名無し
「はぁ、長いようで短かったな。わしが逝ったらもうギルドは抜けろ。」
マスターがベットの上で苦しそうに話す。
「マスター。俺はあんたに恩がある。あんたはいなくなった後のギルドは俺が」
「ニア、、、。もういい。あとは、、自由に生き、るんだ、、、。」
「マスター、、、。」
マスターが逝った。孤児だったらしい俺を拾い上げてここまで育ててくれたマスター。
マスターが作り上げたギルド『クロノス』は世界一の闇ギルドと名高く、依頼成功率も
他の闇ギルドとは比べ物にならないほどだった。
勿論、マスター自身も強かったが、ナンバーズと呼ばれる存在がいたことも大きい。
通常、どのギルドにも序列というものが存在する。
A、B、C、というランクで表されたり、1~10の数字が与えられたりする。
うちの『クロノス』では上位から順に【No.1】~【No.9】まで与えられ、
それ以降はナンバーが与えられるか、ひとまとめにダブル、トリプル、などど呼ばれる。
そして、ギルドに入りたての初心者はどのギルドでもこう呼ばれる。
名無し、と。
俺?、俺にはナンバーはない。そもそも俺の存在を知っているのはナンバーズの中でも
【No.0】ぐらいだろう。
え?ナンバーズは【No.1】からなんじゃないかって?
【No.0《ヌル》】はサブマスター的存在だ。ナンバーズに上がってから初めて存在を教えられる。
言うまでもなく戦闘力は折り紙付きだ。
そしてマスターが逝った今、彼女がマスターの位に着くのだろうか。
まぁ、目立ちたがり屋ではないからナンバーズの誰かかもしれないが、、、。
「マスター!!!」
噂をすればなんとやらだ。
「ヌル、マスターはもう逝った。俺は伝言通り抜けることにするよ。」
「ニア。ありがとう。最後に一緒にいてあげて、、。」
「感謝をするのはこっちの方だ。マスターには世話になったしな。もちろん、ヌルにも、な。」
「ふふっ。いつも大人ぶったままで。全く、。」
「悪いな。また会える時には敵じゃないことを祈るよ。」
「貴方とだけは敵対したくないわね。」
「はっ。俺もネルを手にかけるなんてことはしたくないね。」
そう言って部屋を出て、そのまま地上へ繋がる道を見上げる。
マスター。俺、もうちょっと頑張って生きてみるよ。
これは、闇ギルドを抜けた一人の少年の話。




