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第4話 戦闘

閃光は弱まり、やがてポツリと消えた。


 徐々に私の視界が戻って来る。そして、私の目に写ったのは、煙を出しながら倒れる狼と、剣を片手に、凍えるほど鋭い視線で、それを見つめる青年の姿であった。


 しかし、よく見るとオオカミに頭部がない。また、断面は焼き切られているようで、血飛沫ひとつない。


【ズチャッ】


 突然、宙から黒い何かが落ちてきて、私の足元まで転がってきた。まじまじと見てやっと、それが何かに気がついた。


「ひっっ!?!」


 恐怖とグロさで思わず飛び退く。


 「オオカミのっ頭っ!」


 青年が、顔だけこちらに向ける。


「悪いけど、僕の後ろにいてくれるかい?庇いきれなくなるから。」


 抑揚のない声で、それだけいうと目線を周りの茂みへと戻す。もはや私は、恐怖で頭を上下に振ることしかできなかった。



 辺りは静まり返り、緊張感が生まれる。

しかし、草を踏み分ける足音だけは聞こえるが、残りの狼は襲いかかってこない。先程の光に威圧されたのだろうか?


 そうして産まれる、しばらくの沈黙。




「グゥヴァッ!!!」


 一体の狼が、短く吠える。

 

 沈黙は破られ、突如として8体の狼が茂みから飛び出す。そのまま、速度を落とさず大地を駆け、すぐさま距離を詰めてきた。


 やがて、距離が1メートルを切った瞬間。最前を走る一体が、四足で地面を蹴りあげ、青年へと飛び掛った。


 しかし、それを見ても青年は、表情ひとつ変えない。そして、素早く腰を降ろすと、腕を引きながら剣先を上に構えた。


【ズダンッ!】


 刹那、銃弾のような速さの切っ先が、がら空きになった獣の喉元へ走った。


 私が気がついた頃には、飛び上がった狼の首から脳までを、一直線に貫いていた。



 だが、安心する暇はない。上にあげた剣を抜き取るよりも早く、後続の狼が青年の足に喰らいつかんと迫る。


 そして、姿勢を落とすと、噛み付こうと口を開ける狼。しかし、それをも予想していたのだろうか。腰を降ろしたまま、ローキックの要領で足を地面に沿って滑らせる。


【メギャッ】


 潰れるような音と共に、彼のブーツが狼の顔面へとめり込み、衝撃を受け止めきれずに蹴り飛ばされた。


「2体目」

 

 3体目の狼。2体目と同じように足へと噛み付こうとしていた個体は、ひしゃげた頭で宙を舞う元仲間の姿を見て、躊躇うかのように減速した。


 その隙を逃さない。降ろした腰を上げ、大きく1歩踏み込む。そして剣を抜かずに、狼の死体ごと地面へと振り下ろした。


「ヴォアッ!?」


 まさか、そんな一撃が来ると思わなかったのだろう。3体目の狼はそんな、驚いたような声を上げた。

 しかし、肉の塊が刺さったままでは致命傷にはならない。立ち上がろうと狼が体を起こす。が、それよりも早くに足を振り上げると、強く叩き落とした。


 それにより3体目も絶命する。



 青年は、突き刺さった剣を引き抜くと再び構え直す。


 また、一体が正面から駆けてくる。


「グルォォオッ!!」


 声を上げながら、鋭い牙をむき出しにして口を開ける。


 しかし、青年は気がついていないのか、前しか見ない。


 回り込んだ一体が斜め後ろから近ずいていた。


「おっおい!後ろだ!」


 心配、そして不安により叫ぶ。がどうやら気がついていたようだ。


「大丈夫、わかってる。」


 前の個体が噛み付く瞬間に、横に避けると、そのまま横腹を切りつけた。


 血飛沫が飛び、切りつけられた個体は血を流して転がる。


 しかし、後ろから来た個体は速度を落とさず、背中に飛び掛かかると青年に覆い被さった。そのまま、口を開け肩に牙を突きつける。



(、、、!?! 流石に挟み討ちは捌ききれなかったのか!? どうしよう、助けに走るべきか!)

そう思った瞬間。


「ギャンッ!?」


 そこには、腕を捕まれ地面へと投げられた狼がいた。暴れるが、腕を掴まれているせいか、起き上がれないでいる。


 それに向けて、剣を下向きに構えると首へとズブリと突き刺した。


「これで5体。残りは4体、流石にそろそろ引いて欲しいけど。」


 青年の額から、珠のような汗が滴り落ちる。

疲れているのか呼吸が少し荒い。


 噛まれた肩は平気なのだろうか?しかし、血痕は見えない。


 どちらも睨み合い、静止する。


 そこで、急に狼側が後ろに下がった。


 あちらも勝てないと察したのだろうか?

最後列にいた8体目、一際大きな角を持った狼は、体はこちらに向けて、警戒しつつも青年から距離を取っていく。


「オオォゥゥゥン」


 一声叫ぶと、茂みの中に飛び込んで行った。


 撤退命令だったのだろうか。それに続いて、戦わなかった残りの3体。遅れて横腹を切られた個体も、よろよろと茂みに逃げ込んで行く。



 やがて、草を掻き分ける音が聞こえたが、離れていったのだろうか?音が小さくなっていき、最後には気配が完全に消え失せた。





「たっ助かった、、、? あっあれ?おっぐっ!!」


 私自身は何もしていないが、助かった安心感から力が抜けて、足からへたり込んでしまった。


「怪我は、、、無さそうだね。ふぅ、何とか君を守りきれた。それに、彼らが撤退してくれてよかった。あのまま来てたらキツかったかもな。」


 そう言うと、青年も疲れたように地面に座り込んだ。


 そこで、思い出した。なんか、助かった気で来たけど、よく考えたら私こそ戦犯であったという事に。


「もっ申し訳ございませんでした!静止も聞かずに逃げ出して。そのせいで襲われたんですよね。誠に申し訳ございませんっ。」


 そう、そもそも私が焦りで逃げなければ、あのオオカミたちは、そのまま帰ったかもしれないのだ。

 よってひたすらに謝る。恐らく許されないだろうが、それでも土下座と思えるほどしっかりと頭を下げた。


「いやっ!?やめてやめて!?そんなに謝んないで!というか、絵面的にも、気分的にもよくないからっ!?」


 そう言うと、驚くほど泣きそうな顔で、土下座を止められた。


「それに、別に君が逃げなかったとしても、餌がなくて走り回ってたのなら、襲われてたかもしれないから!君が気負う必要は無いんだって!」


 そう言うと、青年は困ったように笑う。


「本当に、すみません。反省しました。」


 私も、もう一度頭を下げた。


「まあ、怪我なく乗り切れたんだから、それでいいのさ!」



(もはや、私が女だったら惚れそうなレベルでいい人だな。)


 いや、今はもう女か。最も、私は性別が変わっても、男に惚れるタイプでは無いので、関係無いが。






お読み頂きありがとうございました!!


投稿頻度が遅くてすいません。


 これからは、曜日は不定期ですが、最低でも2週間に1回は投稿しますのでご了承ください。


それでは、これからも本作に付き合って頂けたらさいわいです。

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