表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/30

第七遭遇

さっきまで綺麗だった星たちは厚い雲に覆われて、月もまた雲に隠れてしまった。


「うそだよな…?」

「本当ですよ」


雄夜は少し、後退りしてしまう。雫はそれを見て悲しそうに下を向いて、涙目になった。


「もう、帰りますね。霧山さんには、体調が優れないので帰ったとでも言ってください」


少しだけ声を震わせながら、雫は雄夜に言った。


雄夜は後退りしたことを後悔して、一歩前にでようとするが、雫の言葉が頭に引っ掛かり、動くことができない。


それを見た雫は最後に涙を目頭にためながら雄夜に微笑んで、浅華公園の出口に走っていった。


走り去る雫をただただ雄夜は見ることしかできなかった。


「くそっ」



∇▲∇▲∇



雄夜は雫を追いかけずに、たたずんでいて五分後に怜奈が懐中電灯を片手に歩いてきた。


雄夜は雫について、言われた通りにしようと思った。怜奈にはいつも通りに雫と接してほしいという思いからだ。


「今日、雫は体調がわる―――」


パンッ!


「今度は雫ちゃんを泣かせたわね」


怜奈は浅華公園に来る前に、雫と会っていたのだ。しかし、雫は怜奈のことに気づかず、目を袖で拭いてるところをちょうど怜奈が目撃したのだ。


「え…あ、悪い」

「私に言う言葉じゃない!」


すると、怜奈はため息をして雄夜のことを見る。雄夜が見た怜奈の瞳は怒りが燃え上がっていた。


「何を話してたの?」


雄夜がいいよどんでいると、怜奈は雄夜の胸を思いっきり殴った。


雄夜はドスンッという音と共に、尻餅をつく。怜奈は仁王立ちをしながら雄夜を見下ろす。


「私はね、泣いてる友達をほっとけないたちなの」


雄夜は反抗もせずに、下を向いてるだけだった。


「早く言いなさい」


怜奈はこれでもかというほど、怖い顔をして雄夜を睨んだ。


「…分かった。雫はこう言ったんだ…「私は両親を殺した」って…」

「それで、終わり?はっ、ふざけないでよ。雫ちゃんはそんなことをする子じゃない」


あまりにも単純な理由で、怜奈は雄夜の言ったことを否定した。


「なんで、わかんだよ…」

「そりゃあ、私と雫ちゃんは友達だし、優しい子だもん」

「そんな理由で…」

「それじゃあ、あなたはその事についてしっかりと話を聞いた?」

「いや…聞いてねぇよ」


怜奈は微笑んで、雄夜の手を握って立ち上がらせた。


「それじゃあ、今から聞きに行くよ」

「え?…あ、おい!」


怜奈は走り出した。雄夜も怜奈に引っ張られて走り出す。


「お前、雫の家知ってんのかよ!?」

「もちろん!異星人をなめないで!」

「意味がわかんねぇよ」


しかし、怜奈は間違えずに前から知ってたかのように、道を走っていく。


何度も路地裏に入っては抜けての繰り返しで、雄夜は自分がどこにいるのかが分からなくなった。


「はぁ、はあ…ここよ」


二人が息をあげながら、ついたところは普通の一軒家だった。しかし、電気はついておらず真っ暗だった。


雄夜は膝から手を離して、玄関に向かう。


チャイムを押すと、すぐに扉が開かれた。


「どちら様でしょうか?」


一軒家から出てきたのは、仕事が終わってすぐに寝てしまったと思われる、女性がいた。


「すみません、雫はいますか?」

「隣ですけど…」


雄夜は勢いよく後ろを振り返ると、怜奈が舌をだしながら、頭をコツンと叩いていた。


「すみません、間違えました」


そういうと、女性は家のなかに消えていった。雄夜はすぐさま、怜奈のところに走っていった。


「てめぇ、なにがもちろん!だ」

「テヘペロ」

「うぜぇ」


雄夜は怜奈の額にデコピンをくらわす。怜奈は少しだけ頭をのけぞって、額をさすった。


「痛いな~、間違えは誰だってあるもんだよ」

「異星人でもか?」

「もちろん!」


雄夜はため息をつくと、視界の横に映ったのは雫だった。


「え、いや…あ…」


雫は方向転換をして、雄夜達から逃げていく。


「追いかけるわよ」

「当たり前だ」


雄夜と怜奈は一斉に走り出す。普通ならすぐに追いつけるはずなのだが、さっきまで走っていたせいか、すぐに息が切れていく。


「くそっ、駄目だ追いつかねぇ」


雄夜は横を見ると、怜奈が少し咳をしながら精一杯走っていた。怜奈が言ってた「友達はほっとけない」という言葉が雄夜の頭に響く。


「うおおおおおぉぉぉぉっっっ!!」


雄夜は叫びながら雫に向かって走るスピードを上げる。少しずつ、少しずつ、距離が縮まっていく。


雄夜の視界に交差点の信号の光が見える。


赤。


雫は下を向いて走っているので気づかない。


「くそがあああぁぁぁっ!!」


雄夜は雫の手を握って、雫を押し退け、雫は歩道に、雄夜は車道に放り出された。


雄夜は今までしてきた経験なのか、雫を助けたいとという思いからなのか、一切の迷いもなく行動を起こした。


交差点に一つの鈍い音が広がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ