名前を教えて瀬乃咲さん!
僕の隣に席する女子生徒、瀬乃咲さんは僕に名前を教えてくれない。
四月から高校二年生へと進学した僕は進学そうそう一人の少女と仲良くなった。
その人物というのが瀬乃咲さんだ。
だが、彼女にはとある秘密がある。
それは、下の名前が不明なのだ。
正確に言えば不明ではなく僕自身が知らないだけなのだけれど。
ことのはったんは新学年最初の自己紹介の時だ。
前日にゲーム三昧で夜更かしをしてしまった僕は翌日の朝時間ギリギリに起床し遅刻すぜんと最悪の目覚めをした。
当然、夜更かしをしたため睡眠時間は四時間と全く寝れていない。
駆け足で学校へ向かい何とか朝のホームルームには間に合ったが睡眠不足ということもあり席に着いた途端、抗えない睡魔に襲われ僕は眠りについてしまった。
そして、次に起こされたのは自分の自己紹介の時だった。
まぁ、つまり何が言いたいかというと今後の関係にも関わってくる大事なクラスメイトの自己紹介を居眠りをしていたせいで聞き逃してしまったのだ。
そのため瀬乃咲さんの名前も知ることができず今に至る。
以前隣の席ということもあり、改めて自己紹介を行ったのだがその時も教えてくれなかった。
僕が何度訊いても頑なに口を開かず困惑してしまう。
そんな、僕の表情が面白かったのか満面の笑みを浮かべて見せたあと何か閃いたように「あっ!」と言葉を発した。
そして、彼女はこういったのだ。
"三年生になるまでに私の名前を当ててください!"と。
その後、数分かけてルールを決めた。
その一、クラスメイトや先生から訊いてはいけない。
その二、一日の回答数は三回まで。
その三、もし仮にクラスメイトや先生から名前が聞こえてきてしまった場合は素直に自白すること。
これに関して僕は一つ疑問に感じたことがあった。
新学年とわ言えど、恐らく数人ほどは瀬乃咲さんのことを下の名前で呼ぶ生徒もいるだろう。
そのため、このゲームは直ぐに終わりを迎えてい成り立たないのではないかと。
そんな、僕の疑問に対して自信気な表情を浮かべながら瀬乃咲さんが「それは大丈夫!」と言い放った。
僕がなぜだと訊けば、「私のことは瀬乃咲と呼んでね」とクラスメイト全員に告げたからとのこと。
けど、解釈の仕方によっては遠回しに名前で呼ぶなと言っているもんではないか。
直ぐに訂正しなければ、誤解をうみかねないぞと思い瀬乃咲さんに伝えれば「私はこのゲームをやるためなら体を張るよ!」と右手で親指を立てながらそう言った。
彼女にとってこのゲームにどれほどの価値があるのだろうか。
そして、最後に補足として、策略的に瀬乃咲さんから名前を訊き出すことは許可された。
例えば、さりげなく連絡先を交換して名前を確認したり、あえて真正面から「名前何?」と訊いて口を滑らせ自ら言わせたりと様々な思考を巡らせ策を練り攻略する。
以上のルールに則りゲームが開幕した。
これから一年間、僕と瀬乃咲さんの名前当てという名のゲームが始まるのだ。
彼女の名前は一体なんなんだろうか。