第3話 英雄と少女
すいません、時間が無くて今回の話は短めです。今週中にもう1話出すので、お許しください。ルビがちゃんとできてるか心配...
「えっ 君は女の子だよね、、、?」
さも当たり前のような、口ぶりでそう言われ、ドッと汗が吹き出る。
「いやっ なんでもない。です。その頭が混乱していて、、、そうだよな。少女なんて私以外いませんよな!」
誤魔化す。も、動揺が隠せなかった。下手に心配させたくは無いし、変人扱いされても困るのだが、、、
「あ あはは、、、 とりあえず!僕の後ろに着いてきて!あと、危ないからできるだけ離れてないでね。」
青年は、気まずそうに苦笑いすると、気を遣ってくれたのだろう、特に触れずに流してくれた。
青年が歩き出したので、私も後に続く。どちらも黙り込み、少しばかり気まずげな雰囲気が続いた。
歩きながら、自分の体を見てみたが。
本当に私の体は、男では無くなってしまっていた。
腕は前よりも細いし掌も小さい。それに、髪も伸びてショートボブ程になっている、、、?と思うが鏡がないため正確には分からない。
、、、しかし、アニメでは「性別が変わっても前髪だけは全然長くならない」というものがよくある。例に漏れず、私の前髪も大して長くなっていなかった。
(髪型がちょうど良く伸びるなんて、まるで操作されているかのようで奇妙だ。最も、性別が変わっていること。そして死亡したにもかかわらず、ここに居ることの方が、よっぽど奇妙ではあるが。)
そういえば、目覚めた時に声に違和感を感じたが、やはり声も変わった。
元々私はテノールのような低い声だったのだが、確実に高くなっている。と言っても‘'アルト寄りのソプラノ‘’と言った声ではあるが。
正直なところ、この変化に違和感は大きい。
また、別人の体の中で観戦している様な、そんな不快感もあった。そして、「もう元の姿に戻れないかもしれない」といった不安と喪失感もまた、感じていた。
もちろん、今も周囲に気を配りながら、私を先導してくれている彼に対しては、そんなことは一言もいえなかったが。
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「はぁっ はぁっ、、、」
まずい、何度か休憩もしているのに、すぐに息が上がる。
性別が変わって体力がなくなったのだろうか。それとも、サイズの合わない靴で歩いたせいだろうか?
あと、道が整備されておらず、ローファーの中の足が痛い。それに、先程から虫が顔に張り付いてくるのも、地味に不快であった。
「大丈夫?辛いなら休憩をとるけど?」
青年はそんな感じで、時々声をかけてくれる。が、既に数分前に休んだばかりであり、さすがに気が引けた。
「だい、じょうぶ、です!」
なんとか声を絞り出すが、言葉が途切れ途切れになってしまう。
「ごめんね無理させて、、、やっぱりおぶろうか?」
「大丈夫ですっ 休みっすぎると 日が暮れますしっ。」
「偉いね。あと少しだよ!頑張って!」
偉くは無い。というか他人におんぶなど、されたくない。最初の方は、「騙して奴隷商店にでも売られるんじゃ?」なんてことを考えたりもしていたが、、、
もはや、疲れでそんなことも忘れていた。
そうやって、思考を放棄しながら足を上げようとした、その時。
「止まって! そのまま静かに。」
小声で、しかし鋭い声で静止をかけられる。
「落ち着いて聞いて。何かが、こっちに来てる。多分、狼の類だと思う。群れの足音が聞こえた。」
どっと、汗が吹き出た。「何で急に!?」そんな感情が飛び出て、頭が混乱する。この青年は優しそうだが、正直、狼の群れを一掃できそうな雰囲気は欠片もない。
「にっ逃げますよねっ!」
できるだけ小声で、話しかける。
「そうしたいけど、無理そうだ、、、」
【ザッザッ ザッ…】
遅れて、何かが走ってくるような音が私の耳にも聞こえた。
体が全身全霊で警鐘を鳴らす。どんどんと大きくなる足音。その恐怖で体が震える。
今すぐに走って逃げるべきだ。「何で留まろうとしてるんだこの男は?」焦りからか、そんな場違いな怒りが頭をよぎる。
「もう近くにいる!怯えず、目を合わせずにただ立っていれば、そうそう襲われない。背を向けるのは絶対にダメだよっ」
青年が静かに、落ち着いた声でそう告げる。
しかし、急に言われても訳が解らなかった。
(「立っていれば襲われない」そんな訳がない!なってもせいぜい、襲いやすい的だ!せめて、木でも登れば。)
もはや私は、恐怖と疲労で冷静ではなかった。だからこそ私は、彼の静止を振り切って、逃げ出してしまった。
それも、自然を生きる狩人に背中を向けて。
【ズダダッッ】
背後から、草をかき分け走って来るような音が聞こえ、次には大きな影が私を覆った。
【グルォォッッ!!】
獣の唸り声が迫る。声の主は、血のように赤い眼光。鋭い牙。そして何より、本来狼にないであろう、刀のような鋭い角が、額の真ん中から伸びていた。
私が振り向いた時には、そんな化け物が大口を開いて、私に飛びかかろうとしていた。
恐怖で、頭を覆い目を閉じる。
「 英雄の祝祭 」
そんな声が聞こえた、その刹那。
焼けるような熱と共に、瞼を閉じていても分かるほどの眩い閃光が、迸った。