねぇ!」

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