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二話

翌日。


今日はセリーナさんの貴族学校の入学式があり、その後に入学記念パーティがある。


貴族家の子息令嬢にとっては、この入学記念パーティこそが正式な社交界デビューという形になるそうで、とても重要パーティなんだそうだ。


なのだが。


「はぁ……めんどくさい……」


肝心のセリーナさんはずっとこんな感じで全くやる気がない。

一応制服には着替えてはくれているが、もうすぐ入学式に行かないといけない時間にも関わらず、ソファに沈んでいる。


「お嬢様、そんな体勢でいられると制服にシワが出来てしまいます」


マリーさんがそう言っても、今日のセリーナさんは浮上して来る気配がない。


「わかってるけど、体が動こうとしないのよぉ」


「そんなに入学式が嫌なんですか?」


いつも嫌がっている王太子妃教育に行く前でもここまで酷いことはないので、私も気になってしまう。


「入学式だけならいいんだけどねぇ。その後のパーティがほんっとに嫌。

ねぇ、仮病使っていい?」


「良いわけないですよね?今日のパーティがどんな意味を持っているのかは、お嬢様もよくおわかりのはずです」


「うぅ……。わかったわよぉ……」


マリーさんに冷たく返され、ようやく観念したセリーナさん。

入学式へと向かうその後ろ姿は、これから始まる学校生活への希望を全く感じさせない悲痛なものだった。



「お嬢様、大丈夫でしょうか?」


セリーナさんが学校へ行くのを見送り、少し遅めの朝食を食べながらマリーさんに尋ねる。

婚約者である王太子とも当然顔を合わせるだろうし、またストレス溜め込まないといいんだけど。


「そうねぇ。学校生活は何とかなるとは思うけど、問題は今夜のパーティね」


社交界での評判もゲームの強制力のせい……と言うか、王太子のせいで悪いって話だから確かに心配だ。


「ここでミリに問題です。パーティに必要なものは何でしょうか?」


「え?えっと……。

そのパーティの趣旨に相応しいドレスと、それに見合う装飾品……でしょうか?」


教わったことを思い返しながら答えると、マリーさんは1つ満足そうに頷いた。


「うん、そうね。でもね、それだけじゃ足りないのよ」


あれ?何か準備に必要なもので抜けてるのあるっけ……。


「エスコートしてくれるパートナーよ。パーティに1人で行く人はいないでしょう?」


あ、そうか。確かにエスコートしてくれる人は必要だ。

普通は家族など親しい関係の人がしてくれるはずだけど……。


「お嬢様の場合なら、婚約者である王太子殿下がエスコートをするのが普通ね。でも、ねぇ?」


セリーナさんと王太子の仲を考えると、それは難しそう……。


「エスコートするつもりがあるなら、もうとっくに連絡が来てないとおかしいのよね。でもその気配はないし。

王太子殿下の婚約者っていう立場のお嬢様のパートナーに他の方が名乗り出るのも難しいだろうしねぇ」


「それじゃあ、セリーナさん……お嬢様はお1人でパーティに……?」


「婚約者がいない方は家族や親戚がエスコートするけど、公爵様や兄君に頼まれたっていうのも聞いてないからたぶん……」


それはあまりにも寂し過ぎる。

公爵様はセリーナさんを溺愛してるし、今は王都にいない兄君も同様だと聞いている。

セリーナさんが頼めばエスコートくらい喜んでしてくれそうだと思うんだけど。


「お嬢様が王太子様の婚約者っていうのは広く知られてるからね。

ご家族に頼んだとしても良くない噂が広まるのは避けられないかなぁ。

それに、お嬢様の性格考えると、王太子様がエスコートしてくれないからってご家族に頼るとは考えにくいし」


そもそも公爵様にその事すら伝えてないんじゃないか。

なんでセリーナさんがそんな目に合わないといけないんだ。

元々低かった王太子への好感度がどんどんマイナス方向に振り切れていくのを感じる。


「とにかく、私達に出来ることはお嬢様をどの令嬢よりも華やかで美しくすることよ。

王太子様が後悔してもしきれないくらいにね」


マリーさんの言う通りだ。

セリーナさんの姿を見た王太子が、セリーナさんを邪険にしたことを悔やんでも悔やみきれないくらいに仕上げてみせる。

私とマリーさんは、固くそう誓い合った。

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